「本当に地獄みたいだ」二つの大地震が一度に東京を襲い、「日本経済が壊滅的被害」を受ける未来
宮地 美陽子 東京都知事政務担当特別秘書
2023.08.19 現代ビジネス
首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火……過去にも一度起きた「恐怖の大連動」は、東京・日本をどう壊すのか?
命を守るために、いま何をやるべきか?
東京都知事政務担当特別秘書・宮地美陽子氏による新刊『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれている。
その衝撃の内容とは?
「大連動」という恐ろしい未来
娘・香織の安全を確認したタクシー運転手の浜田幸男は「なんで映画みたいなことが俺の生きているときに起きるんだよ。本当に地獄みたいだ」と怒りと悲しみに暮れていた。
日本経済を牽引してきた企業の多くは二つの大地震で中枢機能が低下し、海外法人は撤退。
東西間の交通寸断に伴う機会損失も大きく、人々の消費マインドは一気に低下した。
株価は下落を続け、金利変動に伴い資金調達を困難とした企業は債務残高が増大。
日本の国際競争力は急降下し、雇用状況は悪化する一方だ。
さらに事態は悪化する。
香織を襲った南海トラフ巨大地震の発生から約50日後、今度は静岡県と山梨県にまたがる日本最高峰の富士山が噴火した。
噴火後2時間で東京にも降灰が始まり、交通や物流などがストップ。
慌てた浜田がニュースを見ると、首都圏の約1250万人に呼吸器系の健康被害を生じるおそれがあると報じていた。
「おいおい、マジかよ」。
火山灰は直接死傷する可能性はほとんどないものの、わずかでも堆積があれば交通機関は麻痺し、出勤はおろか移動することも困難になる。
2023年3月に関係自治体や国などでつくる「富士山火山防災対策協議会」がまとめた避難基本計画によれば、微塵でも降灰が始まると鉄道は早い段階で運行に支障が生じ、大部分が運行をストップ。
その余波で道路交通量は激増することになるが、路面にわずか0.5センチの降灰があるだけでスリップする車が続出する。
雨天時に3センチも積もれば二輪駆動車の走行は困難となり、四輪駆動車であっても10センチ以上で通行は難しい。
物流は停滞し、緊急車両の走行も困難になる。
電力は、降灰中は火力発電所の発電量が低下し、6センチ以上で停止。
10センチ以上の降灰に雨が降れば倒木で電線が切断されて停電が発生する。
通信は噴火直後からの大量アクセスで電話がつながりにくく、携帯電話のアンテナに火山灰が付着すれば通信障害が生じる。
下水道は堆積の厚さにかかわらず断水や使用制限が起きる。
首都直下地震、南海トラフ巨大地震、そして富士山の噴火。
320年ほどの時を経て再び発生した3つの巨大災害が重なるという「大連動」に、もはや浜田は空を見上げるしかなかった。「なんてこった。ハリウッド映画でも見たことがない光景だ」。
アパートの窓から見える降灰は、天からの涙のように映った。
つづく「巨大地震で『経済被害が東日本大震災の10倍超に』…東京都の『被害想定』が問うもの」では、東京が2022年5月に10年ぶりに見直した被害想定について紹介する。