2022年12月25日

防衛費のための増税は論外!「強国志向」の流れに乗ってはいけない

三枝成彰の中高年革命
防衛費のための増税は論外!「強国志向」の流れに乗ってはいけない
2022/12/24 日刊ゲンダイ

「強い国」「強い日本」を求める声に流されてはいけない。
これは日本を強国にしたい政治家たちとマスコミによってつくり出された一過性の醜悪なブームだ。

日本が毅然として守るべきなのはただひとつ、「戦争放棄」である。

 中国の巨大な海運会社「COSCO(コスコ)」(中国遠洋海運集団有限公司)をご存じか。
コロナやウクライナ侵攻で海運へのニーズが高まり、輸送費はどんどん値上がりしている中、勢力を着々と伸ばしている会社だ。
ロシアとの取引を停止する企業が多いなか、コスコは唯一、ロシアの原油の輸送を続けている。

「一帯一路」でユーラシア大陸の制覇をめざす中国は、かねて「軍民融合」を掲げ、各国の港に進出している。
中国が出資する港の一部は中国海軍も利用する。
そして海運各社の船舶は、中央の命令一下で軍船への転用が可能だ。

 一方でウクライナ侵攻を契機に、欧州各国も軍備を増強している。
ドイツ、イギリス、ポーランドなどの軍事費は軒並み「対GDP比2%」だ。
こうした世界の動きも、日本の防衛費増額論者からすれば「それ見たことか」であろう。

「有事のため、一刻も早く万全な備えを」という人たちの意見と、「我こそが“殉職”した故・安倍総理の後継者だ」と世間に認めさせたい政治家たちの思惑が結びついて、より一層、国の守りを強くしようという声が高まっている。
 だが、待ってほしい。
本当にそれは多くの国民の望みなのか。私は日本が防衛費を増やす必要はまったくないと思っている。
いくら「税率を変えずに付加税を上乗せする」と言い訳したところで、しょせんは与党が党内で議論して党内で決めているだけの“自作自演”で、国民は蚊帳の外だ。
 その付加税の特例措置にしても、今後変わらない保証はない。
対GDP比2%が終着点ではないのだ。

政府が巧妙な言い抜けを重ね、さらにパーセンテージを増やすこともありうる。

■自分たちの手で封印を解こうと
 それに、すっかり「防衛力強化は必要不可欠」という前提で話が進んでいるが、そもそも敵基地攻撃能力を積極的に持とうとすること自体が道を誤っていると、なぜ気づかないのか。
かつての日本は、周囲の状況に追い込まれて冷静さを失い、思考停止に陥って狂乱の戦争へと突き進んだ。
その後、泥沼の敗戦を経て「もう戦争はしない」と自らに戒めたはずなのに、いま再び浅はかなキャンペーンに踊らされ、自分たちの手で封印を解こうとしている。
それだけはしてはならない。

 私たち日本人は昔から従順で「お上のお達し」に弱く、とりわけ「空気」に流されやすい体質であることも思い出すべきだ。
熱に浮かされて我を失い、気がついたら兵士にさせられ、銃を持って戦場に立っていた──。そんな悪夢を現実にしてはならない。

 日刊ゲンダイの22日付のコラムで高野孟さんが「『ハト派の宏池会』など跡形もなく もはや幻想に過ぎない」と書いておられる。
まさにそのとおり。
もとはといえば宏池会は、「所得倍増計画」を打ち出した故・池田勇人総理を領袖とする派閥で、国民の生活の向上に取り組み、防衛問題とは距離を置いてきたはずだ。

 かつて故・宮沢喜一氏は高野氏と“愛国心”について話したとき、「政治は人々の心の問題に踏み込んではならない」と言い、防衛庁長官時代の加藤紘一氏は、自衛隊基地を訪れても、戦闘機の操縦席に座ってみせるなど論外で、「我々の世代がやってはいけないこと」だと言ったという。

 だが岸田氏はここにきて「増税してでも防衛費を2%に増やす」と言い、さらに全国の原発を再稼働させ「最大限に活用する」とすら言い始めた。
誰もできなかったことを成し遂げた勇気ある英雄になりたいのか、この機に乗じて、できるかぎりの支持を集め、総理としての延命を図っているのか。  まったく最低である。

このままいけば岸田総理は、故・安倍総理を上回る悪政を行いかねない。
国民は断固として反対の声を上げなければならない。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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