2021年11月06日

夜中に目が覚める「中途覚醒」、睡眠改善のプロが教える解決法とは

夜中に目が覚める「中途覚醒」、睡眠改善のプロが教える解決法とは
2021.11.5 Diamondオンライン
真島加代:清談社

眠りについてからふと目が覚めて時計を確認すると、まだ深い夜だった。
誰しも一度はそんな経験をしたことがあるはず。
就寝してから何度か目が覚める「中途覚醒」は、中高年代以降からその頻度が高くなるという。
睡眠負債にもつながる不快な中途覚醒の回避方法に迫る。(清談社 真島加代)

年齢を重ねるごとに 目が覚めやすくなる
 せっかく床についたのに、夜中に何度も目が覚める……。
そんな悩みを抱えている人は「中途覚醒」という不眠の症状が関わっているかもしれない。

「中途覚醒とは、睡眠の途中で目を覚ましてしまい、その後眠れなくなる不眠症状です。
学術界では睡眠の状態を測定する終夜睡眠ポリグラフ(※)という検査を受けたときに、『睡眠が始まった』と判定されてから『睡眠が終わった』と判定される間に『覚醒』と認められたタイミングが、いわゆる中途覚醒にあたります」
(※)…脳波・眼球運動・心電図・筋電図・呼吸曲線・いびき・動脈酸素飽和度などの生体活動を一晩にわたって測定する検査。睡眠の状態が測定できる。

 そう話すのは、上級睡眠改善インストラクターの安達直美氏。
中途覚醒の代表的なものでいえば、睡眠中に尿意を感じて目覚める「トイレ覚醒」がある。
だが、中途覚醒の原因はそれだけではないという。
「そもそも動物にとっての“正常な睡眠”とは、命の危険が迫ったときにいつでも覚醒できる状態を指しています。眠っている間も自分を守るための生存戦略でもあるのです。
したがって、地震や騒音、異臭、寝具による違和感など、周囲の環境変化による外的刺激や、アルコールやカフェインなどの刺激物、体調、精神的ストレスなど内的刺激が覚醒の原因になることもあります」

 また、疾患が中途覚醒を引き起こしているケースもあり、健康状態とも密接に関わっているという。
 中途覚醒を招く要素はそれだけではない。
「年齢を重ねると眠りが浅い時間が増えていくので、ノンレム睡眠のより深い睡眠状態に入る回数も減っていきます。
そのため、50代以降の人は、ちょっとした刺激でも目が覚めやすくなるのは自然な事象でもあります。
また、ストレスによって強い緊張を感じるタイプの人は自律神経が休まらず、中途覚醒を引き起こすことが多いと考えられます」

 刺激や年齢など、さまざまな要因が絡み合って中途覚醒が発生しているようだ。

中途覚醒に睡眠睡眠負債 放置すればうつのリスクも
 誰にでも起こりうる中途覚醒だが、そのまま覚醒の頻度が高まるのは危険、と安達氏は指摘する。 「トイレ覚醒をしても、寝床に入ってすぐに寝付けるならばあまり問題はありません。
しかし、中途覚醒の回数が増えすぎて睡眠の質が悪くなると、朝起きたときに熟睡感がなく、起床後の疲労回復感も得られないと、日中の活動に支障が出る可能性も。
中途覚醒によって睡眠の質が悪化する期間が長引けば、うつ病につながったり、重篤な病を引き起こしたりするリスクも高まります」

 眠りの質の低下は、百害あって一利なし。
状況を改善するにはどうすればいいのか。

「中途覚醒は眠っている間に発生するので原因を探るのは難しいかもしれませんが、覚醒につながる刺激を把握して、適切な対処をすることに尽きます。
たとえば、自分の枕や敷き布団、マットレスなどの寝具に違和感がある場合は、身体に合うものを選び、“寝返りが打ちやすいかどうか”を確認しましょう。
掛け寝具は、季節に合わせて温湿度調整に優れたものを使うことで中途覚醒のリスクが下がります」

 就寝時に身につける寝間着は、スエットやジャージーなどのゴムの締め付けがキツいものはNG。
ウエストがヒモになっているゆったりしたパジャマを着ると、内臓への圧迫が減り、さらに柔軟な素材であれば、よりストレスが軽減されるという。

そして、中途覚醒につながる悪習慣も改善が必要、と安達氏。
「特に“寝酒”は睡眠を妨げる悪習慣の最たるもの。
アルコールを飲むと寝付きはよくなりますが、数時間たつと覚醒作用が現れることがわかっており、睡眠の質を下げます。
また、飲酒後はアルコールの利尿作用によって尿意を感じやすくなるので要注意。
お酒は“就寝時間の3時間前”までに済ませるのがベターです」

 入眠を酒に頼るとアルコール依存症のリスクも高まるなど、デメリットも多数。
寝酒の習慣は断ち切ったほうがよさそうだ。
 また「日中の運動量」も中途覚醒と密接に関わっている、と安達氏は語る。
「睡眠の質と日中の活動の質は表裏一体です。
中強度の運動を習慣化すると、深い睡眠がとりやすくなるといわれています。
一日の中で最も体温が上がるのは、就寝時間の3〜5時間前なので、そのタイミングで10〜20分程度、ウオーキングなどの軽く息が弾む運動を習慣化してみると夜の快眠が期待できます」

 長引く自粛生活で運動不足になっている人は、睡眠の質が悪化している可能性も。密を避けつつ運動をすれば、熟睡できるかもしれない。

眠れないときは ベッドから出る
 日頃の対策も重要だが、何かの拍子で夜中に目覚めてしまう日もある。
もしも中途覚醒後に寝付けなくなった場合は、どうすればよいだろうか。
「実は、眠れないことを思い悩んでベッドの中でもんもんと過ごすほうが寝付きを悪くします。
眠気の周期は90〜120分周期でやってきます。眠れないと感じたらベッドを出てソファに座るなど、一度睡眠から離れて再び眠気が強くなるのを待ちましょう。
その際、スマホの画面を見るとブルーライトの影響で脳が興奮状態になるので、触らないようにしてください。
もしも、中途覚醒が増えて日中も強い眠気を感じる日がとても多いなら、睡眠専門の病院の受診をおすすめします」

“睡眠”の重要性が注目を集めている近年では、睡眠外来など専門病院も徐々に増えつつある。
悪化する前に専門家に相談すると安心だ。睡眠によって得られる疲労回復は、私たち高等動物に与えられた効率のいい生命維持機能のひとつです。
まさに心身の健康の源。

中高年世代で中途覚醒が増えている人は、さまざまな工夫をして睡眠の質をよい状態にキープできれば、高い免疫力も維持できるはずです」

 中途覚醒に悩まずぐっすり眠りたい……。
その願いをかなえるためにも、まずは自分の睡眠環境と生活習慣の見直しをしてみよう。

安達直美(あだち・なおみ)
株式会社エス アンド エー アソシエーツ取締役常務執行役員。
社団法人日本睡眠改善協議会認定上級睡眠改善インストラクター。
内大手航空会社にて国際線客室乗務員として勤務後、
装品メーカーの研究所で睡眠に関わる研究に従事。睡眠文化戦略コーディネーターを経て、現職に至る。
著書に『美人をつくる「眠り」のレッスン』(中経出版)。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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