2022年こそ「いい年」になるか?前向きさが見え始めた世の中の行方を占う
2022.1.1 Diamondオンライン
武藤弘樹:フリーライター
新年に昨年を振り返ることの意味
2022年はどうなるか
年が明けて2022年に突入した。
数字の2がたくさん並ぶ少しお得な気がする西暦であり、しかし完全なゾロ目になり得ていない点が、心なしか惜しく感じられるような年でもある。
令和は4年に突入し、だんだんと「令和」の雰囲気や方向性も定まってきたように感じられる。
令和元年、令和2年などはとりあえず「令和の○○」などと“令和”をつけておけばなんでもそれっぽくなっていて、筆者も原稿を書く際に多用していた。
しかし、もう4年ともなれば適当な“令和使い”は徐々に許されなくなってくるであろう。
今後、原稿執筆の際は注意深くいきたいところである。
本稿は、2021年を振り返る趣旨である。
新年一発目の記事でさっそく振り返るとはいかにも後ろ向きであるが、内容自体はおそらく前向きなものとなるはずなので、ご安心いただきたい。
正月松の内くらいまで日本を覆う新年のおめでたいムードに、水を差そうとするほど筆者も、やぼ天ではないつもりである。
今年の漢字が「密」から「金」へ
金メダルラッシュや金字塔に沸いた2021年
さて、2021年の大まかな世相を探ろうと思ったら大いに参考になるのが、“今年の漢字”である。
2021年は「金」となった。
新型コロナウイルスの影響で、東京オリンピック・パラリンピック開催年がずれ込み、開催に至るまで散々もめたが、いざ始まれば応援ムードとなり、大会は盛り上がった。
東京オリンピックでの日本人選手の金メダル獲得数は史上最多の27個、一方、東京パラリンピックは金メダル13個、金銀銅を合わせた総メダル獲得数は歴代2位と、オリパラともに選手は大活躍であり、これは国民、しかも自国開催の大会となれば盛り上がらざるを得ない。
開催直前に行われたYahoo!のアンケートでは「東京五輪、日本は金メダルを何個獲得できると思うか?」という質問に対し、「個数は重視しない」が67.7%と圧倒的多数を占めていた。
いざ金メダルがたくさん獲得されれば“今年の漢字”に「金」が選ばれるくらい、金メダルは歓迎された。
これは「建前では『個数は関係ない』と言っておきながら実際は金メダルをありがたがって、浅ましい」と見ることもできようが、
「出場選手の努力を肯定する意味で『個数は関係ない』と答えたが、実際に金メダルを獲得してくれるならそれに勝るめでたさはない」と考えた方が個人的にはしっくりくる。
近年の日本人の国民性の美しさがよく表れた一件であるように感じられた。
2021年は、東京五輪のほかにも各種競技に取り組む人たちの活躍がめざましかった。
将棋棋士の藤井聡太氏の史上最年少4冠や大谷翔平選手の大リーグMVP、ゴルフの松山英樹選手の日本人初マスターズ優勝などが印象深く、今年の漢字「金」は“金”字塔の意味合いもあるそうである。
ではその前年、2020年の“今年の漢字”は何かというと「密」である。
「密」という漢字自体の意味にはポジティブもネガティブもない。
2020年で見ると「リモートでも人との関係性を“密”に築くことができた」といったポジティブな声もあったが、「3密回避」があれだけ言われた年であったから、どちらかというとネガティブなにおいの方が強い。
その翌年の漢字が「金」となり、こちらは圧倒的にポジティブな文脈で用いられているから、日本全体が前向きな方向に行こうとしている、あるいは行きたがっているのが見て取れる。
中国・武漢市で新型コロナウイルスが最初に報告されてから、感染の不安、自粛のストレス、それらにまつわる経済的損失にさらされ続けた抑圧状態からの解放を、2021年の日本は希求したのであった。
この気持ちの変化には、ワクチン接種が大いに関係しているであろう。
国民多数参加の一大イベント
ワクチン接種に数々のドラマ
2021年に国内で推し進められたワクチン接種は、厚労省および首相官邸によれば2月に始まって、2回目接種完了者数は12月下旬に8割近くに達した。
国を挙げての大規模な一大プロジェクトであるから、至らない点や新たに浮上した問題点が各所で確認されたのも、順当といえば順当である。
勤務先や住む地域の違いによるワクチン接種格差や、ワクチン接種を強要する意識に端を発する“ワクチンハラスメント”について取り沙汰されるようになった。
しかしこれだけ大きな、動きのあるイベントを多くの人が共有することも珍しい。
たとえば消費税増税などは、生活への影響は甚大だが、施行されたらただ従うしかない。
また増税後の金額に次第に慣れていくものなので、世論は喧々囂々(けんけんごうごう)となったが、人々の動き自体は静かである。
一方ワクチン接種は、接種する意思を固め、予約し、会場に赴かなければならない。
そして「2回打つべし」とされていて、消費税増税などに比べると、人々は格段に大きな動きを求められた。
多数が体験を共にした“ワクチン接種”は、おのおのが自分なりのエピソードを持つ巨大な“共通の話題”となってSNSを賑わした。
「今回は注射を褒められることが多い」と喜んだ(いつもは子どもたちに泣かれてばかりの)小児科医のエピソードや、接種会場として名乗りを上げたパチンコ店についての投稿がバズっていた。
本来は味気ないまま終わりがちな“ワクチン接種”の中に、「少しでも楽しみつつやろう」とする人々のしたたかな息遣いと、その姿勢を評価しようとする衆目が感じられた。
2021年と2020年は、鬱屈した日々を前向きに生きる人たちの気配を強く漂わせていた。
特に2021年は、“再生”や“鬱屈からの解放”の一歩を踏み出した一年であったように思われる。
いまだ予断を許さない状況は続くが、2022年はようやくの晴れ間を迎えられるかもしれない。