2022年06月29日

与党圧勝予測の参院選で注目、生き残る党首は誰?

与党圧勝予測の参院選で注目、生き残る党首は誰?
泉 宏 : 政治ジャーナリスト
2022/06/28 東洋経済オンライン

真夏の政治決戦となる参院選も投開票(7月10日)まであと2週間足らず。記録的猛暑の列島を汗まみれで駆けめぐる各党党首の顔は日焼けし、喉の酷使でしわがれ声も目立つ。
選挙戦の真っただ中、異例の首脳外交で5日間(6月26〜30日)も国内を留守にしている岸田文雄首相を筆頭に、国政政党9党首の表情には自信と不安が交錯し、それぞれが自らの命運も懸け、絶叫調で「わが党にご支援を」と有権者に訴える。

大手メディアなどの序盤情勢調査での予測はほとんど「与党圧勝」。
それだけに、岸田首相や山口那津男公明党代表が自信と余裕をにじませる一方で、野党第1党を激しく争う泉健太立憲民主党、松井一郎日本維新の会両代表は、眉間にしわを寄せてのライバル批判に血道をあげる。

また、中間勢力に位置する志位和夫日本共産党委員長、玉木雄一郎国民民主党代表は、それぞれ独自の立場での組織固めなどで、改選議席確保に懸命。
さらに、山本太郎れいわ新選組代表と福島瑞穂社民党、立花孝志NHK党両党首は、自らと国政政党としての生き残りをかけ、ネットも含めたゲリラ戦術などに命運を託す。

公明党の山口氏は退任確定的、維新の松井氏も引退
序盤情勢予測どおりの与党圧勝なら、岸田首相はいわゆる“黄金の3年”を手中にし、「国政選挙は3年後の衆参ダブル選となる公算大」(自民選対)との見方が支配的。
政権に挑む野党7党首も、内心ではそれを前提に選挙後の党運営に臨む構えだ。 ただ、
各党首の続投には選挙結果や任期が絡んでおり、それぞれの立場は極めて複雑。

与党の山口氏は9月の任期満了退任が確定的で、大阪市長の松井氏もすでに、来年春の市長選不出馬での政界引退を明言している。
さらに、泉、志位、玉木、山本、福島、立花の6氏も、「続投の可否は選挙結果次第」(選挙アナリスト)とみる向きが多い。

昨秋の衆院選を戦った9党首の中で、選挙後に退任したのは立憲民主の枝野幸男前代表のみ。
しかし、今回とまったく同じ選挙日程となった2016年参院選時の9党首(各党の構成は現在と異なる)をみると、現在まで続投しているのは、山口、志位両氏だけだ。

これも踏まえ、公示前日の6月21日午後に開催された、恒例の日本記者クラブ主催の各党党首討論会でも、選挙後の各党首の出処進退が話題となり、それぞれの応答ぶりに会場が沸き、関係者が耳をそばだてた。
続投が確定的とみられている岸田首相を除き、記者クラブの代表質問者から各党首に進退を絡めた質問が飛んだ。 その中で松井氏は「(次の代表は)やっぱり吉村(洋文大阪府知事)さん?」との直撃に、「いやいや、それはわが党の中で議論して決める。
僕は自民党にピリッとしてもらうために、最後の戦いで横綱に挑みたい」とややうろたえ気味に交わした。

また、今秋の7期目任期満了での退任の際の後継指名の是非を問われた山口氏は「決めるのは私ではない」と苦しい説明に終始。
20年以上も党首を続けている志位氏も、「野党共闘は途上にある」とあえて進退への言及を避けた。
党存亡の崖っぷちに経つ社民党の福島氏 一方、大激戦の東京選挙区での当選に、党代表の命運も懸けるのが山本氏。
質問者から衆院議員を約半年で辞職して参院選に出馬した手法を「有権者への裏切りでは?」と詰問され、「参院選に受かったら任期どおりやらせていただきます」と再鞍替えを否定した。
比例得票率2%未満なら政党要件を失うという、党存亡の崖っぷちに立たされている福島氏は、比例代表での自らの当選と政党要件維持に向け、「憲法改正を阻止するためにも(社民党と私は国会に)いなくてはならない」と必死な顔で哀願。
一方、同じ立場の立花氏は「今回は2人、3人(の当選)まで自信がある」と得意のユーチューブ作戦への自信と手応えをアピールした。

記者クラブ主催の党首討論会はすでに約30年の歴史があり、国選選挙公示直前に実施されるため、「国政選挙の際の風物詩」(自民長老)との位置づけ。
討論前の控室での打ち合わせの段階から、各党党首の表情や何気ない会話にそれぞれの置かれた位置がにじむ。
中央・地方各新聞社に共同・時事両通信社、さらにはNHKと民放各局のいわゆる伝統的メディアが集結するのが日本記者クラブ

討論会は慣例どおりの2部構成で、コロナ対応や物価高に円安などの経済問題、ロシアのウクライナ軍事侵攻に絡む日本の軍備増強の可否に憲法9条改正など話題は多岐にわたった。
第1部では各党首が他党首を指名して質問する個別対決。1人2回ずつ機会が与えられ、野党7党首はすべて岸田首相(自民党総裁)に“口撃”を集中したが、“岸田沼”とも呼ばれる岸田流ののらりくらり答弁に論議はすれ違ったままで、盛り上がりに欠けた。

「安倍氏への対応」質問で岸田首相は苦笑い これに対し、第2部は記者クラブ代表による質疑応答で、とくに、締めくくりともなった、選挙後の出処進退も含めた各党首への個別質問が、最大の見せ場となった。
岸田流応答で討論全体を「岸田ペース」に巻き込んで微笑を浮かべていた岸田首相に代表質問者がぶつけたのは、党内に元首相が多くいる状況への対応ぶり。
「安倍(晋三)さんの場合、いろいろな形で注文があって大変じゃないかと。どう対応しているのか、ぜひ本音で」と質問。 これには岸田首相も苦笑を禁じえず、「党内にいろいろな議論があり、私も意見を承っております。最後に結論を出さなければならない。結論が出たら一致結束してまとまっていくのがよき伝統。
最後、決めていかなければならないのが総裁の立場」と、安倍氏らへの過剰な忖度は否定して、党総裁としての決断力をアピールしてみせた。

一方、後継指名問題を突かれてうろたえた松井氏の「自民党にピリッとしてもらう」との発言にかみついたのが立憲民主の泉氏。野党第1党としての低支持率を指摘されたのに「ピリッとさせるだけではいけない。政権交代」と松井氏へのライバル意識をむき出しに。 野党なのに2022年度予算・補正予算への異例の賛成を決断した玉木氏には「参院選後には自公連立政権に加わる?」との直球質問。
真剣な顔で質問者を見つめて応答した玉木氏は「われわれはとにかく政策本位。与党の皆様にも協力してもらって、いくつかの政策を実現することができたので……」と解説したが、与党入りはもごもごと本音を隠すばかり。

衆院議員を約半年で辞職しての参院選立候補を批判された山本氏は、「これまでさまざまな鞍替えがありましたが、それに対して批判されましたか」と肩をそびやかせて反論。
今回当選すれば任期を全うするときっぱり言い切った。
さらに、立花氏は「党ができたときほどの注目度がなくなっている」との意地悪な指摘に、「明日(22日)夜あげるユーチューブにあっと驚く“爆弾”が用意されております」とネット戦法への自信をアピール。
哀願調で不安いっぱいの福島氏との対照を際立たせた。

3年後の衆参同日選挙なら岸田首相も安泰ではない ただ、予測どおりの「黄金の3年」となれば、岸田首相も2024年9月の自民総裁選という難所を抱える。
山口、松井両氏早期退任が既定路線だが、泉氏も大幅議席減となれば「続投困難」(立憲幹部)。
志位、玉木両氏も「選挙結果次第で、安泰とは言い切れない」(選挙アナリスト)。
もちろん、山本、福島、立花3氏は「本人もどうなるかわからないはず」(同)で、「首相も含め、次の国政選挙まで続投確実と言い切れる党首は見当たらない」(自民長老)のが実態。

このため、党首討論会に詰めかけたベテラン記者の間では「3年後の同日選なら、それまで誰も生き残れず、全員新人になるかも」との物騒なささやきも広がった。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック