2024年04月06日

「91.4%起こらない」のに不安が消えない根深い理由「心配ばかりで苦しい」を今すぐ取り除く方法

「91.4%起こらない」のに不安が消えない根深い理由「心配ばかりで苦しい」を今すぐ取り除く方法
4/5(金) 東洋経済オンライン

 生きていれば不安はつきもの。
とくにビジネスの現場では、ちょっとミスをしただけでも必要以上に落ち込み、不安に苛まれることになってしまうかもしれない。

■なぜ、小さなことに悩んでしまうのか? 
 しかし、そういった不安の多くは、あとから振り返れば「なぜこんな小さなことで思い悩んでいたのだろう」と感じることだったりもする。
にもかかわらず、なぜ私たちはことあるごとに不安にとらわれてしまうのだろう? 

『あやうく、未来に不幸にされるとこだった』(堀内進之介、吉岡直樹 著、東洋経済新報社)の著者は、その理由を「私たちの心の独特な働き」とひもづける。
 人の心はほとんどの場合、つねに「いま」ではなく「未来」のことを捉えているというのだ。
しかも未来を見据える心の動きは、悲観的であることが圧倒的に多い。


 たしかに私たちはしばしば未来に対し、「もし〜だったらどうしよう。そんなことになったら、もう取り返しのつかないことになってしまうかもしれない」などと考えてしまいがちだ。

 実際にそんなことは起こりえないのに、「ほんのわずかな可能性」を無意識のうちにたぐりよせては、あたかも「確実な未来」であるかのように思い込んでしまうのである。

 そうした不安へとつながっていく心のあり方を、著者は次のようにまとめている。

❶心配……わからない、確実ではない、ありえない、未来を想像して心配してしまう。
❷無理・無駄を繰り返す……そして、自分の勝手な思い込みで判断し、未来をなんとか自分の望み通りにしようと無理・無駄を繰り返す。
❸失望からの不安……しかし、不確かな未来に向かってもがいても何も変わらない。だから結局は疲れ果て、停滞し、不安なまま未来を悲観的に考えて自分に失望する。(「はじめに 未来が自分を不幸にする」より)

 だから必然的に、不安のループに巻き込まれていくということだ。
しかしそうなると、「いまを楽しく生きる」ことが困難になっていくに違いない。

 そこで著者は本書において、「未来を手放し安心して生きる」ための方法を提案しているのだ。
具体的には自信、関係、モノ、時間、お金、成長という6つのテーマごとに、「なにを、どのように解決するべきか」、その方法を明らかにしているのである。
 ところで偉そうなことを書いてはいるが、じつをいうと私も、いままさに大きな不安の渦中にある。
自分のミスを発端とした不安が、ずっしりと心にのしかかっているのである。

 そこで、ここから先は、同じように不安を抱えた方々と歩調を合わせつつ、本書のなかから解決のためのヒントを探していきたい。

■未来を心配するのは、もうやめよう
 未来について心配するのは、無意味で愚かしいことだと著者は断じている。
それはなんの利益も生まず、ただ自分の心を苦しめるだけのことなのだと。
 そんなことは百も承知で、だから困っているわけだが、いずれにせよ「未来への不安はほぼ実現しない」という研究結果も出ているのだという。

 2020年に、ペンシルバニア州立大学で実施された研究がそれだ。29人の参加者にそれぞれ10日間にわたり、心に浮かんだ心配ごとを記録してもらい、それらに根拠があるかどうかを調べたというのである。
結果、心配ごとのうち最も多かったのは「まったく根拠のない心配ごと」でした。
さらに「なんらかの根拠がある心配ごと」についても、30日間にわたって追跡調査をしたところ、その91.4%は実際には起こりませんでした。(114ページより)

 この結果からわかるのは、「私たちが日々心を悩ませている心配ごとは、かなり的外れで、ほとんど現実化しない」という「事実」だ。

 心配ごとに取りつかれ不安の渦中にいるときは、それがとてもリアルに感じられるだろう。
しかし、単に不安がそうさせているだけなのだ。
 つまり大切なのは、「心配ごとの多くには根拠がなく、悪い予測のほとんどはハズレる」という「事実」を知っておくこと。そうすれば、気持ちは格段に楽になるはずだからだ。

 とはいっても(つまり、理解しているつもりでも)、私たちの心は不安からなかなか抜け出すことができない。
 だから困ってしまうのだ。
しかも、なんとか抜け出したいと思っているからこそ、心は「心配が現実化するわずかな可能性」を無意識に探し続けてしまう。悪循環だ。

 その結果、私たちはいつしかそれを、あたかも「確実に起こること」であるかのように受け止めてしまうのである。
本当は、たちの悪い錯覚でしかないのに。
そうなると、私たちは「到底起こりえないような不安」を、「確実な未来」だと信じ込み、おびえてしまいます。
「取り越し苦労」で、人生を浪費してしまい、「いまを楽しみながら生きること」ができなくなるのです。(115ページより)

やはりそれは、なんとかしなければならない。

■どうやって、91.4%の不安を無視するか
 不安の91.4%が無駄だとわかっているのなら、あとはそれを無視すればいいだけだ。
簡単な話だが、それは心にとってはなかなか難しいことでもあるようだ。
 その理由を著者は、「心は不安にフォーカスしたがるから」だと説明する。

 怖いとわかっているからこそホラー映画を観てしまうのと同じように、私たちの心は不安の存在に気づくと、それをじっと見続けてしまうというわけだ。
 事実、ここまでお読みになって、「残りの8.6%」が気になっているという方もいらっしゃるのではないだろうか? 

 「すべての心配ごとのうち、91.4%は無視してよい」といわれて気持ちがラクになったはずなのに、気がつけば今度は「残りの8.6%」が自分に当てはまるのではないか、と心配になっている可能性があるということだ。
かつては著者もそうだったという。

でも、それって、めちゃくちゃ疲れませんか? 
そして、あまりに悲観的だと思いませんか? 

楽しくないまま、いまを過ごす生き方なんて、やめちゃいましょう。
大げさに聞こえるかもしれませんが、命の無駄遣いです。(116ページより)

 厳密にいえば、「いま感じている不安」は「未来の不安」ではないと著者は断言している。
それは、未来に対して、いま「わざわざ起こしている不安」にすぎないのだと。

どうなるかわからない未来を変えることは大変ですが、「いま」ならすぐに変えられます。
つまりその不安は、いますぐ取り除けます。(117ページより)

■「未来も、ほぼ100%大丈夫」
 そもそも、未来のわずかな可能性のせいで心が不安だらけになってしまうのだとしたら、それは明らかに不健康である。
 少ない可能性は小さくしたほうが合理的だし、なによりそのほうが心を穏やかに保てることだろう。

幸い、そのためのよい方法があります。
心のバランスを取り戻すテクニックなのですが、やり方は簡単。
「いま」に集中して、不安な気持ちを次のように言い換えるだけです。

「未来も、ほぼ100%大丈夫」

この呪文は未来を追い払って、現在に集中するためのものです。(117〜118ページより)

 いささか気恥ずかしいが、とはいえこれは説得力に満ちた考え方でもあるだろう。
それに、わざわざ言語化しなくても、このように意識しているだけでも効果は望めるはずだ。

 どんな物事も、どこを強調して表現するかによって印象はがらりと変わる。
そしてそれが、大きな意思決定にまで影響することがある。

 心理学では「フレーミング効果」と呼ぶそうだが、つまり上記はその応用だということだ。
「未来も、ほぼ100%大丈夫」という呪文のどこが「フレーミング」なのかというと、「心が無意識にフォーカスするポイント」をズラしている点です。

私たちは、ともすると未来ばかりを見てしまいがちです。
つまり、視点があまりに先すぎるので、心穏やかに過ごすためには、視点をときどき手前に引き戻さないといけないのです。(119ページより)
 だからこそ、「いま」にフォーカスできるようにするべきなのだ。

■現在が残念なときほど「いま」に集中する
 さて、ここで2つの感じ方を比較してみよう。

@ 「思っていたのとは違う状態」を、残念に思うか
A 「予想しなかった出来事」を、ラッキーと思うか
(123ページより)

 一般的に、@の考え方をする人は「予想したとおりのことが起こってほしい」人なので、未来に対するフォーカスも強いといえる。
 一方、Aの考え方をする人は、現在の「受容度」が高いタイプだろう。
「いま」を「いま」として受け入れられるということだ。

 総じてAのほうが、幸福度は高くなるようだ。
なぜならそういう人は、つらいときにフォーカスをより手前に引き戻すことができるから。

「フォーカスを手前に引き戻す」という小技は、誰でもすぐにできる、最も簡単にして最強のテクニックです。

例えば、マラソン大会に向けて毎日ランニングを続けているとしましょう。
努力が思うように実らないときでも、「なかなかタイムが伸びない」とがっかりする(=「いま」の状態を残念に思う)のではなく、いま、大会に向けて走っていること自体を楽しむべきです。(119ページより)

 つまり、「ああではない」と嘆くのではなく、「いまこうである」を楽しむべきだということである。

■「いまやりたくない仕事」はどうするか? 
 もちろんそれは、仕事についてもあてはまる。
 たとえば、どうしても気持ちの乗らない仕事があった場合には、誰かに代わってもらえないか掛け合ってみるのもひとつの手だ。

 なによりまずいのは、自分で「やらないといけない」と思い詰めてしまうこと。
あえて周囲の力を借りることが、よりよい結果につながるケースもあるのだ。

 それでも避けられないのなら、フォーカスをもっと手前に引き戻し、意識的に楽しむべき。嫌な仕事は長く感じるものなのだから、どうせならその作業中に感じられる楽しみをいち早く見つけ、それを味わいながら仕事をこなすほうがいいわけである。
 また、「嫌な仕事」を次のように脳内でポジティブ変換することも、精神衛生上、大きなメリットがあるそうだ。

「仕事でミスをした」(ポジティブに言い換え→)「これは何か他の大きな失敗と引き換えに先取りしたのだな。この程度でよかった!」

「明日までにどうせ選ばれないアイデアを100個考える」(ポジティブに言い換え→)「次の1個で人生変わるかも!」
「たった一度の会議のためだけに、大量のコピーを用意する」(ポジティブに言い換え→)「これは疲れた脳を休ませるチャンス到来!」
(119ページより)

 言語化すると軽く感じられるかもしれないが、これも先述の「フレーミング」と同じく重要なスタンスであるという。
 もちろんポイントは、未来にフォーカスするのではなく、「いま」に集中することだ。

秘訣はすべて「いまを楽しもう」と試みること。無理は決してしないこと。

そして「私は、それが嫌なのだけど」と自分に言う代わりに、あえてその中に楽しみを見出すようにすると、楽しく感じられるものです。(128ページより)

 先述したように、人生に不安はつきもの。だとしたら、その渦中でもがき続けるより、楽しみながら乗り越えるほうがいいということである。

印南 敦史 :作家、書評家
posted by 小だぬき at 12:00 | 神奈川 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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