2024年04月08日

人はなぜ霊感商法に引っかかるのか? 「現代の魔女」が語る「オカルトとの付き合い方」

人はなぜ霊感商法に引っかかるのか? 「現代の魔女」が語る「オカルトとの付き合い方」
4/7(日)  デイリー新潮
魔女・魔術師・占い師・神秘家の肩書きを持つヘイズ中村さん

 2月に出版された『ガチ魔女って普段何しているんですか?』(二見書房)は、魔女・魔術師・占い師・神秘家の肩書きを持つ日本人女性、ヘイズ中村さんによる「魔女」の解説書だ。
「オカルト」のジャンルに属する本だが、語られている「現代の魔女」は大きな鍋で怪しい薬を作ることも、不思議な杖を振って願いを叶えることもない。
むしろ、魔女に向いているのは「疑り深い現実主義者」だと説く。

 ヘイズさんは現在、本の出版や講座などを通じてオカルトの世界を解説している。
怪しいモノに騙されないためにも、まずオカルトの正しい知識を身につけるべきという意識が強い。
日本のオカルト界で騙す側と騙される側を長く間近で見てきたヘイズさんに、「日本人とオカルト」について話を聞いた。

魔女は「不思議大好き」な人たちではない
――まず「現代の魔女」とはどんな人たちなのですか? 

 現代の魔女の定義や歴史には諸説ありますが、共通しているのは、目に見えない世界を信じ、地球や自然と一体化したライフスタイルを提唱する“生き方”です。
近年のスピリチュアルブームで増えている「不思議大好き」な人たちではないんですよ。

――「不思議なこと」を積極的に信じるタイプではないと。

 私自身はほとんど信じません。
でも、世の中には「不思議なこと」がたくさんありますよね。
それらの皮を剥がした結果、99%がオカルトでなかったとしても、どうしても解明できない何かが1%は残る。
それを見極め、自分や周囲のために生かしたいと考える人は魔女に向いています。

――そうした魔女が使う魔術とはどんなものなのですか? 

 現在の西洋儀式魔術は「近代西洋復興魔術」などと呼ばれ、そこから枝分かれしたのが「魔女術」です。
儀式魔術は精神修養的な側面が強いのですが、魔女術は平たく言うと、願いが実現するように自分の心と体を動かして、環境や自分自身を変えることが特徴。
その過程を効率良く進めるために、行動を起こす際に月の満ち欠けを確認したり、エネルギーをうまく回したりと、「目に見えないもの」の仕組みや力を使います。

――たとえば「エネルギーを回す」という魔術はどんな内容ですか? 

 細かいコツや方法を省いて説明すると、具体的な行為は、願望の成就に必要な現実の作業の途中で成就までを一度イメージすることです。
願望が“本の出版”なら、資料集めの途中で「次は構成を考えて、その次は原稿を書いて……」とイメージします。
こうして1日1回エネルギーを回し続けると、渦が起こって周囲を巻き込めるようになる。さらにそこで大きく行動すると、渦がまた大きくなって、成就に向かう波も大きくなり、成就しやすくなるわけです。
ただし、実際の行動という努力なしでは成立しません。

騙される経験を繰り返す人は多い
――魔女の修行はどのように始められたのですか。

 80年代前半、魔術や魔女術に関する著作で有名な英国の作家に紹介され、東アジアを中心に活動する魔術団体に参加しました。
そこの構成メンバーの大半は、ヨーロッパから現地の大学に招聘されてきた大学教授たち。
皆さん知的でしたから教える内容も理論的で、非常にアカデミックな環境で修行の一歩を踏み出せました。
その後も海外の団体と交流したり、関連書を原書で読んだりしながら、実際の修行を続けています。

――様々な修行があるそうですが、魔術に理解があるパートナーとご結婚もされるなど、現在の日常生活は意外と普通だそうですね。

 単純に言うなら、あまり不自然なことをしない生活ですね。
日が落ちた頃に食事をして、早めに寝て、太陽が出た頃に起きる。
地元で生産されたものを食べる。
あとは地球にあまり迷惑をかけないように、ガソリンを無駄に使わないといった感じです。

――オカルト関連の著作家や占い師としても日本のオカルト界を長く見ています。そこで気づくことはありますか? 

 今の日本でオカルトに惹かれる人には、一発逆転を狙うというか、社会の閉塞感から逃げているような部分があると思います。
パワースポットに行っても何も変わらないからと、魔術の世界に来る人もいますが、そこで修行法などを紹介すると、これを数年やらなきゃいけないのかとまたパワースポット巡りに戻る。
あるいは高額のグッズを購入するなど いろいろなものに飛びついては騙される経験を繰り返す人はとても多いです。

大きく騙されてしまう人の傾向

――不安が多い今の時代、オカルトやスピリチュアルを名乗る怪しいモノに騙される人が増えているように見えます。

 増えたのではなく、SNSなどで可視化されてきたのだと感じます。
「できれば簡単に一発逆転」という心の弱い部分はどの年代にもありますから。
ただ、騙し騙される様子を何十年も見ていると、騙されてしまう側には一定の傾向があるように思えます。
頑張って真面目に生きているのに人間関係や仕事に恵まれない、といった境遇にある人たちです。
「それは社会が悪い」と言ってくれるところに引き寄せられてしまった人は多いですね。

――そうした怪しいモノを見分ける方法はありますか。

 たとえば“お告げ”の場合、一般的なイメージは「神からのお告げが!」と突然言い出す人たちですよね。
でも実際は、訓練や修行を経て発揮される能力です。
そういう血筋の方も多い。
私の周りにも幼い頃から修行を始めて何十年も続けながら、一定の術式に則って“お告げ”を受け取っている人もいます。
また日本でも海外でも、そうした人たちは『神』と『自然』をきっちり分ける傾向があまりないんですよ。

 また、生涯未婚だったり金銭の富は持っていなかったり、みなさんそれなりの代価を支払っています。
人間が持てるエネルギーの量は誰でもあまり変わらないので、エネルギーを大きく受け取って能力を発揮するなら、家族や私財は持てなくなるわけです。私自身は“お告げ”で大金を得ている人を見ると「ふぅん」と思いますね。

成功者はなぜ占いを信じるのか

――政治家や企業のトップなどに「お抱えの占い師」がいるという話も耳にします。

 見えない世界を強く感じる瞬間が一般の人より多いのだと思います。
たとえば弁護士だと、何年も揉めている遺産相続の案件が、当事者である兄弟全員の夢に彼らの亡くなった母親が現れ、『争わないで』と言ったとたんに解決する。
医師だと、死期の近い患者が、離婚した配偶者が帰ってきた瞬間に大きく持ち直す、といった経験です。

 そういう状況を目の当たりにすると、「目に見えない世界」を否定し続けるより「あるのかもしれない」と思った方がつじつまは合う。
ただ、その世界を自分で研究すると、本を読むだけで何十年もかかりますから、きちんと訓練した、実績のある占い師などに頼むという選択も生まれます。

――日本ではなぜ、あらゆる層が「目に見えない世界」を意識するのでしょうか。

 大晦日に除夜の鐘を聞けば「今年が終わる」と感じますよね。
亡くなった人がお盆に帰ってくる話が本当かはさておき、そう思ってお線香をあげることで、現実の人間関係がスムーズにいくこともあります。
日本ではそんな風に、宗教体験と慣習が一体化しているわけです。
だから、意識せずとも「見えない世界や現実以外の何かがあるのでは」という感覚を持っている人が潜在的に多いんですよ。

デイリー新潮編集部
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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