低所得者に厳しい「鬼の自民党政権」…日本のお粗末すぎる生活保護、機能しない雇用保険、そして人生に絶望する人々が増えた
8/24(木) 集英社オンライン
『日本の絶望 ランキング集』
日本にはいわゆるスラム街のような貧困者ばかりが暮らす地域はほとんどなく、たいていの人が普通に暮らしているように見えている。
だが、生活が立ちいかなくなり、自殺を選択する人もいるのが現状でもある。
社会の中で隠されている、日本の真実とは。
『世界で第何位?-日本の絶望 ランキング集』 (中公新書ラクレ)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
低所得者に手厚い欧米諸国
日本の社会保障が貧困なのは、金額だけではない。
その内容も、非常にお粗末である。
たとえば「自由競争の国」とされているアメリカは、貧困者への扶助に日本の10倍を費やしている。
しかもアメリカの扶助は、日本のように生活保護一本やりではない。
バリエーションに富んだメリハリの利いた保護を行っているのだ。
アメリカには勤労所得税額控除(EITC)と呼ばれる補助金がある。
これは収入が一定額以下になった場合、国から補助金がもらえるという制度である。
EITCとはEarned Income Tax Creditの略である。
課税最低限度に達していない家庭は税金を納めるのではなく、逆に還付されるという制度で、1975年に貧困対策として始まった。 年収と子どもの人数にもよるが、年収が1万ドル程度の家庭は、2500ドル程度の補助金がもらえる。
子どものいない家庭への補助は少なく、子どものいる家庭へより手厚い制度となっている。
またひとり親の家庭では、現金給付、食費補助、住宅給付、健康保険給付、給食給付などを受けられる制度もある。
イギリスやフランスにも同様の制度がある。
このように、欧米では貧しく子どものいる家庭は、手厚い公的扶助が受けられる。
豊かな者も貧しい者も子どもがいれば一律に受けられる。
どんなに貧しくても月1万円程度しかもらえない日本の児童手当が、いかに粗末な公的扶助であるか、わかるというものだ。
健常者などに対してはフードスタンプなど食費補助
またアメリカは子どものいない健常者(老人を除く)などに対しては、現金給付ではなく、フードスタンプなど食費補助などの支援が中心となる。
現金給付をすると、勤労意欲を失ってしまうからである。
フードスタンプとは、月100ドル程度の食料品を購入できるスタンプ(金券のようなもの)が支給される制度である。
スーパーやレストランなどで使用でき、酒、タバコなどの嗜好品は購入できない。
1964年に貧困対策として制度化された。
このフードスタンプは、申請すれば比較的簡単に受けられる。日本の生活保護よりは、はるかにハードルが低い。
2010年3月のアメリカ農務省の発表では、4000万人がフードスタンプを受けたという。
実に、国民の8人に1人がその恩恵に預かっているのである。
機能していない日本の雇用保険
日本の社会保障で劣っているのは、生活保護だけではない。
たとえば雇用保険である。
雇用保険というのは、解雇や倒産など、もしものときのピンチを救ってくれる保険である。
この雇用保険が充実したものであれば、少々景気が悪くても、人々は生活にそれほど影響を受けないで済む。
しかし、日本の雇用保険は、ありていに言って「使えない」のである。
支給額や支給期間が、硬直化しており、本当に苦しい人にとっては、役に立たないのだ。
まず、中高年の支給期間が非常に短い。
20年勤務した40代のサラリーマンが、会社の倒産で失職した場合、雇用保険の失業手当がもらえる期間は、わずか9ヵ月である。
いまの不況で、40代の人の職がそう簡単に見つかるものではない。
なのに、たった1年の保障しか受けられないのだ。
職業訓練学校に入れば支給期間が若干、延びたりするなどの裏ワザはあるが、その期間内に職が見つからなければ、後は何の保障もない。
日本では失業はそのまま無収入となり、たちまち困窮 だから、日本では失業はそのまま無収入となり、たちまち困窮する、ということにつながるのである。
しかし先進国ではそうではない。
先進諸国は、失業保険だけではなく、さまざまな形で失業者を支援する制度がある。
その代表的なものが「失業扶助制度」である。
これは、失業保険が切れた人や加入していなかった人の生活費を補助する制度である。
「失業保険」と「生活保護」の中間的なものである。
この制度は、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、スウェーデンなどが採用している。
たとえばドイツでは、失業手当と生活保護が連動しており、失業手当をもらえる期間は最長18ヵ月だけれど、もしそれでも職が見つからなければ、社会扶助(生活保護のようなもの)が受けられるようになっている。
期間が短いうえ期間が終われば経済的にも見てくれない
他の先進諸国でも、失業手当の支給が切れてもなお職が得られない者は、失業手当とは切り離した政府からの給付が受けられるような制度を持っている。
その代わり公共職業安定所が紹介した仕事を拒否すれば、失業保険が受けられなかったり、失業手当を受けるために財産調査をされたり、などといった厳しい制約もある。
日本の場合、失業すれば雇用保険の失業手当は一定期間雇用されていた人ならだれでももらえるけれど、期間が短いうえ期間が終われば経済的には何の面倒も見てくれない。
なぜ日本は自殺大国になったのか?
近年、日本では自殺者が年間2万人を超えている。
表35のように世界的に見ても、日本の自殺率はワースト6位である。
世界で6番目に自殺率が高いということは、世界で6番目に生きる希望がない国と言ってさしつかえないだろう。
しかもこの自殺率の上位国は、時代によって入れ替わりがあるが、日本はここ10年来、ワースト10にランクインしている。 日本は長期間にわたって、自殺が多い国と言える。
しかし日本は昔から自殺率が高かったわけではない。
1995年の時点では先進国の中では普通の水準だった。
フランスなどは、日本よりも高かったのだ。
90年代後半から日本の自殺率は急上昇し、他の先進国を大きく引き離すことになった(表36)。
一時的には年間3万人を超えることもあった。
この当時の日本の自殺率を押し上げたのは、中高年男性の自殺の急増である。
90年代後半からリストラが激しくなり、中高年男性の失業が急激に増えたことが背景にある。
その後、中高年の自殺が落ち着くと、今度は若者の自殺が多くなった。
中高年のうち、経済的弱者などが自殺していなくなり、残された若者世代の自殺が多くなったというわけである。
これを見たとき、われわれはこれまで一体何をしてきたのか、疑問を持たざるをえない。
こんな社会をつくるために、一所懸命頑張ってきたのだろうか?
文/大村大次郎
おおむら おおじろう
元国税調査官