2023年07月01日

長引く物価高が「賃上げの恩恵が少ない」高齢者に与える影響はどれほど?

長引く物価高が「賃上げの恩恵が少ない」
高齢者に与える影響はどれほど?
6/30(金) 日刊ゲンダイデジタル

 今年の春闘賃上げ率は3.66%と、30年ぶりの高水準となった。
現役世代では賃上げの恩恵を受け、物価上昇分を吸収できる世帯は多いと思われる。
一方、賃上げが社会的に注目されたことから、すべての国民が物価高問題は解決できる、とした勘違いも国民に広がりつつあるのではないか。
「賃上げの恩恵が小さい高齢者層の暮らしは、より厳しさを増していることを見落としてはいけない」と指摘するのが、ニッセイ基礎研究所の坊美生子・准主任研究員だ。

 物価上昇が続くなか、賃上げの恩恵が少ない高齢者の暮らしへの影響の大きさや意識を見るため、坊氏は同研究所が行った「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」(20〜74歳男女2398人、3月末調査)の結果を基に「物価高の高齢者への影響」をリポートしている。
 物価高は幅広い範囲に及んでいるが、物価上昇の影響を感じた商品・サービスについて尋ねると、高齢者で最も多かったのは「食料」(92.7%)、次いで「電気代・ガス代」(91.9%)。
「いずれも9割を超え、日常生活に不可欠な食料や光熱費の値上げが高齢者世帯の家計を圧迫していることが分かります」(坊氏)

 世帯主の年齢階級別に、全消費支出に占める支出割合の上位10項目ランキングでは、「一般外食」は30歳未満から69歳までは4位以内だが、70〜80歳以上では9位に下がる。
対照的に「野菜・海藻」が60歳代以下ではランク外だが、70〜79歳では7位、80歳以上では6位。

坊氏が続ける。
「高齢者が外食より自炊に使う生鮮食品への支出割合が多いのは普段のライフスタイルのためで、食料品の値上げは、若年・中年層より高齢者の家計への影響が大きいことが分かります。
また、ガソリン代を含む『自動車等維持費』は60〜69歳、70〜79歳で1位、2位と高く、コロナ禍以降、高齢者は公共交通を避けてマイカーを利用することが増えた影響が考えられます」

■年金引き上げは物価上昇に見合っていない  
同調査が行われたのは3月だが、それ以降物価の上昇はさらに続き、6月からは電気料金も値上げされた。
これから暑くなる時に、電気料金の値上げでエアコンの使用を控えれば、熱中症といった健康のリスクが高まる。
電気料金の値上げは高齢者により打撃は大きくなる。

 厚生労働省は2023年度の年金改正で3年ぶりの引き上げを行った。
しかし中身は67歳以下は前年度比2.2%、68歳以上は1.9%の引き上げにとどまっている。
年金暮らしの高齢者にとって物価上昇率は年金改正では全く吸収できていないというのが現実なのだ。

経済評論家の荻原博子氏がこう述べる。
「日本は物価上昇に見合うほど年金は上がりません。
それだけではなく、政府は少子化対策の財源も社会保障費の大幅削減で賄おうとしている。
すでに昨年10月から75歳以上の高齢者の医療費負担を原則1割から2割に引き上げています。
高齢者施設の入居も今後はピークになり、生活保護の基準も厳しくなる。
政府はこうした高齢者に対するケアが全く不足しています」

 高齢者にとって住みにくい社会が現実になってきている。

    (ジャーナリスト・木野活明)
posted by 小だぬき at 13:06 | 神奈川 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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