湯あみ着で混浴、楽しいよ…笑顔の女性「視線を気にして体隠さなくていい」
2022年02月16日 読売新聞
混浴がある各地の温泉で、体の露出を抑える湯あみ着(入浴着)を着用する動きが広がりつつある。
混浴施設は近年、マナーの悪化などもあって敬遠され、利用者は減少傾向にある。
施設関係者らは「湯あみ着で入浴することで抵抗感を減らし、世代や性別に関係なく、混浴の文化を楽しんでもらいたい」としている。
全国一の豪雪地にある青森市・酸ヶ湯(すかゆ)温泉。
1月26日、混浴の大浴場「ヒバ千人風呂」では、幅広い年代の男女が楽しげに湯につかっていた。
男性はハーフパンツ、女性はノースリーブの上着とハーフパンツ姿だ。
千葉県から訪れた20歳代女性は「視線を気にして体を隠さなくていい。落ち着いて楽しめる」と笑顔で話した。
酸ヶ湯温泉では現在、朝夜限定で女性専用の入浴時間を設けている。
ただ、「時間で区切るのではなく、皆が同じ空間で楽しめる環境を」との考えから、試験的に混浴での湯あみ着導入を始めた。
利用者の反応を見ながら今後、本格導入を検討する。
熊本県南阿蘇村の地獄温泉青風荘は、2019年に混浴での湯あみ着の着用をルール化した。
河津謙二副社長(58)は「若い人や混浴に抵抗がある人にも温泉を楽しんでもらえるようにした」と話す。
講演や著作などで温泉の魅力を発信する「温泉家」の北出恭子さん(37)によると、混浴施設は1993年には全国で約1200か所あったが、2021年には約500か所まで減少した。
北出さんは「若い世代は裸での入浴に拒否反応を示す人もいる。
男性が女性の体をジロジロ見るなどモラルに欠ける例もあり、敬遠につながった」とみている。
一方、施設によっては裸での入浴に価値を置くところもある。
利用者からは「湯あみ着では風情がない」との声もある。
岡山県真庭市の湯原温泉砂湯では16年、「隠そう下半身」と書いた看板を脱衣所などに掲げ、男性客にタオルや水着などの着用を促した。
だが、「裸で入りたい」と、何も着けずに入浴する客は今も一定数いるという。
湯治文化に詳しい東洋大(観光学)の内田彩准教授は「混浴文化をどう継承するのか、地域や施設ごとに考えていくことが重要だ」と指摘する。
温泉評論家で日本温泉地域学会の石川理夫会長も「ジェンダーレスなど現代の多様なニーズに湯治場が応えるためには、湯あみ着の導入も一案だ」と話している。