介護保険料、「月額2,075円」から今や「3倍近く」に 特養の空き待ちは27万5,000人 000人
2023年04月07日 幻冬舎ゴールドオンライン
「死」と距離が生まれてしまった現代では、自分の死について考える機会がめっきりと減ってしまいました。
ですが、死は誰にでも確実に訪れます。
50万部超の大ベストセラー『80歳の壁』の著者、高齢者専門の精神科医である和田秀樹氏が、35年以上の高齢者診療で辿り着いた「極上の死に方」について、新刊『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)より解説します。
特養の空きを待っている人は“27万5000人”
2025年までにすべての団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になります。
団塊の世代とは、1947〜49年に生まれた人たちで、この世代だけで約600万人います。
大量の後期高齢者を支えるために、社会保障、主に医療・介護、年金などが限界に達し、社会全体に負の影響がもたらされてしまう──といわれています。
この「2025年問題」を控え、在宅医療・在宅介護の重要性が認識されて、厚労省が「在宅医療・介護推進プロジェクトチーム」を設置したわけですが、訪問診療や訪問介護サービスを提供する体制はまだまだ不十分です。
本書の中で、介護保険制度が変節してきたと言いましたが、2000年に始まったとき、「措置から権利に」というスローガンがありました。
どういう意味かと言うと、それまでの高齢者福祉は、本人の意思とは関係なく、その人が福祉サービスを受ける要件を満たしているかどうかを行政が判断して提供する「措置制度」でした。
たとえば、この人はもう一人暮らしは無理だから施設に入れましょうとか、いや、まだまだ大丈夫なようだからご家族で頑張ってくださいね、とかいう形で行政が牛耳ってきたわけです。
それが介護保険制度を導入することによって、「措置」から「権利」になった。
つまり、毎月、保険料を徴収する代わりに、だれでも要介護と認定されれば介護を受ける「権利」を与えます、というものです。
権利をもらったわけですから本来、子育てが大変なので親の施設介護を選びたいとか、あるいは親の介護をしていたら会社を辞めなくてはいけなくなるので特養に入所させたいという要望があれば、それに応えなくてはならない。
ところが、国はその要望に応えられるだけの十分な数のホームをつくらなかった。
前述したように20年以上経ってもいまだに特養の空きを待っている人が27万5000人もいる。
2年待ち3年待ちというのは、権利でも何でもありません。
介護保険制度は3年ごとに見直されることになっていて、2025年には要介護3以上でなければ特養に入れないなどと勝手にルールを変えてしまいました。
そして先に言ったように、在宅看取りと在宅介護をごちゃまぜにして、在宅死のほうがいいですよ、と嘘をついて回ったわけです。
上がり続ける介護保険料、金額は3倍近くに跳ね上がり…
介護保険料が上がり続けているのは、ご存知ですか?
介護保険料は市町村(東京23区は区)ごとに決められます。
各市町村では、3年ごとの改正のタイミングで保険料の基準額を見直します。
介護保険の被保険者は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40〜64歳までの医療保険に加入している「第2号被保険者」とに分かれています。
「第2号被保険者」の介護保険料は、事業者との労使折半で、各医療保険者(健康保険組合、共済組合)ごとに計算方法が異なります。
厚生労働省老健局の発表では、2000年の全国平均は月額2075円(事業主負担分、公費分を含む)でしたが、20年には5669円と3倍近くに跳ね上がっています。
2000年当初は月額2911円だった「第1号被保険者」の介護保険料も、18〜20年までの全国平均は5869円に上がり、21年には6014円で、初めて6000円を超えました。
値上がりの要因は、高齢化の進行と介護保険サービスを提供する事業所に支払う介護報酬の引き上げです。
すでにサービス利用者の自己負担割合も、所得に応じて1〜2割から1〜3割へ引き上げられています。
60歳で払い終わる年金とは違い、健康保険と同じく、介護保険料は65歳以降も払い続けなくてはなりません。
あまり意識されていないかもしれませんが、介護保険料は一生払い続ける保険なのです。