住民税非課税世帯の優遇措置 社会保険料は最低等級、特別給付金などの生活支援も多数
1/15(日) マネーポストWEB
税金を考えるうえでポイントになるのが「住民税」だ。
とくに年金生活世帯にとってはこの税負担が重い。
ファイナンシャルプランナーの柘植輝氏が語る。
「所得税の最低税率は5%ですが、住民税は所得にかかわらず一律10%です。
収入が低い層ほど、所得税より住民税の負担が大きい。
そこで、年金生活世帯などは少しでも収入を増やそうと考えるのではなく、年金だけで生活して住民税非課税を選ぶことで、かえって家計の負担が少なくなることが多い」
「税金を払わない豊かな老後生活」という選択だ。
「住民税非課税世帯には税制だけではなく、数々の優遇措置があります。
国民健康保険や介護保険料がいちばん低い等級になり、社会保険料負担が非常に軽い。
後期高齢者の窓口負担も1割でいいし、支払った医療費が戻る高額療養費制度でも得になる。
さらに給付金がもらえる。
最近ではコロナ対策で住民税非課税世帯に1世帯10万円の臨時特別給付金が支給され、高騰する電気代やガス代の補填として国から1世帯5万円の緊急支援金が支給された。
自治体独自の給付金もある。
住民税非課税となる所得を1円でも超えると、こうした生活支援は受けられないこともある」
住民税非課税世帯かどうかで、家計への負担が天と地ほど違ってくるわけだ。
「住民税非課税世帯」となる所得の基準は自治体によって違う。
東京など大都市部では、夫が65歳以上で妻の収入が国民年金のみの夫婦2人世帯なら、夫の年金収入が「211万円」以下、地方でも夫の年金収入「193万円」以下が住民税非課税世帯の目安だ。
年金繰り上げ受給で年金額を減らす選択も 厚労省のモデル年金は「元会社員の夫と、専業主婦の妻」の組み合わせで月額22万円(夫の厚生年金が約15.5万円、妻の国民年金が約6.5万円)とされている。
こうしたモデル世帯なら夫の年金収入は年間約186万円で、他に収入がなければ住民税非課税の対象になる。
「年金が少ないから稼がないと」とパートなどで収入を得る場合も、税金や社会保険料負担を考えると、年金やパート収入を合わせた所得を「住民税非課税世帯」の範囲内に抑えたほうが逆に家計の手取りは多くなることが往々にしてあるのだ。
これから年金受給を迎える世代であれば、将来、完全リタイアして「年金生活」に入ることを考えながら年金の受給方法を選択していくのも一つの方法だ。
年金制度は2022年4月から、受給開始年齢を75歳まで繰り下げることができるようになった。
年金額は受給開始を65歳から1か月遅らせる(繰り下げ)ごとに割り増しされ、75歳受給を選択すると1.84倍の年金をもらえる。
「できるだけ長く年金受給を我慢して働き、退職後に割り増し年金をもらおう」という考え方もあるが、繰り下げを選ぶにしても、年金額が「住民税非課税世帯」の211万円の壁(大都市居住の場合)を超える前に受給開始するほうが、将来の社会保険料負担が軽くなる。
逆に、現役時代の給料が高く、65歳受給でも年金額が「住民税非課税」の基準を上回るなら、65歳になる前に年金をもらう「繰り上げ」を選ぶことで年金額を減らし、非課税の範囲内にする選択も可能だ。
※週刊ポスト2023年1月13・20日号