司法通訳人は見た!ニッポンの外国人 警察はキャリアとノンキャリアに二分…ノンキャリアのほうが現場経験豊かなのに
周来友 ジャーナリスト、タレント
2022/12/07 日刊ゲンダイ
日本全国の警察官は約30万人いるらしい。
マンモス組織の中でキャリアとノンキャリアに二分し、キャリア組は警官になった時点ですでに警部補だが、ノンキャリア組のほとんどは巡査部長で定年を迎える。
10年間司法通訳に携わって出会った4桁の警官の中で、現場で汗を流して、場合によっては血を流すノンキャリアの警官たち……。
彼らには今でも尊敬の念を抱いている。
キャリア組は試験に合格し、一応各警察署で現場経験を積むが、だいたい2〜3年間で各官庁や警察署に、警察官僚として赴任する。
事件発生の場合、ノンキャリアはホシを確保する以外、上司であるキャリアの身の安全にも十分注意を払わなければならない。
もちろん、事件現場ではキャリアは最前線には行かないし、ノンキャリアのほうが現場経験豊かなのにもかかわらず、経験乏しいキャリアの下で納得のいかない指示を受けることも少なくないようである。
日本の警察は権力機関として、今でも時々、不祥事が起こるたびに報道される。
私が携わっていた時期、特に神奈川県警がよくマスコミに取り上げられて、叩かれた。
県警の刑事さんに言わせれば、あれは神奈川県警の上層部が、警視庁のように隠蔽工作が上手ではなかったからだという。
警視庁と道府県警の上下関係は明確で、連携していないようだった。
警視庁や関東一円の県警で仕事をしてきたので、偏見かもしれないが、警視庁のお巡りさんが1番、神奈川県警が2番。
千葉県警と埼玉県警は3番を争い、他方の県警がその下のように、合同捜査の時に彼らの振る舞いを見て感じ取れた。
■縄張り意識とプライドがモチベーションに
例えば、連続強盗事件が発生したとする。
県警が、ある事件の捜査を始める。
被害者の聞き込みや容疑者の尾行など動かせない証拠を集め、いざ令状を取り、いよいよ逮捕に犯行グループのアジトに赴くと、何と、容疑者たちが次々と部屋から連行されて出てきたではないか。
あゝ、しまった! 横取りされた……。
お互いに情報交換するどころか縄張り意識が強く、ホシは早いもの勝ちだ。
先取られた側にとっては、これまでの努力が全て水の泡になってしまい、悔しさしか残らない。
逆のパターンもある。
容疑者を連れて実地検証の行き先でのことだ。逮捕される前に住んでいたアパートに住居確認をしに行くと、室内で雑魚寝をしている2、3人の外国籍の男がいた。
外登証(外国人登録)の提示を要求したら、遊びに来ていたので“たまたま”忘れたと一様に答える。
どう見ても嘘っぽくて怪しい。
本来なら応援を呼ぶなどしてもっと調べるべきだが、今取り組んでいる事件と関係がなさそうと判断したのか、スルーしてしまった。
捜査権のない一介の司法通訳人とはいえ、第三者の一般人としても、早期の事件解決よりも優先される内部事情はどうしても理解できなかった。
しかしながら、縄張り意識とプライドは、ホシを取る=犯罪者を摘発するモチベーションになっていることは事実であり、日本の治安維持の原動力になっているとも、現場を見ながら痛感したものだ。
(構成=岩渕景子/日刊ゲンダイ)