2022年11月11日

創価学会へ統一教会批判が飛び火!それでも被害者救済法が「骨抜き」にされそうな訳

創価学会へ統一教会批判が飛び火!それでも被害者救済法が「骨抜き」にされそうな訳
2022年11月10日 ダイヤモンドオンライン

創価学会に突き刺さる厳しい視線
「学会員」の皆さんにとって、もっとも恐れていた事態が起きている。
旧統一教会に対する国民の激しい怒りが、ついに創価学会にまで飛び火してきそうな勢いなのだ。
 まず、最も延焼リスクが高まっているのが、「政治」だ。

今国会で提出すると岸田文雄首相が宣言した、いわゆる「被害者救済新法」をめぐって、自民、公明、立憲、維新の4党協議が進められているのだが、そこで公明党が「後ろ向き」だと叩かれ始めている。
 例えば、TBS NEWS DIG(11月8日)ではこんな野党の公明批判を紹介している。
「(公明党の)大口議員もすごく消極的で、条文なんかそれはなかなかできないというような話に終始されているんです」(立憲民主党 長妻昭政調会長)
「公明党さんがかなり後ろ向きだと聞いていますので、支持母体(創価学会)のことを気にされているのかと」(日本維新の会 藤田文武幹事長)
 もちろん、公明側にもこういう姿勢はよくないという自覚がある。

読売新聞オンライン(11月7日)に登場した公明幹部は、「しっかり対応しなければ旧統一教会と一緒くたにされてしまう」として、被害者救済新法に前向きでないと、「カルト」と同一視されてしまう恐れがあることを認めている。
 さらに、「宗教2世」問題にも嫌なムードが漂っている。
 11月1日、評論家の荻上チキ氏が主宰する「社会調査支援機構チキラボ」が宗教2世1131人を対象にアンケートをした<『宗教二世』当事者1,131人への実態調査>が公表された。
そこでは旧統一教会、エホバの証人と並んで、対象者が428人と多いということで「創価学会」の名前が登場しているのだ。

 そこに加えて、アンケート踏まえた「創価2世」に関する分析もかなり微妙だ。
世間でささやかれているイメージにかなり近い結果だからだ。

●政治活動への関与要求頻度は、創価学会がかなり高かった
●「信心のおかげで成功できたんだね」との頻繁な声がけ経験が最も多かったのは、創価学会2世回答者
●「不満は抱くも、辞めない創価2世」という傾向は、特徴的だ

 この調査で名前の出ている旧統一教会2世では、既に小川さゆりさん(仮名)が会見を開いて、「(教団を)解散させてください」と訴え、多くのメディアにも出演している。
また11月7日には、エホバの証人の3世として育った夏野ななさん(仮名)が野党のヒアリングに参加して、教団の活動に不真面目だとして親からベルトで叩かれるなどの体罰を受けていたことを明かした。
「となると、次は創価2世も…」という憶測も飛び交っている。

高額献金は「宗教あるある」、論点ずらしは許されない
 Twitterでは、「創価学会2世」というプロフィールのアカウントが「高額献金」に関して次のように発信し、話題になっている。
======================
私の母親(故人)の創価学会への寄付の領収書を確認しましたらおおよそ通算で1000万円以上、創価学会に寄付してました。
仕事を持たない主婦がですよ。晩年、母はお金がありませんでした。
#創価学会さん 母に返してあげてほしかったです。
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 この手の話については、実は山上徹也容疑者が事件を起こしてすぐ、7月17日にABEMATVに出演した宗教学者の島田裕巳氏も次のように述べていた。
「統一教会に限らず、色々な団体で高額なお金を出す例はある。
私の知り合いで創価学会に一家で8000万円献金したという方もいるので、そういう例はあると思う」

 爆笑問題・太田光さんのように「旧統一教会擁護」と叩かれて、自宅に卵を投げつけられたりもしてしまうので専門家もこういう話はあまりしないが、実はほとんどの宗教で「高額献金」というものは存在している。
しかも、その多くは信仰にのめり込んで、家族や周囲の人に黙って献金しているケースも多い。

 つまり、「被害者救済」の名のもとで、献金の総量規制などをするとなると、宗教法人としての運営そのものを根幹から見直さないといけない団体が山ほどあるのだ。
なので、一部の宗教団体は高額献金問題を「旧統一教会が悪質なのは、日本人の金を韓国へ流出させていたことだ」という方向へと論点をずらして、献金ではなく、「海外送金」に対する規制にとどめようとしている。

 ただ、このように旧統一教会への国民の怒りが、創価学会にまで飛び火している状況を見れば、さすがにそんな「骨抜き」は許されない。
 もし「信教の自由」を理由に、寄付の取り消しや高額献金の問題をカバーしない「骨抜き法案」を通したり、今国会での提出を先送りするようなことがあれば、岸田政権の支持率が危険水域になるだけではなく、公明党批判も強まるだろう。
ひいては、深刻な創価学会バッシングを引き起こしてしまう恐れもある。
 政府与党として、このような展開は避けたい。となると、野党に歩み寄って、被害者や霊感商法に取り組む弁護士らが要求している、「家族ら第三者による寄付の取り消し権」「マインドコントロール下での高額献金禁止」をしっかりと盛り込んだ新法ができるのではないか。
そのような期待を抱いている人も多いことだろう。

 ただ、筆者はそれでも今回の被害者救済法は「骨抜き」にされるか、「先送り」にして世間の関心がなくなるのを見計らって廃案へ持ち込むのではないかと思っている。
 仮に公明党が世論を警戒して、最大限の譲歩をしてきたところで、自民党内の意見が分裂して、「高額献金」などの問題が棚上げされるだろう。
なぜかというと、自民党というのは組織構造的に、宗教団体を怒らせる政策ができない政党だからだ。

地下鉄サリン事件後の「宗教問題」の対応と重なる現在  
それを象徴するのが、1996年に「宗教法人基本法案」と仮称で呼ばれた、自民党の“幻の法案”だ。
 当時、95年のオウム真理教による地下鉄サリン事件を受けて、「カルト宗教問題」が大きな社会テーマになっていた。
そこで自民党としては、宗教法人をもっとしっかりと管理すべきということで宗教法改正を推進したのだが、それだけではまだ十分ではない、という世論があった。
それに応える形で、自民党は「宗教問題ワーキングチーム」を立ち上げて、新法の骨子をつくった。
「歴史は繰り返す」ではないが、今のムードとまったく同じなのだ。

 ただ、この法案の中身を聞くと、今の自民党支持の保守系の人たちはひっくり返ってしまうだろう。
『自民党が検討している「宗教法人基本法案」(仮称)の骨格が四日までに固まった。
宗教団体の政治活動の「政教分離」に関する憲法二〇条の政府解釈を見直し、宗教団体の政党創設を禁じたほか、靖国神社への首相、閣僚の公式参拝も事実上、禁止している。
また、「信者の脱会の自由」や「霊感商法の禁止」などの規定を盛り込んでいるのが特徴だ』(読売新聞1996年1月5日)

「靖国参拝」とともに引っ掛かるのは、「宗教団体の政党創設禁止」だろう。
実はこの時、自民党は社会党、新党さきがけと連立を組んでいた。公明党は分裂して、その一部は小沢一郎氏率いる新進党と手を組んでいた。
 そういう経緯もあって、この時期の国会では亀井静香氏や島村宜伸氏らが厳しい公明・創価学会批判を繰り返していた。
亀井氏にいたっては、池田大作名誉会長から公明党に指示があるのかなどを確認するため、池田氏の国会招致を請求して、学会員の皆さんから「仏敵」などと憎まれていたのだ。
 そんな公明党との「敵対関係」を考えれば、この自民党主導の「新法」は、たとえ靖国参拝などの箇所は削られても、何かしらの形で検討が続きそうだ。

オウムの事件で社会問題化した「宗教被害者」の問題もそれなりにカバーされている印象だ。
だが、そんな画期的な法案はあっさりと闇に葬り去られた。
 これに先駆けて推進をした宗教法改正が、大事なお客さまたちの「逆鱗」に触れてしまったからだ。
わかりやすいのが、この法案の報道があった2カ月半後、岐阜であった参院補欠選挙だ。
ここでは与党統一候補の大野つや子氏が当選したが、実はこの時に立正佼成会は推薦を見送っている。
 推薦見送りの理由は、補欠選挙の前、党内でも立正佼成会と関係が深いと言われる田沢智治元法相がとった行動を見ればわかる。

「朝日新聞」(名古屋版 1996年3月20日)によれば、田沢氏は大垣教会へ出向いて、「南無妙法蓮華経」と書かれた白い襷をかけて、仏像を背にしてこう頭を下げたという。
「昨年、ご迷惑をかけた」「宗教法人法改正を慎重にするように主張してきた」(同紙)

 立正佼成会は当時、自民党を支持する新日本宗教団体連合会(新宗連)の主要団体を務めていた。
新宗連の中には、宗教法改正に反対している宗教団体も多かった。
完全に顔に泥を塗られた形だ。
立正佼成会の幹部は、こう恨み言を述べている。
「自民党には裏切られた思いだ。これまで通りの支持はできない」(同紙)

 ここまで言えば、筆者が何を言わんとしているかお分かりだろう。
役員名簿や財産目録の提出などが含まれた宗教法改正でも、これだけのハレーションが起きていた。
立正佼成会に限らず、自民党議員は選挙支援を受けている全国の宗教団体に「謝罪行脚」だったのだ。

「法規制は避けたい」というのが自民党の本音か
 今、野党側が求めている「家族ら第三者による寄付の取り消し権」
「マインドコントロール下での高額献金禁止」など法規制を自民党が認めてしまったら、自民を支える宗教団体からすれば、「裏切り」どころの騒ぎではない。
自民党から「宗教票」がごっそりと消えてしまうだろう。
 ましてや、自民党の保守系議員には心強い味方である「日本会議」の中には、ネット上で元信者の方が霊感商法だったと告発しているような団体もある。
法制化されたらこのような告発の動きが活性化することも考えられる。

もしそれが注目を集めたら、旧統一教会問題の「再現」で、祝電を送った、式典で挨拶をした、と支援を受けた議員はボコボコに叩かれる。
自民党としてもこのあたりの法規制はできることならば避けたいところもある。  

つまり、オウム真理教の問題が落ち着いてきたら、宗教法人基本法案をサクッと葬ったように、旧統一教会問題がトーンダウンしてきたら今回の「高額献金禁止」「被害者救済」の新法もお蔵入りにしてほしい、と願う人が自民党内にはかなりいらっしゃるというわけだ。

 これが旧統一教会と同一視されることを恐れた公明党が譲歩をしても、最終的には「被害者救済法」が骨抜き・塩漬けにされてしまうと筆者が心配している理由だ。
 ただ、この状況は見方を変えれば、宗教法人にとってはチャンスでもある。
ここで積極的に「高額献金禁止」や「被害者救済」を後押しすれば、「おお、カルト規制に賛成しているということはきっと“良い宗教”に違いない」と世間の評価が上がる可能性もある。
 もちろん、長い目で見れば、自分の首を絞める可能性もあるが、新しい信者の獲得にプラスなるかもしれない。
自民党支持の宗教団体の皆さんも、ぜひとも柔軟な姿勢でこの問題を考えていただきたい。
        (ノンフィクションライター 窪田順生)
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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