2022年11月26日

岸田首相退場へ、いよいよカウントダウンが始まった…政権が欠く2つの重職

岸田首相退場へ、いよいよカウントダウンが始まった…政権が欠く2つの重職
小倉健一:イトモス研究所所長
2022.11.25 ダイヤモンドオンライン

内閣支持率が続落する中、岸田文雄首相の「孤立」が深刻化している。
頻繁に自民党幹部や派閥領袖らとの面会を繰り返しているが、彼らの真意を見極められず疑心暗鬼が広がっているのだ。
唯一、全幅の信頼を置く長男を首相秘書官に抜てきしたものの改善効果は見られず、もはや「聞く力」は周囲の進言に耳を傾けない「聞かない力」へと変貌しつつある。(イトモス研究所所長 小倉健一)

岸田政権も宏池会も 強い危機感に包まれている
「もう、バラバラだよ」。
こうため息を漏らすのは、岸田文雄首相が率いる自民党第4派閥「宏池会」(岸田派)の中堅議員だ。
 11月10日の派閥会合で事務総長を務める根本匠・衆議院予算委員長は「言動に責任を持ち、高い緊張感を持って一致結束し、岸田政権を支えていかなければならない」とげきを飛ばした。

宏池会は、約30年ぶりに首相を出した名門派閥とは思えないほどの危機感に包まれる。
 それもそのはず、年初までは高かった内閣支持率は下げ止まらず、不安定な政権運営が続いているのだ。
 読売新聞が11月4〜6日に実施した全国世論調査で、支持率は内閣発足以降最低の36%(前回10月調査は45%)となり、初めて30%台に落ち込んだ。
不支持率は4ポイント増の50%だ(同46%)。

また、朝日新聞の調査(11月12、13日)で支持率は37%(同40%)に低下し、不支持率は51%(同50%)。
産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)による調査(11月12、13日)でも下落傾向は変わらず、岸田内閣を「支持する」は38.6%、「支持しない」は57.2%となった。

 岸田首相は周囲に「今は耐えていくしかない」と漏らしているが、政権への逆風は簡単には収まりそうにない。
 10月28日には円安・物価高騰対策を柱とする総合経済対策を閣議決定し、「国民の声を受け止めながら一つ一つ結果を積み上げ、この国の未来に全力を尽くし、国民の信頼を回復する、こうしたことを積み重ねていきたい」と意気込んだ。

ところが、FNNなどの調査では、政府の物価高対応を「評価しない」が76.0%に上った。
国民に寄り添っているとは受け止められていない現実が首相に突き刺さる。
 なぜ岸田首相はここまで四面楚歌になってしまったのか。
その理由は、現政権が二つの重職を欠いているからだろう。その深刻な実態をお伝えしたい。

岸田政権に足りない 一つ目の重職は「番頭」
 岸田首相が苦境に立たされているその最大の理由は「番頭」の不在だろう。
 2012年12月から7年8カ月にわたる長期政権を築いた安倍晋三元首相には、中央省庁ににらみをきかせ、根回しにたけた「菅義偉」という大番頭が存在した。
最近の長期政権を見れば、中曽根康弘内閣に後藤田正晴氏、小泉純一郎内閣にも福田康夫氏といった肝胆相照らす仲の番頭役がサポートし、政権運営を円滑なものにしてきた。

 だが、岸田首相の周辺はどうだろう。
自民党最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)から官房長官に起用した松野博一官房長官は、文部科学行政をはじめ政策通として知られる。
しかし、その温厚な性格も災いして「何が何でも首相を守ろうとするエネルギーや気迫は感じられない」(自民党若手)と評されている。
 そうした空気を察してか、首相が8月に実施した内閣改造・自民党役員人事の際、“安倍派の代表”として希望を聞いたのは萩生田光一・自民党政務調査会長であり、松野氏とじっくり話した形跡は見当たらなかった。
これでは政権ナンバー2が「番頭役」の面目をつぶされたと感じても無理はないだろう。

 自民党中堅の一人は「首相と官房長官の仲は良くない。松野氏が進言しても岸田首相は『聞く力』を発揮していない」と危機感を募らせる。
 安倍氏の「国葬」で友人代表として追悼の辞を述べた菅前首相は、9月のBSテレ東の番組で次のように安倍政権時代を振り返っている。
「第2次安倍政権は全体像を首相が決めて、後の各論の調整は官房長官がやるというスタイルだった」。
 しかし、今の岸田政権は官房長官をはじめ首相官邸スタッフがアドバイスを送るものの、首相が耳を傾けるケースは減ってきているという。
首相から見れば周囲の力量不足に映るのかもしれないが、もはや「裸の王様」状態との声が漏れるようになっている。

官邸・自民党執行部と 岸田首相の間に不協和音が響く
 全国紙政治部記者が解説する。
「『おや?』と思ったのは、安倍氏の『国葬』開催の際のことです。
この時、首相サイドから自民党側への事前の根回しが遅れ、野党との関係にも影響が出ました。
これは官邸と党の意思疎通や役割分担が明確ではなく、スムーズにいかなかったからです。
本来なら野党にも内々に打診し、開催の感触を得ておくべきレベルの話でしょう。
最近の後手ぶりを見ていると、もう『官邸崩壊』していると感じざるを得ませんよ」

 官邸には、岸田派に所属し、当初は首相の右腕とされた木原誠二官房副長官もいる。
だが、エリート意識が高く、偉ぶる同氏には毀誉褒貶(きよほうへん)がつきまとい、自民党内や霞が関の官僚からの信頼が得られているわけではない。
そう、岸田首相が官邸内で唯一信頼する人物は、実子の翔太郎氏しか存在しないと言っても過言ではないのだ。

 実際、岸田首相は山際大志郎前経済再生相、葉梨康弘前法務相を最終的に交代することにしたが、ここでも首相と官邸・自民党の溝は浮き彫りになった。
 2人の「閣僚更迭」に関しては、官邸内や自民党内で早い時期から「国会でもたない。一日も早く首相は決断すべきだ」との声が充満していた。
しかし、11月11日に辞任した葉梨氏について首相は、国会などで交代させないとの考えを繰り返した。
そればかりか、直前まで自民党執行部にも更迭しない考えを伝えていた。
 これでは、党を預かる執行部内にも「自分たちには本音を言わない首相」との受け止めが広がるのは当然。
首相を支える人々を自ら断っているようなものだろう。

FNNなどの調査では「死刑のハンコを押した時だけニュースになる」と発言した葉梨氏について「辞任は当然」との回答が7割を超えたが、遅きに失した首相の感覚と世論との開きは埋まりそうにない。

岸田政権に足りない 二つ目の重職は「防波堤」
 首相が率いる岸田派は党内第4勢力にすぎず、それ故に政権運営が不安定なことも事実だ。
 だが、それを言うならば菅氏は無派閥の一匹狼にすぎなかった。
安倍氏の突然の退任後に首相を引き継いだ菅氏は、衆院議員の任期満了を控え、1年余りで首相辞任を選択したが、短期間に多くの成果を残した。
携帯電話料金の大幅引き下げや世界トップクラスの新型コロナウイルスワクチン接種率の実現、デジタル庁創設に不妊治療の保険適用といった果実に結び付けている。

 菅氏を最も支えていたのは安倍氏であり、岸田首相も相談相手として頼った安倍氏を失ったことは大きいだろう。
自民党執行部には麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長らがいるが、安倍氏という「重し」がとれた今、党内からの異論を抑えてくれる人物は見当たらない。

「合言葉は『忍耐』の二文字だ」。
岸田派議員の一人がこう語るように、国民の負担軽減策を盛り込んだ総合経済対策ですら不発に終わる中で、政権浮揚につながるような起死回生策はないに等しい。

 政権を全力で死守する「番頭」が不在で、「防波堤」役だった安倍氏を失った…。
この二つの重職を欠いた岸田首相に次の一手はあるのか。
 岸田首相に近い自民党閣僚経験者は、半ば吐き捨てるように語った。
「このままでは政権弱体化が進まざるを得ない。
まずは来年春の統一地方選挙をどう乗り切るかが重要になるが、重苦しい雰囲気を変えるために内閣改造・自民党役員人事を断行することも視野に入れなければならないだろう。
『伝家の宝刀』を抜くことも排除すべきではない」

 来年5月は岸田首相の地元・広島でG7サミット(主要国首脳会議)が開催される。国内外の難題が山積する中、首相はどのように臨み、どんなその後の展開を考えているのだろうか。

いよいよ、お尻に火がついた岸田政権。退場へのカウントダウンが始まったのだ。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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