40代から始まる「認知症」の超初期段階とは?予防に役立つ生活習慣を医師が解説
10/15(金) 婦人画報
認知症全体の70%近くを占めるアルツハイマー病。女性に多いことも知られています。
このアルツハイマー病は15〜20年かけて徐々に進行します。
つまり、60代後半から発症すると仮定すると、40代から病気の芽が少しずつ大きくなってくるということになります。
お話を伺ったのは……
新井平伊先生(アルツクリニック東京院長 順天堂大学医学部名誉教授)
●順天堂大学大学院医学研究科修了。
順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て2019年より現職。
アルツハイマー病の基礎と臨床を中心とした老年精神医学が専門。
著書に『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』(文藝春秋)ほか。
取材・文=増田美加(女性医療ジャーナリスト)
『婦人画報』2021年11月号より
認知症はいつから始まっている?
アルツハイマー病では、脳にアミロイドβというタンパク質が蓄積し、それが引き金となりタウというタンパク質が蓄積します。
このタウが神経細胞を傷害し、脳萎縮を起こすことがアルツハイマー病の原因のひとつといわれています。
脳の萎縮が起こると記憶障害に加え、日常生活でさまざまな症状が現れます。
「一般的なMRIの脳ドックや認知症心理検査などで兆候が見られるのはMCI(軽度認知障害)の段階であることが多いのですが、実際にはその15〜20年前から症状の進行は始まっているのです。
一般的に60代後半で発症するとすれば、40代の段階から発症リスクをできるだけ軽減する取り組みが必要なのです」と新井平伊先生。
いま知っておくべきSCD(主観的認知機能低下)とは?
認知症の前段階といわれるMCIは、周囲もその変化に気づき始める段階です。
じつはMCIにはさらにその前段階があり、自分だけが気づく変化が現れるSCD(主観的認知機能低下)という段階があることがわかってきました。
「その変化を早い段階で捉えてアクションを起こすこと。つまり早期発見・対策が何より大切です」と新井先生。
症状はもの忘れだけでなく、注意、集中、意欲、気分の低下など。そこに女性は更年期の女性ホルモンの低下によるさまざまなダメージも加わります。
「最初にどんな症状が出てくるかは、個人差が大きいのです。見極めのキーワードは“変化”。
以前との変化に気づくことが大切です。
MCIの段階でも早期発見し、適切に対処すれば、16〜41%の人が正常に戻るというデータも報告されています。
さらに、その前のSCDの段階で気づき、生活改善を行って危険因子を減らすことは、重要で確かな認知症の予防となるのです」と新井先生。
脳機能は年齢により低下しますが、50歳からの低下が顕著になります。
更年期世代はいますぐ始めることが大切です。
認知症予防のためにいまから改善すべき生活習慣とは?
「脳機能の老化を予防する対策は、最も始めやすい生活習慣の見直しからがいいでしょう。
肥満、糖尿病、高血圧、歯周病などの生活習慣病は、認知症と密接につながっています。
これらの生活習慣病の人は、これを改善することで、確実に脳寿命を延ばすことができるのです。
生活習慣病でない人でも、これを予防できる生活習慣かどうかの見直しを。身体活動(運動)は十分か、バランスのよい栄養摂取はできているか、認知トレーニングはできているか、です。
認知トレーニングは、わざわざ計算問題などに取り組まなくても、現役世代は日々の仕事でこなしている推理→判断→決定のプロセスで鍛えられます」
また睡眠不足は、脳にアミロイドβを溜め込む原因になるため、質のよい睡眠は、運動と同様に非常に重要です。
「睡眠時間は短すぎても、長すぎてもよくありません。6.5〜7時間程度が最適とされています。
眠れない人は、睡眠剤を飲んで寝たほうがよいです。
寝酒は睡眠の質を悪くするのでNG。お酒より睡眠剤のほうが安全です。
睡眠時無呼吸症候群がある人は認知症予防のためにも治療しましょう」と新井先生。