2023年10月21日

夜中に足がつった!頻発する絶望的な痛みに隠れている怖い病気

夜中に足がつった!頻発する絶望的な痛みに隠れている怖い病気
出沢明:医療法人明隆会 出沢明PEDクリニック理事長
楠本 知子:フリーライター&エディター
2023.10.18 ダイヤモンドオンライン

就寝中に突然ふくらはぎに激痛が走り、目が覚めることが増えていませんか?
年齢が上がるとともにその回数が増えて来たのは何か病気の前兆かも?
「こむら返り」の起こる仕組みや、その原因、応急ケア、予防策、そして頻繁に起こる場合の怖い病気の可能性まで、脊椎・股関節外科の専門医が徹底的に解説します。
(取材・文/ライター&エディター 楠本知子)

  足がつるメカニズムと
なぜ「こむら返り」と呼ぶか 「足のふくらはぎがつることを“こむら返り”と言いますが、これは正式な病名ではありません。正しい医学用語では『有痛性筋けいれん』という症状です」
 そう解説するのは、出沢明PEDクリニック理事長の出沢明先生。

有痛性筋けいれんとは、筋肉が突然けいれんを起こして収縮し、痛みを伴ったまま動かせなくなってしまう状態です。
「腕や首、背中、胸、お尻など、筋肉のある場所ならどこにでも起こり得る症状です」

 こむら返りが起こるメカニズムには、人間の骨格筋に備わっている、腱や筋肉の縮みすぎを防ぐ「腱紡錘」と、筋肉の伸びすぎを防ぐ「筋紡錘」という2つのセンサーが関わっています。
「この2つのセンサーは、普段は私たちの意識とは無関係に働いてバランスをとっていますが、さまざまな原因で腱紡錘が正常に働かなくなり、筋肉が過剰に縮んでけいれんが起こってしまうことがあります。
この症状を、筋けいれんと言います」

 こむら返りは、特にふくらはぎに起こる筋けいれんのことを指します。
かつてふくらはぎのことを“こむら(腓)”と呼んだことからこの名前がつきました。
「若い時は水泳や山登りなどの運動時に起こる場合が多いのですが、40代を過ぎたあたりで、就寝中に突然起こることが増えてきます」  

 一般的に人の筋肉量は20代をピークに年々減っていきます。
足の筋肉には、歩行などで伸縮して血液を心臓に送り返し、体内に行きわたらせる働きがあります。
足の筋肉が減ると血流が滞り、代謝も悪くなって、筋肉の収縮・弛緩を調節するミネラルのバランスが崩れてしまいます。
これがこむら返りの原因となります。
 このほかにも、年齢とともに増える生活習慣病や、それに伴う薬の服用が原因となることもあります。

痛みから解放される 4つの応急ケア
こむら返りが起こると、痛みで絶望的な気持ちになってしまいがちです。
「このまま痛みが治らなかっらたどうしよう」と、焦ってしまう人もいるでしょう。

緩和するための4つの応急ケアを教えてもらいました。 

1 ストレッチをする
 足を伸ばして座り、手でつま先をつかんで体のほうに引っ張り、ひざの裏とふくらはぎをゆっくりと伸ばします。
体がかたくてつま先に手が届かない場合は、タオルをつま先にかけて引っ張ってもよいでしょう。
急激に伸ばそうとすると、筋肉が余計に縮もうとするので注意が必要です。
息を吐きながら、ゆっくり伸ばすのがコツです。

2 マッサージをする
 両手でふくらはぎを包み、さすり上げたり、もみほぐしたりのマッサージをしましょう。
強く力を入れすぎると筋肉が断裂してしまったり、肉離れを起こしたりしてしまうこともあるので、やさしく行いましょう。

3 水分をとる
 経口補水液か、スポーツドリンクなどの水分をとります。
ない場合は塩をひとつまみなめてから水を飲みます。

4 薬を用いる
 痛い時の頓服薬として有名なのが漢方薬の「芍薬甘草湯」です。
水やぬるま湯で飲むのが一般的ですが、そのまま口に含んでも即効性があります。  

 なお、多分にプラシボ効果もありますが、この薬を予防的に寝る前に飲む方法もあります。
ただし、長期間の連用には適しませんので、医師とよく相談するようにしてください。
また、ほかの薬を飲んでいたり、既往症があったりする場合も同様です。  
 そのほか非ステロイド性消炎鎮痛薬のインドメタシン、フェルビナク配合の軟膏、クリーム、ローション、ゲル、スプレー、貼り薬など、肌に直接塗ったり貼ったりする外用薬を利用するのもよいでしょう。

 こむら返りを繰り返さないために、日頃からできることもあります。
寝る前1杯の水が 夜中の激痛を予防になる
「まずは、冷やさないことです。冬の寒い時期だけではなく、夏でも空調で思った以上に冷えていることが多いので注意。
入浴時はなるべく浴槽につかるようにします。
足湯をしたり、就寝時にレッグウォーマーを使ったりするのもよいでしょう」

 また、脱水を防ぐために、こまめで早めの水分補給を心がけましょう。
成人の1日の必要な水分補給量は約1200ml、コップ8杯分です。
白湯、ミネラルウォーター、麦茶など、カフェインや糖分を含まないものを選び、こまめな水分補給をすることが大事です。 「寝る前のコップ1杯の水も忘れずに。またスポーツ中は、ミネラルバランスのよいスポーツドリンクを飲むのがおすすめです」
日頃できるストレッチとして先生がおすすめするのが“波止場のポーズ”です。
「高さ30〜50cmくらいの椅子や階段などの段差に片足を乗せ、ひざを直角にします。反対側の足のかかとが床から離れないようにしながら、ふくらはぎとひざの裏をしっかり伸ばして30秒ほどキープ。左右の足を入れ替えて同様に行います」
 波止場に佇む男性をイメージして、先生が命名したこのポーズ。
外出や立ち仕事、スポーツの前後、就寝前などに数回行うと、ひざ裏やもも裏の筋肉がやわらかくなり、こむら返りになりにくくなるとのこと。

 ミネラル不足にならないような食生活を送ることも大切。
ミネラルのなかでも、筋肉をゆるめる働きのあるマグネシウムと、筋肉の収縮や神経の伝達をスムーズに行うために重要なカルシウムはぜひ取り入れてほしい栄養素です。

「マグネシウムはスルメやワカメ、ナッツ、ゴマ、カルシウムは乳製品、小魚、大豆食品などに豊富に含まれます。
さまざまな食品から偏りなく栄養をとりましょう」

頻繁に起こる場合は 重篤な病気が隠されているかも
 ほとんどのこむら返りは一過性の場合が多いのですが、1週間にだいたい3回以上の頻度で起こるようであれば、ほかの病気が隠されている可能性もあります。
 こむら返りが頻繁に起こる場合に疑われる病気の代表的なものに、
腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなどの脊髄系疾患、
糖尿病や、腎臓・肝臓機能障害などの代謝系疾患、
閉そく性動脈硬化症、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞などの血管系の疾患などがあります。

 特に脊柱管狭窄症患者は、その約7割に頻繁なこむら返りの症状が現れることが論文でも発表されているほどです。
この病気は放っておくと、足にしびれや痛みが生じたり、歩きづらくなったり、排尿や排便が困難になったりします。
 こむら返りの症状が頻繁に起こる場合、何科で診てもらえばよいのでしょうか。
「まずは整形外科を受診してください。
まだまだこむら返りを専門に見るクリニックは少ないですが、整形外科医であれば、まずは脊髄系の疾患がないかを判断できます。
その判断を踏まえて、今後の治療方針を相談していくとよいでしょう」  
 しばしばこむら返りの症状に悩まされる場合は、侮らず、早めに医療機関を受診しましょう。

(監修/出沢明 医療法人明隆会 出沢明PEDクリニック理事長)
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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