2023年08月12日

「起きたときが一番だるい」と感じたら危険信号

「起きたときが一番だるい」と感じたら危険信号
腕ふり体操で「ミトコンドリア」を活性化する
御川 安仁 : ナチュラルアート クリニック院長、
統合医療・栄養療法医師 著者フォロー
2023/08/11 東洋経済オンライン

連日の暑さで、疲れがたまりやすい今の時期。
眠って回復すればよいのですが、もし疲れがなかなか取れないようなら注意が必要です。
「疲れは放っておくと慢性化してしまい、『疲れやすい体質』になってしまうからです」。
そう話すのは、自らも慢性疲労に苦しんだ経験を持つ医師の御川安仁さん

疲れを長引かせないためには、体の細胞一つひとつを元気にする必要があるといいます
御川さんの著書『だるさ一掃×よく眠れる×自律神経が整う 1日1杯疲れのおそうじスープ』より一部引用・再編集してご紹介します。

疲れは年のせいと決めつけていませんか?
これという理由もないのに、なんとなく毎日お疲れ気味。
「年齢のせいだから仕方ない」とやり過ごしてしまう。
これをくり返しているうちに、気がつくと体が重だるいのが当たり前の状態になっている。
こんな体調があなたの「普通」になっていませんか?

一見なんでもなさそうなこの状態、実はとても危険なのです。
長引く疲れには根深い理由があり、原因を解決しなければ「疲れやすい体質」になってしまうからです。

特に、体を休めるために寝たはずなのに、「朝、起きたときが一番だるい」という方は、疲れのレッドカード。
気がつかない間に、疲労がたまりきっているといえるでしょう。
疲れを放っておくと、さまざまな症状が複合的に現れるようになり、専門的に治療をしても改善に時間がかかってしまうようになります。

私の患者さんの中にも、「いつも疲れていて体がだるい……」という状態を放っておいた結果、お風呂で髪を洗うときに頭まで手が上がらない状態になった方がいます。
そこで初めて深刻な疲れを自覚され受診されたのですが、もっと早く異変に気づいていれば症状が軽いうちに対策ができ、改善も早かったはずです。

特に、何事もがんばりすぎてしまう人ほど、疲れを我慢して悪化させてしまったり、疲れに気づかないまま働きすぎてしまい、ある日突然燃え尽きてしまったりする恐れがあるので要注意です。

疲れているときは自律神経が乱れている
疲れを感じているときは、たいていの場合、自律神経が乱れています。
自律神経には副交感神経と交感神経があり、刺激を受けて自動的に体の機能を調整します。
簡単にいえば、リラックスしているときは副交感神経、緊張やストレスを感じているときは交感神経が優位に働いています。 この2つの神経のバランスがうまくとれているのが健康な状態なのですが、疲れているときは、1日のうちで交感神経が優位になっている時間が長くなっていることがほとんどです。

すると何が起こるかというと、体の「骨格筋」という筋肉が緊張している状態が長く続き、血行が悪くなり、肩こりや腰痛を引き起こします。
また、骨格筋のこりは緊張型の頭痛の原因にもなります。
痛みがあるときに市販の薬やマッサージで痛みが解消したとしても、その状態が長くは続かず、またすぐにつらい状況になることが多くありませんか?
それは、疲れの原因が根本から解消されていないためです。

交感神経が影響する筋肉は、骨格筋だけではありません。
内臓や血管の壁の「平滑筋」も影響を受けています。
平滑筋は体内のあらゆるところにあるので、消化管にある平滑筋がうまく働かなければ便秘や消化不良などの消化器系の不調が現れることになりますし、血管にある平滑筋が収縮すれば、血流が悪くなり高血圧の引き金になります。
筋肉はもちろん心臓にもあります。
怖い話ですが、交感神経の緊張が心臓、心筋にも影響を及ぼし続けると、心不全や不整脈の原因にもなりかねません。

こうやって見ていくと、疲れた体が抱えやすい不調はとても広範囲ですし、さまざまな症状が重なって引き起こされることがわかります。
だからこそ、疲れを放置して長引かせてはいけないのです。

交感神経が優位になっているとき、コルチゾールというホルモンの分泌が乱れていることがよくあります。
コルチゾールは、副腎の副腎皮質という器官から分泌されますが、その機能の根本にあるのは体の細胞内になる「ミトコンドリア」という器官です。
ミトコンドリアは、私たちの体内の赤血球を除くほぼすべての細胞の中に存在する細胞内小器官であり、人間とは別の遺伝子を持つ「元々は別の生命体」です。
細胞ひとつに対し、数百から数千個あるといわれていて、ここ10年ほどでいろいろな研究が進み、日本が世界をリードしている分野でもあります。

ミトコンドリアはさまざまな役割を持っていますが、なかでも一番重要なのは「ATP」という、いわば「エネルギーのもと」となるものを作り出す働きがあることです。
ATPは「アデノシン三リン酸」という化合物で、私たちが体を動かし、生命活動を維持するために欠かせないエネルギー源です。
たとえていうなら、ミトコンドリアは、体内にある「エネルギー工場」のようなものなのです。
しかし、ミトコンドリアは年齢とともに量や質が低下していくといわれています。
年齢を重ねてから、昔みたいに動けず、ちょっと外出しただけでも疲れてしまうのはミトコンドリアが減少している証拠かもしれません。
だからといって、年のせいだとあきらめてしまうのはもったいない話です!

 ミトコンドリアの数を増やし、元気にする方法があるからです。

筋肉量を増やせば、効率よくミトコンドリアを増やせる
ミトコンドリアは、赤血球を除くほぼすべての細胞に存在します。
血管、脂肪、内臓などのあらゆる細胞にありますが、その数は一定ではなく、運動量の多い筋肉や神経細胞にとりわけ数が多いといわれています。
誰でも運動をしなければ、加齢とともに自然に筋肉量が減っていきます。
それは同時に筋肉細胞内にあるミトコンドリアも減っていく、ということにほかなりません。
これが加齢とともにミトコンドリア数が減る要因のひとつです。

逆にいうと、筋肉量を増やせば、効率よくミトコンドリアを増やすことができるのです。
私たちの体の筋肉には、瞬発力に使われる「白い筋肉」といわれる「速筋(そっきん)」と、持久力に関わり「赤い筋肉」といわれる「遅筋(ちきん)」があります

ミトコンドリアは、赤い筋肉である遅筋に豊富に含まれています。
遅筋はウォーキングやジョギングなどに使われ、背筋や太ももなどに多く存在します。
生物でいいますと、ゆったりと回遊し続けるマグロや、長時間飛び続ける渡り鳥などが多く持っているといわれる筋肉です。

つまり、ミトコンドリアを増やすためには、持久力の筋肉を養う運動がおすすめなのです。
また、運動はミトコンドリアの数を増やすだけでなく、活性化することにもつながります。
適度な運動負荷を体にかけると、エネルギーのもとになるATPが消費されます。
すると失われたATPを補給するべく、エネルギーの生産工場であるミトコンドリアが活性化し、酸素をせっせととり入れて新たなATPをつくり出します。
つまり、有酸素運動を行うことで数と質、両方の効果が得られるということです。

これらを考えあわせると、ミトコンドリアを増やして活性化するには、遅筋を増やす筋力トレーニングと、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を行うのがよいでしょう。
気をつけたいのは、激しい運動をやりすぎてしまうこと。
運動でエネルギーが急にたくさんつくられると、活性酸素を大量に発生させてしまうことにもなるからです。

ミトコンドリアのエネルギー代謝活動によくありませんし、体にも活性酸素による不調が出てしまいます。

ミトコンドリアが活性化する「腕ふり体操」
間隔を置いてくり返し適度な負荷をかける筋力トレーニングや、少し息があがるくらいのウォーキングなどの有酸素運動を日々続けることがミトコンドリア活性化には最適です。
とはいえ、運動習慣のない方はなかなか始められませんし、続かないですよね。
そこでおすすめしたいのが、楽にミトコンドリアを活性化できる「腕ふり体操」です。
これは、私の師匠である医学博士の金城実先生が考案したもので、その場で気軽にできて、天候にも左右されません。

【腕ふり体操のやり方】

@両脚を肩幅に開き、両手を腰にあてて、片脚を軽く前に一歩出します。
脚を軽く曲げて、後ろ足のかかとを少し上げ、体重を前脚と後脚の両方に均等にかけます。

A両脚をリズミカルに軽く曲げたり伸ばしたり、小刻みにくり返します。
腰を上下にやわらかくはずませるようにすると楽にできます。
「イチニ、イチニ」と声を出して。

Bその上下の動きを止めないまま、腕を前後にふります。
これを1分間続けます。
朝晩1日2回行いましょう。

リズミカルに腕をふるのも、とてもいいことです。
規則的なリズムを刻む運動を行うと、セロトニンというホルモンが出るからです。
セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれ、気持ちが前向きになったり、興奮した神経を静めたりしてくれます。
ウォーキングやジョギングをするときにも、リズミカルに腕をしっかりふってセロトニンを分泌することを意識するとよいでしょう。
腕ふり体操を続けながら、朝起きたときの疲れはどうか、「体が動かない」という感覚が減ったか、夜はぐっすり眠れているか、体を観察してみてください。
少しでも「いつもより体が軽いな」と感じていただけたらうれしいです。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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