本当にコメは品薄か? SNSで指摘される「令和の米騒動」のウラにTVメディアの“煽り報道”
2024/08/28 日刊ゲンダイ
「消費者の立場に立って、コメの流通不足の懸念に対処するよう」
大型スーパーなどの店頭に並ぶコメが全国的に品薄状態になっている「令和の米騒動」で、岸田文雄首相(67)は27日、首相官邸で開いた食料安定供給・農林水産業基盤強化本部の会合でこう言い、坂本哲志農林水産相(73)に対応を指示した。
品薄状態が続いているコメを巡っては、大阪府の吉村洋文知事(49)が政府備蓄米の放出などを含む流通状況の改善を求めている。
だが、坂本農水相は同日の閣議後会見で、備蓄米の放出については「慎重に考えるべきものだ」として、消費者に対して必要な量だけを買うといった対応を求めている。
ネット上では《岸田さん遅いよ。コメが食べられないよ》《品薄状態なのに放出しないなら備蓄米の意味がないじゃない》といった意見が散見される。
だが一方では、《コメ農家ですが、ふつうに出荷しています。品不足の理由が分かりません。みなさん冷静に》
《長距離トラックの運転手です。私だけで125トンの玄米を精米工場へ納入しました。
それが何百台も全国の精米工場へ納入しているのですから、店頭からお米が消えるという事が全く理解出来ません》との投稿もある。
果たして テレビメディアが「米騒動」と大騒ぎするほど、コメは品薄なのか。
■懸念されていたのは「米騒動」ではなく、価格高騰による消費者離れ
農水省は1カ月前の7月30日、コメの需要や生産に関する現状や見通しを公表。
それによると、6月までの1年間の主食用のコメの需要は前年比11トン増の702万トンで、10年ぶりに増加。
民間在庫は同月末の時点で同2割減の156万トンだったという。
背景には、パンや麺など他の主食品と比べて値上がり幅が緩やかなコメの需要が高まった事や、訪日外国人の増加に伴う日本食ブームがあるとみられている。
ただ、林芳正官房長官(63)は7月末の会見で「現時点で食用米の全体需給はひっ迫している状況ではないと認識している」と説明。
この時、政府内で懸念されていたのは、コメを奪い合う「米騒動」ではなく、むしろ価格高騰による消費者離れだったという。
それがなぜ、あっという間に全国の店頭からコメが消える事態となったのか。
SNS上でささやかれているのはテレビメディアの“煽り報道”だ。
《コメ需要の増加は5月くらいから言われていたが、誰も品不足を心配していなかった。
パリ五輪が終わった8月から急に テレビで「品薄」と大騒ぎに》
《商品棚にコメがないという映像を TVで繰り返し見せられると焦る。
周りの人も「いま買いに行かないと」と言っている》
《TVが騒いだコロナ禍のマスク騒動を思い出す。
そのうち、コメの転売ヤーも出てくのでは》
1918年に起きた「米騒動」は、群衆がコメを求めて販売店に押し掛ける地方の事件を伝えた新聞報道によって全国各地に暴動が拡大。
「ビリケン内閣」と呼ばれた当時の寺内正毅首相が総辞職に追い込まれる事態となったが、新聞とTVの違いはあれども状況は似ているとも言えるだろう。
いずれにしても消費者は冷静に考えた方がいい。