2021年07月22日

ホワイト、ブラック……「もともとは善良」なグレークレーマーが最も厄介な理由

ホワイト、ブラック……「もともとは善良」なグレークレーマーが最も厄介な理由
2021.7.21 Diamondオンライン
援川 聡:(株)エンゴシステム代表取締役

「いつもだったら気にならないことでも、 我慢ならない」が現場を疲弊させる
 コロナ禍は、“納得できない”ことばかり。
観客を入れるのか入れないのか、その人選は正しいのか等々、開催直前なのに毎週のようにトラブル続きな東京オリンピックのゴタゴタ劇も、その良い例でしょう。

 我慢の生活が長く続き、不満をため込んだ市民・消費者は、たとえ相手が大企業でも、有名大学病院の高名な医師であっても、相手を問わず平気でクレームをつけてきます。
コロナ禍とは、皆が納得できない、モヤモヤした不満のはけ口を多くの人が探している状態なのかもしれません。

「いつもだったら気にならないことでも、我慢ならない」昨今、客に対応する従業員や窓口担当の負担は増す一方です。
その負担の原因は、クレームの正当性の見極めが非常に難しくなっていること。
 元々、クレームというのはその線引きが難しいものです。
風貌が怖く、怒鳴っているからといって悪質なクレーマーだと決めつけてはいけませんし、反対に、穏やかで丁寧な話し方でも、こちらを追い詰めてくる悪意を持ったクレーマーも存在しているからです。

ホワイト、ブラック、そしてグレーのクレーマー
 私はクレーマーの特徴に“色”をつけて説明しています。
正当なお客様の声は“白”、反対に、金品や特別対応を狙ったクレームを“黒”といった具合です。
 このように分ける理由は、クレームを「お客様の声」と一くくりにしてしまうと、ブラックなクレーマーの悪意に気づかず、担当者も現場もどんどんと疲弊し、追い詰められてしまうから。
警察沙汰だけではなく、最悪の場合、担当者が自死してしまうケースもあるのです。

クレーム対応において、「見極め」は本当に大切なことなのです。
 一般的に、お客様が正当な要求や苦情を申し立てる場合は、ホワイトゾーンと位置付けます。
jyuf数でいえば、企業に寄せられるクレームの大半がホワイトゾーンに属しています。
これは「お客様の声」として大切に扱うべきものです。

 ホワイトゾーンの対極にあるのが、金品目当てや、詐欺・恐喝まがいのクレームであるブラックゾーンです。
以前は反社会勢力の「プロクレーマー」が暗躍していましたが、暴力団対策法の施行と追放運動の社会的機運によって、その数は激減しました。

その一方で、最近はいろいろな混乱・混沌が目に付くようになったからか、一般市民(消費者・患者・顧客)の一部が悪質化し、過敏で過大な要求をためらいなく求めるケースが増えています。
最初は一般の顧客からの正当な要求や苦情から始まったとしても、意図的に金品を狙ったり、詐欺まがいのクレームを起こしたりするようになると、このブラックゾーンに属することになります。

「グレーなクレーム」の難しさ
 ここ数年、クレーム対応を複雑にし、対応する現場従業員を疲弊させているのがグレーゾーンクレーマー。
“白と黒の間”のクレーマーという位置付けです。
 グレーゾーンのクレーマーたちは、簡単に白黒ハッキリ付けられないのが特徴です。
ブラックなクレーマーが暴力団追放の流れに順応するように悪意を巧妙に隠し、ブラックからホワイトにトーンダウン(ホワイトのふりを)するパターンや、元々は善良な人たち(大衆)が、信じられないような詐欺師まがいの行動を取ったり、常識では考えられないような理不尽な要求を突きつけたりする「大衆モンスター」と化してしまうパターンもあります。

 こうした、グレーゾーンクレーマーへの対応は、目的の見極めが難しいため、非常に厄介です。
お客様の主張していることと、本当に求めていることが合致しないケースもあります。
こちらがおわびの気持ちを伝えても絶対に納得せず、相手の要求も曖昧な場合は、注意が必要です。
クレーム対応をホワイトゾーンからグレーゾーンにギアチェンジする必要があります。

ワクチン接種反対の市民が抗議に来て、 道庁・市役所の職員が感染
 先日、“ワクチン接種反対グループ”を名乗る市民がマスクを着用せずに札幌市役所に抗議に来たというニュースがありました。
抗議に来たといえども、相手は市民。
札幌市役所によると「マスクを着けることやパーティションのある部屋での対応をお願いした。ご理解はいただけなかった」とのことなので、職員はどうしても濃厚接触を免れません。
 対応した市役所の職員3人がコロナに感染したといいます。

このグループは北海道庁もマスクをせずに訪れ、このときに応対した道職員からも4人の感染者が出ているそうです。
 私はその場にいたわけではありませんが、
「ワクチンを接種しなければならない根拠をちゃんと回答してくださいよ!」 「万が一、ワクチンを接種して死亡したら、責任を取るのか」 「ワクチンを打つことで健康が阻害される可能性を、説明する義務があるのでは!?」  など、マスクをしない口から、文言とともにつばのしぶきも散っていたのではないかと予想できます。

 今回のトラブルで感染してしまった職員の方は気の毒としか言いようがないですし、当事者ではない私が詳しい状況を把握しているわけではありませんが、感染を広げないという職員の安全性の面から考えると、対応の線引きが甘かったと思わなくもありません。

クレーム対応で大切な見極めはスピード感も求められるのです。

クレーム対応は早めの火消しが大事  
私はクレーム対応を消火活動に例えています。
ボヤで済ませるための「初期消火(初動対応)」は重要ですが、今回のトラブルに限らず、クレームの見極めをせずに、丸く収めるための特別扱いなどの対応は、取ってはならない禁じ手といえます。
もし、飲食店や接客現場でも、過大な要求を断らず、すべて客の言いなりになっていたとしたらどうなるでしょうか?
 特別対応や金品による補償に何ともいえない高揚感を得て、「自分は間違っていない。正しいことをした」と勘違いする人も多いでしょう。

「本当にそのクレームは“お客さまの声”なのか?」正当性と向き合う前に、こちらの言い分を相手に納得してもらおうとしたり、トラブルをなかったことにしようとしたりすればするほど、相手の言いなりになるしかなくなるのです。
まさに、アリ地獄に陥ったアリ状態。
もがけばもがくほど深みにはまってしまう……
そうならないように、“見極めポイント”を知っておくことが大切なのです。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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