非喫煙者の女性に肺がん急増…女性ホルモン関与の可能性と医師
11/23(火) 女性自身
「74歳の母が先日、肺がんの手術を受けました。市の検診で、たまたま見つかったんです。
幸い早期発見でしたが、母はたばこを吸わないので、まさか肺がんになるなんて思ってもいなくて。本当に驚きました」(40代Aさん)
女性の肺がんの罹患者は増えている。
’18年の新規罹患者は約4万人。死亡者数も急増していて、同年は約2万2000人が肺がんによって亡くなった。
じつは新規罹患者の60〜80%は、Aさんの母のように、たばこを吸わない非喫煙者だという。
今年6月に肺がんを罹患していることを公表した女優の広田レオナ(58)も、〈もう何十年もタバコ吸ってないのに肺ガンか…〉とブログで明かしている。
肺がんといえば喫煙というイメージが強いが、なぜたばこを吸わない女性に増えているのだろうか。
国立がん研究センターがん対策研究所は今年、「非喫煙女性の肺がんは、女性ホルモンの“エストロゲン”が関係している可能性がある」という研究結果を発表した。
この研究にたずさわった一人で、がん対策研究所・室長の澤田典絵さんは、こう説明する。
「40〜69歳のたばこを吸ったことがない約4万2000人の女性を21年間追跡した結果、400人が肺がんに罹患。うち305人が“腺がん”というタイプの肺がんでした。
アンケート結果を分析したところ、閉経が早い女性(47歳以下)に比べて、遅い女性(51歳以上)のほうが肺腺がんのリスクが1.41倍高く、初潮から閉経までの期間が短い女性(32年以下)と比べて、長い女性(36年以上)のほうが肺腺がんのリスクが1.48倍高いことがわかったのです」
■手術によって閉経した場合も高リスク
「正常な肺や肺がんの組織には、エストロゲンが結合するエストロゲン受容体があることから、肺がんの発生にはエストロゲンが関係していると考えられます。
そのため、エストロゲンに長くさらされることが、肺がんの発症と関係している可能性があります」
食生活や生活習慣などの変化で平均初潮年齢が早まったことや、エストロゲンの分泌が少なくなる授乳期間が少子化の影響で短くなったことなどが、肺がんの増加に影響しているのかもしれない。
肺がんは、「非小細胞がん」と「小細胞がん」に分類され、女性に多い腺がんは「非小細胞がん」に属している。
卵巣を摘出するなど外科的処置によって閉経した女性は、2.75倍も腺がんのリスクが上がったという研究結果も出た。
「外科的処置によって閉経したことで、急激にホルモンの変化が生じたり、術後のホルモン剤の服用などがリスクを上げている可能性があります」
同様の研究結果は海外でも。
「米国でも過去42年間で男性の肺がんは36%減少したのに対し、女性は84%増加。
罹患した女性のうち約20%が生涯非喫煙者でした」
ボストン在住の医学博士で内科医の大西睦子さんはこう語る。
「米国のジョンズ・ホプキンス大学やペンシルベニア大学、イエール大学、アメリカ疾病予防管理センターなどで、非喫煙者と肺がんの関係は研究されています。
昨年には、ミズーリ州のトルーマン医療センターが、『非喫煙者の欧米女性より、非喫煙者のアジア女性のほうが、より肺がんになりやすい』という考察を出しました。
米国では肺がん女性の約20%が非喫煙者ですが、アジアでは肺がん女性の60〜80%が非喫煙者だったからです」
ただし、“女性ホルモン”にだけ気をつければいいわけではない。
「肺がんのリスク要因のうち、もっとも大きいのが喫煙。
ほかにも要因はさまざまあります。エストロゲンは、あくまでもリスクのひとつと考えてください。
いずれにせよ、検診を毎年受けるなどの予防をおすすめします」(澤田さん)
こうしたリスク要因をまとめたのが次のチェックリストだ。
【肺がんリスクチェックリスト】
□ たばこを吸っている、吸っていた時期が100日以上ある
□ 家族に喫煙者がいる
□ 幹線道路の近くなど空気が悪い場所に住んでいる
□ アスベストやラドンガスに暴露した時期がある
□ 親やきょうだいに肺がん罹患者がいる
□ 初潮から閉経の時期が長い(36年以上)
□ 外科的手術により閉経した
※取材をもとに本誌作成。
チェックが多いほど、リスクが高い。
あてはまる人はぜひ検診を受けよう。
「女性自身」2021年11月30日・12月7日合併号 掲載