名鉄電車は眠くなる?
列車やクルマでつい寝てしまう理由とは カギは「不規則なリズム」
2021年07月13日 乗りものニュース
乗りもので眠くなる理由は諸説ありますが、近年注目されているのが「1/fゆらぎ」と呼ばれる不規則なリズムです。
名古屋鉄道が行った調査では名鉄電車にリラックス効果があることが判明。
走行音に含まれるリラックス効果に注目してみます。
車内でウトウトする理由は不規則なリズム
電車やクルマの助手席で眠くなる――多くの人が経験するこの現象について、ある研究が注目されています。
それは「1/fゆらぎ(えふぶんのいちゆらぎ)」という走行音に含まれる刺激が関係しているという説です。
2020年1月、名古屋鉄道は「電車の音にはリラックス効果があると判明」という発表を行いました。
名鉄電車の走行音を分析したところ、集中力アップやリラックス効果が期待できる「1/fゆらぎ」が含まれていたというのです。
「1/fゆらぎ」の正体は、音や光、振動など人間が五感で感じる刺激の一種で、人はこの刺激を感じることで身体が自然に揺らいでいる心地よい状態になる効果があると言われています。
その特徴は不規則なリズムにあり、焚き火の光などが代表例です。
もっとも、列車の走行音に 「1/fゆらぎ」があることは一部の 鉄道ファンなどには知られていたものの、これまでは俗説の域を出ないものでした。
科学的に分析できたという意味では目新しい発表となりましたが、では名鉄電車の走行音はどこから「1/fゆらぎ」が出ているのでしょうか。
実際に分析を行った名城大学都市情報学部 西野隆典教授によると「様々な要因があるため詳細はわかりませんが、ひとつは走行時の“カタン、カタン”というリズムにあると思われます」とのこと。
枕木の間隔やレールの長さが要因となって「1/fゆらぎ」が現れている可能性があると言います。
名鉄以外の鉄道ではどうなのかというと、乗客のその日の感情や環境など複雑な要因が多いため、実験が難しいものの、リラックス効果がある(「1/fゆらぎ」が含まれる)可能性は十分に考えられるそう。
また、電車内でよく見る「イヤホンをしながら寝ている人」というのは、「走行音は聞こえていないが振動を感知してリラックス状態になっている」可能性があるということです。
高級車は眠くなりにくい?
クルマの助手席や後部座席で眠くなる現象についても「1/fゆらぎ」が関係しています。
西野教授によると、「一般道では信号や右折・左折などがあるため変化が大きいですが、高速道路では一定スピードで走行するため1/fゆらぎが含まれる路面の音などの影響を受ける可能性はある」とのこと。
一方で「車内の防音性が高い高級車では、外部の音を拾いにくいため1/fゆらぎを感じにくい」と指摘します。
「1/fゆらぎ」を人工的に取り入れて、車内環境の向上を図った例もあります。日産「フーガ」に搭載された「フォレストエアコン」は、風量を一定ではなくランダムに制御して自然風に近づけたシステムです。
また、海外では寝つきが悪い子供をドライブに連れて行く習慣がありますが、これもエンジン音と走行音などでリラックス状態にする効果があるとされます。
そこで日産は、電気自動車「リーフ」が発する様々な音や、内燃エンジンの音などから楽曲を製作し、「ドリーム・ドライブ」という名のサウンドトラックを制作、海外で発表しています。 今後、この分野の研究がさらに進めば、車内の活用法も今とは違ったものになるかもしれません。