創価学会はいまや選挙の互助会か 「選挙以外に学会員を熱狂させる機会がない」の声も
1/6(金) NEWSポストセブン
旧統一教会問題で政治と宗教の関係に注目が集まっている。
影響は創価学会と公明党にも波及しており、日本の宗教はターニングポイントを迎えている。評論家の宮崎哲弥氏、『宗教問題』編集長の小川寛大氏、ジャーナリストの鈴木エイト氏が話し合った。
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鈴木:
統一教会の問題が創価学会にまで飛び火して、週刊誌などで学会の元会員などによる学会批判が飛び交いました。
小川:
興味深いのは、従来は「名誉会長である池田大作が作った正しい学会に戻せ」という教義に真面目な意見が多かったけど、今回は「学会は根本的にどうしようもない」という批判が多いことです。
池田氏が表舞台から去って十数年が経過し、池田氏のカリスマ性でまとめていた部分が消失してしまったのか、組織に金属疲労が見られる。
宮崎:
創価学会は公称827万世帯が会員という桁外れに巨大な組織ですが、日本でこれ以上教勢を伸ばすことは難しい。
この先、どう生き残るかが喫緊の課題でしょう。
鈴木:
創価学会に限らず、新宗教はどこも弱体化しています。そんななかで、今年は4月に統一地方選がありますね。
小川:
公明党は地方議会を主戦場にします。理由は地方に影響力を持ちたいということはもちろんですが、学会員を食わせる手段でもあるという事情がある。
本来は「宗教法人創価学会」が雇う学会員を地方議員に当選させ、税金で生活させる手段として地方選挙があるということを聞いたことがありますが、地方ほどそうした傾向がうかがえます。
公明党は選挙戦の勝利を至上命題にする政党で、これまで比例ブロックでは全国くまなく当選者を出してきました。
しかし創価学会の弱体化に伴い、今後は東北や四国など地方のブロックで公明党が1人も当選させられない可能性が出てきた。
もし本当にそれが起こったら、単に1議席を失う以上のインパクトがあり、何らかの体制変革が求められるはずです。
宮崎:
選挙は創価学会の組織原理に組み込まれているのです。
公明党が選挙において創価学会に依存しているんじゃなくて、その逆。だからこそ、全国津々浦々に候補者がいることに意味がある。
それなのに櫛の歯が欠けるように落選者が出ると、学会全体の問題になってしまう。
小川:
よくわかります。今実際に創価学会の会員を取材すると、日蓮や仏教の教えに関する話はほとんど聞きません。
純粋な宗教運動なら日蓮の記念日に全員で題目を唱えることなどが活力となりますが、創価学会は純粋な宗教的パワーはほぼなくなっている。
交わすのは選挙の話ばかりで、もはや宗教団体ではなく選挙の互助会のようです。
宮崎:
彼らにとって、選挙は一種の「祭り」なんだよ。
小川:
逆に言えば、選挙以外に学会員を動員して熱狂させる機会がない。
宮崎:
学会自体が弱体化しつつあるなか、現在の体制や体質は見直さざるを得ないでしょうね。
他方、統一教会は来たる統一地方選において、「手のひらを返した」自民党が自分たちの協力なしでは沈んでしまうことを見せつけようとしていると思いますね。
教会信者による助力の不在によって存在感を際立たせようというわけです。
鈴木:
すでに教団側は地方議会や地方議員に「家庭連合は反社会的団体ではありません」という陳情書をどんどん送っている。
ある種の脅しです。
小川:
票目当てに、宗教団体とズブズブの関係になる政治家の節操のなさも問題です。
ある保守系の地方議員は「僕はね、宗教5つ入っている」と言っていた。思想信条がないんですよ。
【プロフィール】
宮崎哲弥(みやざき・てつや)/
1962年生まれ、福岡県出身。評論家。慶應義塾大学文学部卒業。政治哲学、生命倫理、仏教論を主軸とした評論活動を行なう。著書に『仏教論争』(ちくま新書)、『教養としての上級語彙』(新潮社)など多数。
小川寛大(おがわ・かんだい)/
1979年生まれ、熊本県出身。早稲田大学政治経済学部卒業。宗教業界紙「中外日報」記者を経て独立、『宗教問題』編集長に。著書に『神社本庁とは何か』(K&Kプレス)、『南北戦争』(中央公論新社)など。
鈴木エイト(すずき・えいと)/
滋賀県出身。日本大学卒業。ジャーナリスト。ニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表、主筆を歴任。カルト宗教問題を扱う日本脱カルト協会に所属。著書に『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』。
※週刊ポスト2023年1月13・20日号