マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」のゴリ押しに医師が怒り
2023年07月01日 日刊ゲンダイDIGITAL
【集中企画・マイナ狂騒】#7
マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」のトラブル解消に向け、厚労省は29日、「オンライン資格確認利用推進本部」の初会合を開催。対策がまとめられた。
本部長を務める加藤厚労相は「国民の不安や懸念の払拭を図り、安心して活用してもらえる環境整備を進める」と強調したが、むしろマイナ保険証のゴリ押しが強化され、医療現場は辟易している。
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マイナ保険証によるオンライン資格確認をめぐっては、被保険者資格があるはずの患者が「無保険扱い」されてしまうトラブルが続出。
患者が医療費10割を請求されるケースが相次いだ。
その対策として、厚労省は29日の会合で、遅くとも8月から患者負担を本来の3割などにする方針を決定。
患者の加入保険が最終的に不明のままでも、病院が医療費を取りはぐれないよう補填するとした。
初めてマイナ保険証を使う場合、念のために従来の健康保険証の持参も呼びかけるというから“お笑い”だ。
新たな対策はあくまでも、国がマイナ保険証によるオンライン資格確認の利用を推進するため。
オンライン資格確認はマイナ保険証を使った場合に限り、医師が診察時に患者の薬剤情報や特定健診情報を閲覧できる仕組み。
服薬などの機微な情報を患者と医師が共有して診療に生かすことにより、国は「より良い医療が提供できる」とうたう。
しかし、利用推進を理由にケツを叩かれる病院はたまったもんじゃない。
問題は、これらの対策によって病院の“面倒”が増えることだ。
医師が患者の薬剤情報などの個人情報を閲覧する際、本人確認と本人同意が必須。
薬剤情報などの活用について、厚労省は次のように掲げている。
〈これまでも、例えば、丁寧な問診やお薬手帳による確認等により、本人であることや実際の薬剤の服用状況、併用禁忌等について確認していることから、マイナンバーカードによるオンライン資格確認により閲覧した薬剤情報等を診察等において活用する際も、同様に確認することが考えられる〉
■あまりにも費用対効果が薄い
裏を返せば、マイナ保険証によるオンライン資格確認を使わなくても、「丁寧な問診」「お薬手帳による本人確認等」でコト足りるというワケ。
マイナ保険証によるオンライン確認を病院に徹底させる必要はないのだ。
しかも、患者が初めてマイナカードで受診したり、所属する健康保険組合が変わったりした際、オンライン資格確認で得た情報と、診療申込書や問診票に記入された患者情報とを突合するよう、病院の受付窓口に要請。
オンライン資格確認のウリのひとつが「事務作業の手間削減」にもかかわらず、結果として作業負担が増える。
まったくもって本末転倒だ。
そもそも、オンライン資格確認が、国の言う「より良い医療の提供」につながるかどうかさえ怪しい。
いとう王子神谷内科外科クリニックの伊藤博道院長がこう憤る。
「端的に言って、マイナ保険証やオンライン資格確認を整備して健康保険証を廃止したとしても、医療の質が向上するとは到底、思えません。
マイナ保険証によるオンライン資格確認は、CTやMRIなどの画像データをオンライン上で共有・閲覧できるようなイメージを持たれていますが、すでに画像をデジタルデータとして閲覧・共有できる別の仕組みが構築されています。
薬剤情報などはお薬手帳で確認できますし、デジタル上で閲覧できてもPDFファイルなので、電子カルテに反映するには、結局、手入力に頼らざるを得ません。
オンライン資格確認は言ってしまえば、デジタルデータを使っているだけで、極めてアナログ仕様なのです。
メリットがあるとすれば、被保険者番号などを入力する受付窓口の手間が減るぐらい。
現行の保険証を廃止してまで強行すべきシステムなのか、あまりにも費用対効果が薄いと思います。
国の言う『医療の質の向上』とは一体、何なのでしょうか」
現場の医師は怒っている。
政府はメリットもないポンコツシステムの利用促進を図るより、保険証廃止を撤回すべきだ。