『VIVANT』で話題の「日本の公安警察」…「誰も書けなかった」その正体、「厚いベール」に覆われた知られざる「内側」
青木 理(ジャーナリスト)
9/13(水) 現代ビジネス
TBS系日曜劇場『VIVANT』(日曜よる9時〜)が話題となっているが、役所広司演じるノゴーンベキがかつて「裏切られ」、阿部寛演じる野崎守の所属する公安警察とはどんな組織なのか?
本記事では、〈日本の「治安機関の中枢」といわれる「公安警察」の知られざる内側〉に引き続き、公安警察の組織構造と役割について、くわしくみていく。
*本記事は2000年1月に刊行された青木理『日本の公安警察』から抜粋・編集したものです。
さて警察庁警備局の組織を簡単に検証することを手始めに、日本の公安警察の巨大な塔へと分け入っていこう。
警備局は警備局長を筆頭とし、配下に警備企画課、公安第一課、公安第二課、公安第三課、警備課、外事課の計六課を置いている(次図参照、以下「第」を省略)。
なかでも警備企画課は「警備警察に関する制度及び警備警察の運営に関する企画及び調査に関すること」
「局の事務の総合調整に関すること」(警察庁組織令)などを行う警備局の筆頭課であり、いわば公安警察の「中央センター」である。
以下、同等の格付け(実態は違うが)を持って、公安一課から三課、警備課、外事課が存在し、対象団体や機能別にそれぞれが各都道府県警の公安部、警備部を睥睨する体制が取られている。
公安一課は共産党を中心に、労働組合など大衆団体の情報収集を担当する、公安警察における「花形」である。
最近では課内に特殊組織犯罪対策室と命名されたセクションが配置され、オウム真理教に関係する情報の集約もここで行われている。
公安二課は「極端な国家主義的主張に基づく暴力主義的破壊活動に関する警備情報」(同)を担当する。
主として右翼団体に関する公安情報の収集、犯罪の取り締まりを行っているセクションだ。
皇室やVIPの警護を行う警衛、警護なども同課の担当とされる。
公安三課は「極左的主張に基づく暴力主義的破壊活動に関する警備情報」(同)や取り締まりを担当。
中核派や革マル派など、公安警察内で「極左暴力集団」と呼ばれる新左翼セクトを担当する。
警備課は主に機動隊などの警察部隊活動の配備計画などを統括する。
外事課はスパイ事件や海外に本拠を置く日本人のテロ組織動向、朝鮮半島情勢、旧共産圏諸国を対象にした情報収集活動にあたっている。
警察庁警備局が公安警察の「頭脳」とするならば、その手足となるのが、強力な中央集権性によって束ねられている全国の都道府県警察の警備部であろう。
中でも首都警察である警視庁には全国の警察で唯一「公安部」と名称を冠せられた部門がそびえ立つ。
日本の公安警察における実働部隊の中枢であり、公安警察の「顔」ともいえる組織だ。
警察庁の隣、皇居の杜を見下ろすように屹立する地上18階、地下4階建ての白亜のビルが警視庁本部庁舎である。
警視庁公安部の中枢機能は同ビルの13階から15階にあり、公安部長の下に公安総務課、公安一課から四課、外事一、二課、公安機動捜査隊、外事特捜隊が置かれる体制が取られている(次図参照)。
公安部の筆頭課は公安総務課である。
同課は共産党などの情報収集活動を行う一方、部内調整や法令解釈まで幅広く行うセクションであり、警察庁警備局との関連で言うならば、警備企画課と公安一課の業務を包括している。
公安総務課というどことなく平穏さを漂わせる名称とは裏腹に、日本の公安警察における実働部隊の中枢ともいうべき部門である。
公安一課は、新左翼の各セクト、いわゆる「極左暴力集団」を担当。
少々複雑だが、警備局で言うと公安三課と連動することになる。
公安二課は革マル派や労働団体を担当。公安三課は右翼団体を対象とする。
公安四課は各団体の機関紙誌やビラ、個人データなどの資料を管理するセクションである。
警視庁を除く各道府県警には、機動隊などの運用を行う部門と一体の組織形態となる「警備部」が置かれ、公安警察部門を包括している。
その規模によって配下にいくつかの課が置かれ、例えば大阪府警では警備部の下に警備総務課や公安一課から三課、外事課などがあり、山口県警を例に取れば、警備部の下には公安課、外事課などがあるだけだ。
青木 理(ジャーナリスト)