2021年08月28日

財務省の「人災」で、これから日本経済に「倒産ラッシュ&大不況」がやってくる!

財務省の「人災」で、これから日本経済に「倒産ラッシュ&大不況」がやってくる
8/27(金) 現代ビジネス
過少投資という「罠」
鈴木 貴博

財務省発の「奇妙なニュース」 これは人災だ
 「奇妙だな」と思うニュースを耳にされた読者も多いかと思います。
7月5日に財務省は2020年の税収が過去最大の増収になったと発表しました。
 コロナ禍不況が危惧される中で昨年末、財務省は税収予測を下方修正していたのですが、驚くべきことにその政府の予想を5兆7000億円も上回ったといいます。
 このうち消費税の税収増が約2兆6000億円にのぼるのは驚きには値しません。

消費税を値上げしたら税収増になったわけで当たり前のことです。
 この記事で問題にしたいことは消費税ではなく、コロナ禍で大幅に減収すると政府が予想していた法人税が、その逆で増収になったことです。
政府予想からすると3兆円以上も上ぶれしたのです。

 それが意味することが何なのか? …が、今回の記事のポイントです。
先に申し上げておくと、これは日本経済にとって悪い兆候です。
 私が以前勤めていたコンサルティングファームに伝わる「再建屋ジョーの悲劇」というビジネスの寓話があります。
 創業者のブルース・ヘンダーソンがファームに勤務するコンサルタントのために記した、コンサルタントが持つべき視点集のひと項目として配布されていたエピソードで、もう古いコンサルタントしか知らないかもしれません。

日本でひそかに進行する「悲劇」
 1960年代のアメリカの話です。
再建屋として有名なジョーというプロ経営者がいました。
 彼は赤字の事業会社からスカウトされて、経営を任されるとわずかな期間にその企業を黒字化に持っていきます。
再建が終わると次の会社に乞われて転職する。
そうやってジョーはヘッドハンターの間で有名人となります。

 ところがジョーを雇った会社は再建後、数年すると必ず、それまでよりもずっとひどい赤字に転落するのです。
そのことがわかり、そのからくりも広く知れ渡って、結局ジョーは花形の再建屋ではなく会社を壊す経営者だという逆の評判が広まりました。
 表舞台から姿を消すことになり、これが再建屋ジョーの悲劇です。

 ジョーのやり方は、赤字企業の売上に合わせて費用をカットすることでした。
売上規模に応じて人材をカットし、販促費や広告費をカットし、品質も落とす。
それをやると赤字の事業は単年度では黒字化します。
この段階でジョーは多額のボーナスをもらって別の会社に転職していたわけです。

 ところがこの会社が行ったことは投資の削減に他なりません。
 人材を減らし、広告を減らしということは、その年の業績には影響しないけれども、数年すればそのツケが必ず回ってきます。

必ず凋落する会社の「共通点」
投資とコストは表裏一体 photo/iStock  品質を下げるというと問題外に思えますが、コールセンターの席数を減らす、顧客サービスのメニュー(現代風に言えばポイント制度など)を改悪する、アテンドする社員の数を減らすなど、顧客から見えないところで品質を下げる方法はたくさんあります。
 これも実は投資削減です。

今のサービスを減らすことで、未来の顧客のリピートを確実に減らします。
 こうしてジョ―が去った会社は必ず凋落し、やがてそのからくりが知れ渡るとジョー自身も凋落するという悲劇の連鎖が起きました。

 さて、ここが今回の記事の本題です。
コロナ禍の最中の日本企業はジョーの寓話と同じことを、偶発的に実行しているかもしれません。
 実は、私の会社自体、今期の業績は例年よりも良いのです。
コロナ禍で収入は減っているのですが、それ以上に費用が減っているからです。

 小規模なコンサル会社の財務状況というのは世の中から見れば例外的なものですが、それでも参考になると思うので内情をお話しします。

コロナ不況で利益が出るという「カラクリ」
 コンサルは知恵を売る商売ですから、その知恵を集めるために投資をします。
 一年を通して大きな金額がかかる投資としては、年に数回、海外に出張していろいろな事例を研究します。
コロナ前の2019年はDX(デジタルトランスフォーメーション)事例を収集するためにシリコンバレーに出かけたり、ベンチャーキャピタリストの話を聞いたりといった活動を当然のように行っていました。

 もうひとつお金がかかるのが、週2回ぐらいのペースでの会食です。
 「何を贅沢なことを言っているんだ!」  とプチお怒りモードに入る読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、経営者との会食という日課は経営コンサルタントの投資としては非常に重要なものです。
 それなりにお金のかかるお店を用意して、先方には舌鼓を打ってもらいながら、私は情報を収集します。
まあ半分ぐらいのケースでは先方に御馳走していただくし、会食の場でたくさんアドバイスもしますので、ギブアンドテイクといったほうが状況的には正しいかもしれません。

この海外出張と経営者との会食で実に年間数百万円規模のお金が出ていきます。
これが通常の年の支出です。

過少投資という「罠」
 そしてすでにお気づきのとおり、コロナ禍のおかげでこのふたつの投資はほぼほぼ2020年以降、ゼロの状態が続いています。
 それ以外にも備品の買い替えや交通費、手土産の出費など細かい支出削減が積みあがっていきます。
だから業績は前年よりもよくなっている。
これがうちの会社の場合の増益のからくりです。

 一方で、プロのコンサルの立場では今の状況についてひやひやしています。
 日本はDX後進国で、コロナ禍の世界では、アメリカにせよ中国にせよデジタルを活用した新しいビジネスが成長しています。
 海外のニュースでそういった話を耳にはするのですが、コロナのおかげで実際に自分で海外の現場を見に行くことができない。
この一年については、確実に海外在住の事情通の人々との間の情報格差が広がってしまったことに気づいていて、私はそこが怖くて仕方がないのです。
 ここまでの話はわたしの会社の特殊事情ですが、おなじ現象が製造業、小売業、サービス業などどのような企業においてもコロナによる偶発事態として起きています。

 政府の予想を裏切る形で法人税収が5兆円以上も上ぶれしたということは、日本全体でコロナ禍の過少投資がそれと同額の規模で起きていることは確実です。
 場合によってはコロナリスクに過剰反応して、必要以上にあらゆるコストをカットしまくった企業もあったはず。
だからこそ法人税収はかつてない規模へと積みあがってしまったわけです。

「悲劇」を見過ごす財務省の怠慢  
どの企業もコロナ禍で激減した売上需要に対して生き残るために、非正規労働者を切り、不採算店を閉じ、不要不急な出張を抑制し、コストカットに努めてきたはずです。
単年度の生き残りには最適な対策が、長期の利益や成長を犠牲にしているのです。
 そして再建屋ジョーの悲劇はアフターコロナになってからやってきます。

 投資を減らしたことでアフターコロナの回復期にあたる2022年、2023年と減収が始まります。
店を閉じた地域で、人材を減らした分野で、商品を廃版にした領域で、投資削減の2年後から、売上の減少が顕著に始まります。
 やっかいなことに再成長させようとしたら、その投資額はコストカットの倍はかかります。
店を閉じる際には二束三文で資産を買いたたかれ、出店には一から投資がかかる。
やめてもらった社員の代わりは一から育てなければなりません。
 それは経営者はみんなわかっていたことなのです。
わかっていたけれどもコロナ禍という未知の経営危機がやってきたからとにかく緊急避難行動を行った。

 たぶん財務官僚は30年前と比べて劣化したのでしょう。
そのことがわからずに税収増だと驚いている。

財務省の「人災」
 アフターコロナに日本経済全体で起きる「再建屋ジョーの悲劇」を回避するためには、企業に投資余力を与えなければいけない。
 つまり今、法人減税に取り組まなければアフターコロナの大不況がやってくるのは確実なのに、その動きがまったく見られない。
 未来予測の専門家として断言しておきます。
 これから確実にやってくると予測されるアフターコロナの日本企業低迷の悲劇は、財務省自体が再建屋ジョーになっているから起きるであろう未来の人災なのです。

   鈴木 貴博
posted by 小だぬき at 00:54 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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