2024年09月29日

20歳から免疫力は低下していく…高齢者がメタボ対策よりもしないといけないこと

20歳から免疫力は低下していく…高齢者がメタボ対策よりもしないといけないこと
9/28(土) WANI BOOKS NewsCrunch

20歳から免疫力は低下していく…高齢者がメタボ対策よりもしないといけないこと

一般的には、20歳前後が最も免疫力のバランスが良いと言われています。
そして、高齢者の病気には免疫の老化が影響していることが多いようです。
医学博士の飯沼一茂氏によると、「フレイル(虚弱)」を予防すると、免疫の老化を妨げ、健康に長生きしやすくなるそうです。
免疫やフレイルを正しく理解して、健康寿命を延ばす方法を紹介します。

※本記事は、飯沼一茂:著『免疫アップの最強セットリスト -自分で選ぶ健康寿命の延ばし方-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

◇免疫が老化すると「がん」のリスクも高まる

免疫システムは、体内に侵入する病原体や異物を検出し、攻撃して排除する役割を果たしています。
しかし、年齢の進行とともに免疫システムの一部が変化し、免疫応答の効率が低下する傾向があります。

こうした年齢とともに免疫システムが機能低下する現象を「免疫の老化」と呼びます。
また、免疫系の機能が低下すると、慢性的な炎症反応が高まることに焦点を当てて「炎症性老化」と呼ぶこともあります。

免疫の老化は、どのように起こるのでしょうか。

まず、免疫細胞の数や機能が減少し、免疫応答の効果が低下します。
特に、T細胞やB細胞の活性が低下し、感染症に対する抵抗力が弱まることがあります。

また、年齢を重ねると、免疫システムが炎症反応を制御するための調節機能も低下することがあります。
免疫システムは、異物や病原体への攻撃だけでなく、自身の組織や細胞への攻撃を防ぐためにも調節されているのですが、その調節する性能が下がるのです。

それにより、体内で低レベルの炎症反応が持続的に生じることがあります。
これは体内の免疫応答が正常に調整されていないことを示しています(インフラメーションの増加と呼びます)。

慢性的な炎症が増加することにより、過剰な炎症反応や自己免疫疾患など、慢性疾患のリスクが高まる可能性があります。
慢性疾患の例として、がん・心血管疾患・糖尿病・関節炎・神経変性疾患などがあげられます。

免疫の老化により、免疫応答が遅れたり、適切におこなわれなくなったりすることもあります。
免疫系の一部の機能が過剰に活性化されることもあり、これらにより、体は正当な脅威に対する適切な免疫応答をおこなうのが難しくなります。
その結果として感染症への抵抗力を低下させます。

ワクチンの効果にも影響をおよぼすことがあります。
高齢者は、感染症に対する保護が低下します。
そのため、高齢者には定期的なワクチン接種がすすめられます。

高齢者は、免疫システムの変化に伴い、身体的な弱さや脆弱性が増加することがあります(「フレイル」。後に詳述します)。これは、感染症に対するリスクを高める要因のひとつです。

老化による免疫システムの変化は個人差が大きいため、健康状態やライフスタイルが影響を与えていると考えられます。
一般的には、20歳前後が最も免疫力のバランスが良い状態ですが、加齢とともにバランスが低下していきます。

気づかないうちに体内には慢性炎症状態が生じていて、60歳前後になると、さまざまな慢性疾患が表出するというパターンが珍しくありません。
慢性炎症状態は、よくない生活習慣のなかで自覚症状がないまま少しずつ蓄積されることが多く、働き盛りのある日突然、重大な疾患となって現れることも多くあり、注意が必要です。

炎症性老化は、長寿命社会において重要な健康課題であり、研究が進行中です。
将来的には、このプロセスを理解し、健康寿命を延ばすための介入策を開発するのに役立つかもしれません。

◇年齢に合わせた健康管理のアドバイス

年齢に合わせた健康管理は、健康と幸福を維持するために非常に重要です。
以下に、異なる年齢層に対する健康管理のアドバイスを提供します。
ただし、個々の健康状態やライフスタイルに合わせて実行することが重要です。

いずれの年齢層にも共通して、禁煙や適度なアルコール摂取、適切な水分摂取、ストレス管理、予防接種を受けることなどが健康に良い習慣です。
また、個々の健康状態に応じて医師や専門家との相談も大切です。
健康管理は一生涯の取り組みであり、予防と早期対応が健康長寿の鍵となります。

若い年齢層(10代から20代)
・健康な食事栄養バランスの取れた食事を摂りましょう。
果物、野菜、穀物、タンパク質をバランスよく摂取し、加工食品や糖分を控えましょう。

・運動毎日運動する習慣を身につけましょう。有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることが理想です

・睡眠 十分な睡眠を確保し、規則的な睡眠サイクルを保ちましょう。

・ストレス管理ストレスを軽減する方法を見つけましょう。リラクゼーションや趣味の活動が役立つことがあります。

中年層(30代から50代)
・健康診断定期的な健康診断を受け、潜在的な健康問題を早期に発見しましょう。

・食事管理カロリー摂取を調整し、食事の質を高めて、体重を管理しましょう。

・運動適切な運動を継続し、筋力や柔軟性を維持しましょう。

・ストレス管理仕事と家庭のバランスを取り、ストレスを管理する方法を見つけましょう。

高齢層(60代以降)
・健康管理慢性疾患の管理を重視し、医師の指導に従いましょう。

・適度な運動適度な運動を続けて筋力とバランスを維持し、転倒を予防しましょう。

・栄養カルシウムとビタミンDを含む栄養素を十分に摂取し、骨密度を維持しましょう。

・社会的活動社会的なつながりを維持し、心身の健康にプラスの影響を与えましょう。

◇高齢者はメタボ対策よりも「フレイル」対策

近年「フレイル(虚弱)」という言葉がよく使われるようになりました。
フレイルとは「加齢により心身が老い衰えた状態」のことで、健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味します

健康に戻れるか、介護・寝たきりへと進んでしまうのかの分岐点ということもできます。

フレイルには3大要素があるとされています。

身体的なフレイル栄養が足りておらず、筋肉が少なくなった状態。
足腰の筋力が衰えて、立ったり歩いたりするのがつらい状態で、転倒を繰り返すこともあります。
食べ物を飲み込みにくくなったり(嚥下障害)、ものを食べづらくなったり(摂食障害)すると、一気に身体的に弱くなります。

精神的なフレイル認知機能・意欲・判断力などが低下したり、軽度のうつ症状になったりする状態。

社会的なフレイル人との関わりがなくなって、閉じこもりがちになり、孤独感が深まるような状態。

このような要素が重なりあうと、自立して生活する力が下がって、フレイルの状態が加速してしまいます。
では具体的に、どのような状態になったらフレイルと判定できるのでしょうか。

フレイルの基準は複数ありますが、一般にはリンダ・フリード氏が提唱した次の基準が用いられることが多いようです。


・体重減少 意図しない年間4・5キログラムまたは5%以上の体重減少

・疲れやすい 何をするのも面倒だと、週3〜4日以上感じる

・歩行速度の低下

・握力の低下

・身体活動量の低下

ここでもっとも注目したいのが体重減少です。
中年期まで成人病対策や、メタボリックシンドローム対策として、肉類や炭水化物を制限し、体重を減らすことが健康だという意識でいる人も多いのですが、高齢になってからは意識して体重、特に筋肉量を増やすことに意識を転換する必要があります。

フレイルは急性のけがや病気による入退院をきっかけとするケースなどもありますが、多くは生活環境の変化などにより、少しずつ進んでいきます。

その主な原因として次のようなものがあげられます。

・加齢に伴う活動量の低下と社会交流機会の減少

・身体機能の低下(歩行スピードの低下)

・筋力の低下

・認知機能の低下

・易疲労性や活力の低下

・慢性的な管理が必要な疾患(呼吸器病、心血管疾患、抑うつ症状、貧血)

・体重減少

・低栄養

・収入・教育歴・家族構成など

◇健康長寿を実現するために必要な4つのポイント

高齢期を迎えるにあたり、いかにフレイルを予防するかを考えることは、健康長寿を実現するために非常に重要です。
以下にフレイル予防のポイントを列挙します。

運動で体力を維持するフレイル予防の最重要点は、筋肉量を減らさないことです。
運動によって筋肉を積極的に使い、むしろ筋肉量を増やすことを目標にしましょう。
といっても、無理は禁物です。けがをしてしまっては、まったくの逆効果ですので、慎重さも重要です。
基本は歩くこと。楽しんでウォーキングに取り組みましょう。
意識して動かすことで何歳からでも筋力アップは可能です。

栄養状態を良好に保つバランスよくいろいろな食品を食べるのは基本中の基本。
なかでも意識して積極的に摂るべき栄養素は、筋肉を作る材料「タンパク質」です。
肉・魚・大豆・卵・乳製品に多く含まれています。
1日3食、生活のリズムを保って食事することが大切です。

1回の食事で十分な量が食べられない場合は、間食もOK。
ヨーグルト・魚肉ソーセージ・かまぼこ・サラダチキン・小豆(和菓子)などがおすすめです。

社会と交流する孤立すると意欲が低下し、精神的に何もやりたくなくなってしまいます。
常に誰かと会話ができるように、ボランティア活動をするなど社会参加をする機会を作り、人との交流を保ちましょう。
もしも、孤立が避けられないとしても、毎日、朝日を浴びて、好きなことをして、意欲的に毎日を過ごせるようにしましょう。

口腔ケアをする
栄養をとったり、呼吸をしたり、コミュニケーションを取ったり、口には大事な働きがあります。
口腔の体操を取り入れ、舌・くちびる・ほお・のどの筋肉を意識して鍛えることで、飲み込み機能の維持・向上をはかり、むせ・誤嚥を防ぎましょう。
肉など噛みごたえのある食品を食べるには、歯や歯茎の健康も重要です。

飯沼 一茂
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 健康・生活・医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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