夜、心穏やかに安眠するために…禅僧が教える就寝前のルーティン
枡野俊明 曹洞宗住職
2023.1.27 ダイヤモンドオンライン
「整える力」があれば、仕事も人生もうまくいく。
曹洞宗のお寺の住職で、多くのベストセラー著書がある枡野俊明氏の新著『仕事も人生もうまくいく整える力』からの一部抜粋で、シンプルだけど効果的な、心・体・生活をすっきりすこやかにするヒントを紹介する。
最終回となる今回は、あなたを心穏やかに安眠に導く、寝る前の心身の整え方について。
夜は静かに過ごす 「活動」するのは9時前後まで
日中を活動的に過ごすと、かなり疲れます。
夜遅くまで遊ぶ体力は、とても残っていないはずです。
仕事も遊びも、遅くとも夜9時前後には切り上げ、疲れをクールダウンさせる。
「整える力」を高めるためには、それが夜にふさわしい過ごし方です。
私は夕方6時ごろに仕事を一段落させ、2時間ほど夕飯や入浴に費やします。
その後1時間半くらいまた仕事をして、9時半にパソコンの電源を切ります。
あとはお仏壇にお参りして眠りにつく。
夕方から夜にかけては、だいたいそんなスケジュールです。
日中の興奮がうまい具合に静まり、布団に入った瞬間、ストンと寝入ります。
みなさんには残業やら、夜のおつき合いやらがあって、夜も何かと忙しいと思いますが、極力「活動は9時前後まで」と決め、そして就寝までのせめて2時間くらいは、たとえばヒーリング系の音楽を聞いたり、詩集を読んだり、画集を眺めたり、アロマを焚いてまったりしたり、心を整える安らぎの時間を過ごしてください。
日中は頭を使うことが多く、脳の活動が前頭葉に集中するそうです。
だから夜は何も考えず、前頭葉を休めてあげるのがいいとされています。
夜は「何も決めない」 もう全部“朝送り”しよう
夜は一人で落ち着いて考えるのに適した時間帯のようですが、それはまったくの見当違いです。
なぜなら闇に覆われる夜は、思考がネガティブに陥りやすいからです。
とても“ポジティブ思考”“未来思考”にはなれないのです。
また大事な判断をするときも、夜はふさわしくありません。
判断というのは、それが大事なものであればあるほど、心身のエネルギーがマイナスに傾いているときにしてはいけません。思考が悲観的になり、消極的な行動を促し、はかばかしい結果が得られない危険性があるからです。
夜は心身の疲れを癒す。それが自然の摂理にかなった過ごし方です。
「心配や不安には実体がない」と。それを教えてくれるいいお話があります。
禅宗の始祖である達磨大師は、慧可という弟子から悩みを打ち明けられます。
「私の心はいつも不安でいっぱいです。どうか取り除いてください」と。
すると達磨大師は「わかった。取り除いてあげよう」と請け負いました。
が、「その前にまず、私の前にその不安とやらを出してみてくれないか」というのです。
これには慧可も困り果てました。
不安を心から取り出すことはできないからです。
そして慧可はハッとしました。不安には実体がない――このことに気づいたのです。
達磨大師のこの教えが示唆するように、心配や不安のほとんどは自分の心が勝手につくり出したもの。
実体はありません。“妄想”なのです。
そうとわかれば、「起こっていないことで悩む必要はない」と、簡単に心から閉め出せるでしょう。
それで万事解決。不眠から体調を崩すリスクをぐんと減らすことができます。
9時以降はスマホを断つ 物理的に遠ざけるのがポイント
スマホほど、夜の静かな時間を乱すものはありません。
特段使う必要もないのに、手元にあると、ついいじりたくなるのでやっかいです。
加えて寝る直前までスマホの画面を見ていると、興奮状態が続き、眠りに入りにくくなります。
ここは思い切って、「夜9時以降はスマホを断つ」などと決めましょう。
それもただ決めるのではなく、ある程度の強制力を持たせることがポイントです。
たとえばスマホ自体に、「画面を見ない時間帯を設定する」「通知機能をオフにする」など、物理的な制限を加える。あるいは自分のいる場所から遠く離れたところに、充電を兼ねたスマホの“居場所”をつくる。
1階にいるなら2階の部屋とか、寝室にいるなら玄関とか、あるいは子ども部屋や親の寝室など、わざわざ取りにいくのが面倒になるところがいいでしょう。
もちろん呼び出し音をオフにすることをお忘れなく。
とくに何か心身に不調があって、「スマホ時間」の長い人は、試しにまず「寝る前のスマホ」をやめましょう。
睡眠も改善され、体調が格段によくなるはずです。
「感謝」で一日を終える 「感謝日記」を書いてみよう
私は夜、眠る前にお仏壇にお参りし、その日にあったことや、感じたこと、気づいたことなどを振り返ります。
そして最後に、「今日も一日、無事に過ごせました。ありがとうございます」というひとことで締めくくります。
そうすると、心がとても落ち着きます。心がとても軽くなります。
また一日の振り返りとして、「感謝日記」をつけるのもいいかと思います。
スマホやパソコンなど、デジタル機器を使ってもいいのですが、できればアナログのノートやメモ帳に、いいこと・悪いことをひっくるめて、今日一日の出来事を記します。
こうすることで、さまざまな感情をアウトプットできるので、驚くほど気持ちがすっきり整います。
ただし最後の一行は、必ず「感謝の言葉」で締めくくることをお忘れなく。
そのひとことで心身に温もりが広がり、心穏やかに一日を終えられるでしょう。
そうすれば、いい眠りに入れること請け合いです。