2022年08月12日

プロが実践!「勉強する気」をひねり出す5つの手

プロが実践!「勉強する気」をひねり出す5つの手
指導者が使っている10のメソッド(前編)
石田 勝紀 : 教育デザインラボ代表理事、教育評論家
2022/08/11 東洋経済オンライン

中1男子と小5男子の子どもがいます。
2人とも、勉強へのやる気がなく、やらせることに日々イライラが募り、どうしていいかわかりません。
子どものやる気を引き出す適切な方法がありましたら教えてください。

仮名:橋本さん 勉強へのやる気がない状況を子ども視点で見ると 「子どもが勉強しない」「勉強に対して前向きではない」「点数がいつまでも伸びない」──。
筆者のもとに届く親御さんの悩み、ご相談が後を絶ちません。
「そろそろ時間でしょ」(指示) 「学校から帰ってきたらまずは宿題をやること!」(命令)
「そんな状態だと勉強ついていけなくなるよ!」(脅迫) などと親は強引にやらせようとしますが、それでは効果は限定的です。
一時的に行動したとしても、自主的でなく無理やりだからです。
効果が持続しないからと何度も言い続け、子どもとの関係が悪化する親も多くいます。

一方、この状況を子ども視点でみるとどうでしょうか。
「やる気が起こらない」 「勉強をやる意味が感じられない」 「勉強のやり方がわからない」 といった状態でしょうか。
このようにわざわざ言語化して親には言いませんが、ふてくされる、反発する、無視するという態度で示したりします。
こうなるといくら親が言っても平行線です。
そこで、こうした事態を打開する、子どものやる気を引き出す10のメソッドをご紹介します。

これは筆者を含め、さまざまな指導者たちがよく使う方法をまとめたものです。
数が10に及びますので、前編と後編に分けてご紹介します。
今回は前編の5つです。(ご紹介する順番は重要度順とは関係ありません)

10のメソッドと家庭でできる方法を紹介 <指導者が使う「子どものやる気」を引き出す10のメソッド【前編】>

(1)勉強の前に「勉強モード」に入りやすい行動・動作を入れる
塾で子どもたちに勉強を教えるとき、いきなり「はい〇〇ページ開けて」とはやりません。
やる気がある子だけなら問題ないかもしれませんが、基本的に子どもたちは、勉強しなければいけないからとしぶしぶやっていたりします。
そうした状態で教えても、大して頭に入りません。
そこで、塾などでは雑談という名の「呼び水」を向け、徐々に勉強の話に切り替えていったりします。

では家庭ではどうすればいいでしょうか。
スムーズに勉強に入れるような“動作・行動”を入れることを勧めてみてください。
例えば、「机の上を片付ける」「お気に入りの勉強道具をそろえる」「スケジュール表を書く」「頭を使わない作業から始める(漢字練習など)」といったことです。
大人でも机に座っていきなり仕事モードに入れることは少ないのではないでしょうか。
子どもも同じです。
いきなり勉強はやりたくありません。
そこで、ワンアクション入れてみると、かなり気持ちが切り替わります。

(2)必ずできることから「積み重ねる」
子どもが勉強がイヤになる原因の1つに、「わからない問題にあたる」ことがあります。
好奇心があり、意欲が高い子は、わからない問題が出てくるとワクワクして、チャレンジしていきますが、大抵の子は一気にモチベーションが下がります。
逆に、できる感覚、わかる感覚というのは、ある意味で快感です。
この心地いい感覚が作れるようにサポートします。
例えば、小5の算数でつまずいている子がいたとします。
まずは、その子がどの部分でつまずいているか調べます。
すると小3で学ぶ分数でつまずいていることがわかったとします。
では、分数からやろうと思うかもしれませんが、そこからは教えません。
もう1つ前の“できている部分”から始めます。
それが掛け算の九九だとしたら、その計算から始めるわけです。
すでにできている部分をなぜ改めてやる必要があるのか。 考えてみてください。
小5の算数ができない子が、学年をさかのぼって小3の分数からわかっていなかったとわかったときの心の状態を。 そうとうやる気がない状況にあると思います。
その状態で、前向きに小3で習う内容を勉強するでしょうか。
そこで“できている部分”までさかのぼり、小さな成功体感を積み重ねていくわけです。

具体的には次のように話をします。
「これ(九九)できるのか! なら大丈夫。ただ少し訓練しよう。いかに早く解けるかが大事だよ」 簡単な問題だと子どもはバカにしてやらないこともあります。
ですから「いかに早く正確に解けるか」を目指していきます。
そろばんや百ます計算は、まさにこれをやっていると言えます。
すると、わからない問題は1つもなく、早く解くことに意識が向かいますので、やる気が出てくる可能性が高くなります。
できる感覚がつき、飽きてきたら次の分野に向かいます。
すると「できる」という感覚を持ったまま、次に進めるため、「できるはず」という意識で前向きに問題に取り組んでいけたりもします。

勉強の現在位置と目標が見える状態にする

(3)進捗の「見える化」
プロの先生たちの多くが行っているのが、どこまで勉強が進んでいるのかの進捗を可視化することです。
例えば授業のはじめに「じゃ、目次開けて。今、第2章の第3節まできていて、今日は第4節をやるよ。ここまでくると、全体の3分の1まで終わったことになるからね」と言ったりします。
逆に「今日は〇〇ページをやります」から勉強が始まったら、子どもたちはどう思うでしょうか。今、自分はどこにいて、これからどこに向かうのかということがわからず、先が見えずに途方にくれたりもするでしょう。
ですから、現在位置と目標が見える状態にしておくと、やる気につながることがあります。

家庭で行うとしたら、例えば次のようなことをしてみてください。
小学校で漢字の宿題やテストがあると思いますが、小5の漢字一覧をプリントアウトして、壁に貼り、終わったら赤ペンで消していく作業をしてください。
これで覚えるべき漢字が残りいくつかが「見える化」されます。

ゴールが見えないときと見えるときでは、見えたときのほうがやる気になると思いますので、ぜひ試してみてください。
勉強を始めるときの心理的ハードルを下げる

(4)中途半端に終わらせておく
この方法は、勉強ができる子たちが自学自習時によく使っている方法の1つですが、あまり知られていない方法のようです。 中途半端に終わらせるとは、例えば、問題集をキリのいいところで終わらせるのではなく、問題が(10)まであれば(8)で終わらせることや、12ページで完結する場合、11ページで終わらせておくということです。
なぜ、このような方法を取るかといえば、キリよく終わらせてしまうと、次にやるときは“始めから”になり、強いモチベーションが必要になります。
しかし、残り2問で終わる、残り1ページで終わる状況から始めるとなると、すぐにキリがいいところがやってくるため、心理的ハードルが下がります。
また、勉強ができる子たちの中には、勉強が終わったら、問題集やノートを片付けずに、そのまま開いた状態にする子がいます。
なぜなら、次に机に向かったときに、勉強道具を用意するのが面倒だからです。
その面倒さが勉強へ向かう気持ちを遮ってしまうため、いちいち用意せず、いつでも始められる状況を作っているのです。 「すぐに取りかかれる」状況を作っておくことはかなり有効です。

(5)言葉によってやる気を引き出す
「どういう声かけをすれば、子どもはやる気になりますか?」とよくお尋ねいただきます。
しかし、声かけ1つでやる気にさせることは実は極めて難しいです。
親からの言葉はとくにそうです
ときに逆に作用することもあるため、親は勉強面にはむしろ触れないほうが望ましいとお答えすることもあります。
先生という立場であれば、問題が正答できたらOKを出し、解けない問題が出てきたら、「学びの過程なのだから問題ない。結果的に理解できればいいよ」など声をかけたりしますが、親は先生ではないため、言葉がけ云々では大してうまくいきません。

親ができる子どもの自己肯定感を上げる言葉かけ
そこで親としては、「子どもの自己肯定感」を“勉強以外”で上げる言葉かけをお勧めしています。
筆者は『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』という書籍を出していますが、そこでは次の10の言葉を紹介しています。
「すごいね」
「さすがだね」
「いいね」
「なるほど」
「知らなかった」
「ありがとう」
「嬉しい」
「助かった」
「大丈夫」
「〇〇ちゃんらしくないね」

それぞれ使用には多少の注意点もありますが、要するに、承認、関心、感謝、安心といった言葉を使っていくと考えてください。
すると「心が満たされることで、本来やらなければならないと自覚していること(勉強)をやり始める」ことがあります。
これまでの事例で言えば、1週間程度使い続けることで行動が変わったというケースがあります。
自己肯定感を満たすことで、行動が変わるという方法もありますので、ぜひお試しください。
以上、今回は10のメソッドのうち5つを紹介しました。

もちろんすべてができなくてはならないものではありません。
いくつかを軽く試していただけたらと思います。
   (次回、残りの5つについてご紹介します)
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 教育・学習 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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