あなたは「健診」と「検診」の違いを説明できますか…?では「人間ドック」とは…?
7/19(金) 現代ビジネス
毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。
健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもある。
果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているだろうか。
BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けする。
『健診結果の読み方』連載第42回
「健診」と「検診」
会社などで行われるのは「健診」ですが、「がん検診」と言われるように、がんに関しては「検診」が使われています。この違いはなんでしょうか。
健診とは「健康診断」、厚生労働省的には「健康診査」を省略したものです。
「診断」は医療の言葉ですが、健診は法律上は医療に含まれません。そのため厚生労働省はあえて「診査」という言葉を使っているのかもしれませんが、いずれにせよ各自が現在の健康状態を知って、病気の予防に役立てることを意図しています。
予防医学では、病気の予防は次の4段階に分類されています。
0次予防:健康な生活が送れるように、社会全体として環境を整える。
1次予防:生活習慣の改善などにより、病気に罹りにくくする。
2次予防:特定の病気に対して、早期発見・早期治療を行う。
3次予防:病気になってしまったひとに対して、さらなる重症化や後遺症を防ぐ。
「対策型検診」と「任意検診」
この分類に従えば、健診とは1次予防を目指したものだということが言えます。
健診結果をもとに、各自が生活習慣を見直して、数値の改善を心がけることが求められているのです。
ちなみに0次予防とは、禁煙エリアを拡大する、分煙を推進する、地域で健康イベントを開催するなど、地域全体での取り組みを通して、健康意識を高めることを目指した活動のことです。
一方、検診は「特定の病気の早期発見」を主眼にしています。
ですから2次予防に相当します。がん検診は、まさにがんの早期発見を目指したものです。
大きくは国が主導し、市町村が住民サービスとして行う「対策型検診」と、病院などが独自に提供する「任意検診」に分かれます。
市町村が行うがん検診は、対策型検診の代表です。かなり安く受けられますが、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がんの5つに限られており、しかも検査方法に制限があります。
もっと詳しく調べたい、あるいは別のがんも調べたいのであれば、病院が提供するCTやPETを使った、本格的な検診を受ける必要があります。
ただしそれらは任意検診ですから、費用は原則として全額自己負担になります。
「人間ドック」の立ち位置は…
法律で義務付けられている検診もあります。
小中高の1年生は、必ず「心臓検診」を受けることが、学校保健法で定められています。
全員が心電図検査を受け、問題が見つかった児童・生徒に対して、追加の検査や生活指導などが行われます。
若い世代の、心疾患による突然死などを防ぐことを目的としています。
現役世代が受ける「人間ドック」は、健診と検診の中間的な立ち位置にあります。
普通の健診よりも項目が多くなる分、健康状態だけでなく、より正確な病気のスクリーニングが可能になり、早期発見につながりやすくなります。
ただし人間ドックを受けるには、それなりの費用がかかります。
会社員や公務員は、それぞれの健保組合や共済組合などから補助が出るため、かなり安く人間ドックを受けることができます。またどの病気にフォーカスしたいかで、検査項目を選べるようになっています。
より専門的な、臓器別の人間ドックも用意されています。
「脳ドック」「心臓ドック」「腎臓ドック」などです。これらは「ドック」といっても任意検診ですから、料金はかなり高めです。
しかし通常の医療に近い(ほとんど同等の)、かなり専門的な検査が受けられます。
それらを受けて何も見つからなければ、当分は安心していられそうです。
永田 宏(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科教授)