2021年11月17日

「うつ」のような症状を引き起こす3つの原因、「だるい、しんどい」は放置厳禁!

「うつ」のような症状を引き起こす3つの原因、「だるい、しんどい」は放置厳禁!
2021.11.16  Diamondオンライン
森勇磨(もり・ゆうま)
産業医・内科医/Preventive Room株式会社代表

人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。
しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。
国立がん研究センターによれば、40〜49歳のがん患者数は、30〜39歳と比べると3倍以上です(2018年)。
もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。
本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。
「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。
初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版後、すぐに重版が決まり、感染症医・神戸大学教授の岩田健太郎氏が「安心して読める健康の教科書」と推薦文を寄せるなど、話題になっています。

「なんだか調子が悪い、やる気が出ない」
 誰にでもこのようなときはあるでしょう。
しかし、あまりに長期間続く場合は何かしらの「病気」が原因かもしれません。
 まずみなさんの頭に思い浮かぶのはうつ病でしょう。
まさに「やる気が出ない」「ぐったりする」「朝仕事に行けない」などの症状はうつ病の典型ではあります。

 しかし精神的な原因以外に、3つのホルモンの影響でもうつ病のような症状が出現することがあります。
 これから紹介する3つのホルモンはすべて血液検査で測定することが可能です。
あまり手間がかからず検査できます。

@甲状腺(こうじょうせん)ホルモン
 1つ目は「甲状腺ホルモン(FT3、FT4)」です。
「甲状腺」は、のどぼとけの下にある蝶々のような形をした臓器です。
心臓や脳、胃腸の働きを活発にする、いわば「体を元気にするホルモン」を分泌しています。
このホルモンの名前が「甲状腺ホルモン」です。

 そして甲状腺は体内の炎症や内服薬の影響で機能低下することがあります。
その際には「体を元気にするホルモン」の分泌量が低下するので、だるい、やる気が出ない、疲れやすい、眠いといった症状が出るわけです。
 甲状腺の機能が低下してしまう病気としては「橋本病(慢性甲状腺炎)」が最も有名でしょう。
細菌やウイルスから体を守っている「自己抗体」が何らかのきっかけで甲状腺を「外敵」と認識して攻撃します。
 そのため甲状腺から分泌されるホルモンが減るのが橋本病です。
圧倒的に女性に多く、中年女性にとっては頭に入れておきたい病気です。

A副腎(ふくじん)ホルモン  
2つ目のホルモンは「副腎ホルモン(コルチゾール)」です。
 副腎とは、腎臓の横に備えつけられた申し訳程度の大きさの臓器です。
そこから出る副腎ホルモンは、血圧や心臓の機能を維持するなど、実は人間の体にとって非常に重要な役割を果たしています。
 橋本病と同じく、自己抗体が副腎を攻撃することで「副腎不全」という状態になります。
副腎ホルモンの分泌量が減ることで、だるさ、食欲の低下、脱毛といったうつ病のような症状が出現します。
 複合的な要因で「仕事ができない」コンディションにまで追い込まれることもあります。そして、「副腎不全の4人に1人が仕事を退職していた」という論文も存在しています(※1)
 要するに、「うつ病かもしれない」と思って会社に来られなくなってしまった人の中にはこの副腎不全が隠れていた可能性もあるのです。

 診断においては、血液検査で「コルチゾール」という副腎のステロイドホルモンの数値を測定します。
もし低ければ副腎不全の可能性が挙がってきます。
 これに関連して、「副腎疲労」という言葉があります。
しばしばメディア等でとり上げられますが、実は正確な医学用語ではありません。つまり「副腎疲労の治療」は存在しません(※2)
 もし症状があり「副腎不全について話を聞きたい」と思っても、「副腎疲労の治療は〜」といった表現をするクリニックにかかるのは極力控えたほうがよいでしょう。

Bテストステロン  
3つ目のホルモンは「テストステロン」です。
こちらは特に「中高年の男性」にとって関係の深いホルモンです。
 テストステロンは主に精巣で作られており、「男性ホルモン」と呼ばれています。
加齢に伴い、精巣でテストステロンを製造している「ライディッヒ細胞」の数が徐々に減り、分泌量も減っていきます。
 テストステロンの分泌量が減ると、体にさまざまな変化が生じます。
「男性更年期」という言葉をおそらく一度は聞いたことがあるでしょう。

 男性更年期とは、「LOH症候群」という疾患の中に含まれる概念です。
テストステロンの分泌量が減り、性欲、筋肉量、やる気などの低下を引き起こすものです。
 テストステロンは別名「社会性ホルモン」といわれていて、分泌量が多いほど社会的ステータスを求める傾向にあるという論文が出ています(※3)

 アマゾンのツィマネという民族のテストステロンの変化を調べたところ、狩りをしているとき、また獲物を獲得したときに非常に高い値を示したという論文もあります(※4)

 社会的ステータスを求めたり、狩りに成功したりする際に高値になることからも、「活力のある生活」をしていればテストステロンの値が高まるのかもしれません。
 いずれにしても、テストステロンが一定の値より低ければ、「LOH症候群」と診断されます。
その場合は「テストステロン補充療法」という治療を受けることもあります。

「気のせいか」と放置しない!
 ホルモンの低下による症状はつかみどころのないものが多いです。
「気のせいか」と放置したり、あるいはメンタル不調として我慢したりする人が多くいます。
自分で要因を決めつけることなく、一度病院に行くことをオススメします。
 甲状腺・副腎ホルモンは内分泌科、テストステロンは泌尿器科が専門になります。
身近な人にぜひ教えてあげてください。
(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を編集・抜粋したものです)

【出典】
※1 Benjamin Bleicken,et al. Delayed diagnosis of adrenal insufficiency is common: across section al study in 216 patients. Am J Med Sci. 2010 Jun;339(6):525 31.
※2 Flavio A Cadegiani,et al. Adrenal fatigue does not exist: a systematic review.BMC Endocr Disord. 2016 Aug 24;16(1):48.
※3 G. Nave, et al. Single dose testosterone administration increa ses men’s preference for status goods. Nature Communications volume9, 2433(2018) ※4 Benjamin C Trumble,et al. Successful hunting increases testosterone and cortisol in a subsistence population. Proc Biol Sci. 2013 Dec 11;281(1776):20132876.
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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