2023年01月03日

岸田首相は遂に「増税派の傀儡」としての本性をむき出しに

―[言論ストロングスタイル]―
岸田首相は遂に「増税派の傀儡」としての本性をむき出しに
【倉山 満】救国シンクタンク理事長兼所長
2023年01月02日 SPA!

◆岸田首相は遂に「増税派の傀儡」としての本性をむき出しに
 もはや賭けが成立しない。
 ’23年の何月から景気が悪くなるかの議論はあっても、良くなるかもしれない、との議論は成立し得なくなってしまった。

それほど決定的な事件が起きていたことに、どれほどの日本人が気付いているだろうか。
 ’22年2月のウクライナ事変をきっかけに、防衛費倍増の議論が待ったなしとなった(それでも5年後に、などとヌルい結論になったが)。
 政府は参議院選挙後、これ一本にかかりきりになった感があるが、曲がりなりにも与党をまとめた。
また、(安倍晋三元首相の側近だった)与党幹部の萩生田光一政調会長が「財源として来年からの増税はしない」と押し切った。
 ところが、突如として岸田文雄首相は「防衛増税」を打ち出した。
岸田首相は遂に「増税派の傀儡」としての本性をむき出しにした。

◆増税派が狙うは「日銀人事」
 これに対し、先週号で「高市の乱」を伝えた。閣内にいながら、高市早苗経済安保担当大臣が反旗を翻したのだ。
既に趨勢(すうせい)は見えていたが、案の定、腰砕けとなった。
SNSでは「どうせ、いつものガス抜きだろ」と冷ややかな視線が圧倒的多数だった。だが、そんな単純な話ではない。

 自民党良識派も決起、反対論が燎原の火の如く広がり、「来年からの増税」は阻止した。
結果、「再来年以降のどこかで増税」となった。要するに先送りであり、玉虫色の決着だ。
むしろ良識派は「来年からの増税を阻止した」「その先の事は後でいくらでも潰せる」と怪気炎を上げるかもしれない。
 ここで問題である。増税派は、最初から「再来年以降のどこかで増税」を考えており、織り込み済みの結論だったのだ。
では、増税派は何を狙っているのか。  日銀人事である。

◆「史上最強の財務事務次官」が副総裁に急浮上
 黒田総裁と二人の副総裁の任期切れ後、どのような人事を望むのか。
 総裁は、雨宮正佳現副総裁の昇格が有力視されてきたが、ここにきて中曽宏前副総裁が有力視されるようになってきた。
雨宮氏と中曽氏のいずれも、日銀プロパー。
 副総裁には、木下康司元財務事務次官が急浮上している。

自民党総裁選・衆議院選挙・東京都議選挙・参議院選挙と連戦連勝、経済もアベノミクス絶好調だった、絶頂期の安倍首相に対し真っ向から喧嘩を売り、消費増税8%を押し付けた。いわば、「史上最強の財務事務次官」「増税大魔王」である。5年後には総裁に昇格する含みの副総裁である。
 もう一人の副総裁は、金融緩和を中核とするアベノミクスを支持したリフレ派を追放できれば、なんでもいい。

「初の女性副総裁」として複数の名前、たとえば翁百合日本総研理事長のような名前が挙がる。
要するに「リフレ派以外の学者で、女であれば誰でもいい」のである。

◆利害の一致した財務省と日銀による「増税派」
 従来、財務事務次官出身者と日銀プロパーが交互に正副総裁を出し合う「たすきかけ人事」を行ってきた。
政治介入を防ぎ、官僚が勝手に人事を、そして経済政策を壟断(ろうだん)する体制を再び築きたいのだ。
 財務省にとって日銀総裁は最高の天下り先でロイヤルロードと呼ばれる。
日銀総裁に就いた元事務次官は彼らの世界で「ドン中のドン」の地位を手にする。
事務次官を経験していない黒田氏の総裁就任を苦々しく思ってきた。

日銀は自分たちの思想に反する金融緩和を行ってきた黒田路線を一刻も早く否定したい。
 ここに財務省と日銀の利害は一致した。
かくして「増税派」が形成された。
そして支持率低下で窮地に追いやられている岸田首相に手を差し伸べて、今回の防衛増税を仕掛けてきた。
日銀人事を制し、金融緩和を潰すために。

◆岸田政権が存続する限り、黒田路線は……
 金融緩和とは、低金利政策である。
日銀は、一刻も早く金融緩和を止めて利上げをしたい。
ようやくデフレ脱却が見えてきたところで、借金の利子を高くしてしまえば、デフレに逆戻りするのは目に見えている。
例えば、変動金利で住宅ローンを組んでいる人など、地獄だろう。
給料が上がりそうな直前で景気回復策をやめる。

なぜそこまで日銀は金融緩和を憎むのか。「そういう宗教だから」としか言いようがない。
 また、財務省は増税を実現した者が出世する、日銀理論では「利上げは勝利!」なのである。
始末に負えないが、総理大臣を取り込んで、我々国民に対して増税を仕掛けてきた!と思わせて、囮である。
 結果、’23年の増税は避けられた。しかし、岸田首相は生き残った。

おそらく1月下旬に通常国会が開かれ、2月あたりに岸田首相が人事を提示する。
となると、正副総裁候補に、今ごろ打診が行く。
岸田政権が存続する限り、今の黒田路線を否定する人事が行われるだろう。誰も抗することができない。
 私は蟷螂之斧(とうろうのおの)の如く、「リフレ派の若田部昌澄副総裁の総裁昇格を!」と、狂ったように言い続けたが、風前の灯火だ。

◆長期金利の上限引き上げは“実質利上げ”だったのか
 そんな中、12月の日銀政策決定会合で、長期金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げた。
発表された直後、円高が4円も進んだ。これは「実質利上げか」と報じられた。
 かなり高度で技術的な話なので詳細は省略するが、黒田総裁の説明および専門家の言を総合すると、これは「利上げ」ではない。
この種の技術的な利上げは、過去の黒田日銀も行っている。
では、金融緩和を否定したいマスコミが煽ったから円高が進行したのか。

 ’22年に入り、国債の市場が歪んでいるので、是正を図ったとのことだ。
すなわち、10年債の金利と7〜9年債のそれが逆転する現象が起きていた。だから引き上げただけ、とか。
 確かに、金融緩和によって生じた歪みはあった。だが、黒田後任の総裁がそれを理由に大きく金融緩和を修正したら、余計に悲惨になりかねない。
だから、先手を打って衝撃が大きくない時期とやりかたを選んで、今回の「実質利上げ」と受け取られかねない挙に出た、とのことだ。

◆黒田日銀総裁は「敗戦処理」をしたのではないか
 ここで、経済知識が無くても、政治センスがあれば気付くことがある。
 つまり、黒田総裁の後任は、絶望的な人選が動いているということではないか。
今回の行動は、「敗戦処理」だったということではないか。

 さあ、どうする?
 岸田首相に代わる、マトモな総理大臣を選び直すしかないではないか。
それが自民党の中と外の、どちらにいるかはともかく。
 そして個人としては、不況に備えるしかない。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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