人間関係を妨げる「思い込み」の正体と5つの対処法
11/11(月)
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誰もが一度は、自分が注目の的になっていて、誰もが自分の一挙一動を見ているように感じたことがあるだろう。
しかし、多くの場合、それはただの幻想に過ぎない。
この傾向は「ブルードット」効果に基づいている。
ブルードット効果とは書籍『その「決断」がすべてを解決する』(原題:The Subtle Art of Not Giving a F*ck)の著者マーク・マンソンが提唱した概念だ。
簡単に言えば、特定のもの(例えば青い点)を見ることに意識が向くと、実際には存在しない場所にもそれが見えてしまうという現象だ。
社会的な場面では、これは他人が自分をどう思っているかに過度に集中し、相手の視線やコメント、沈黙を自分への評価や感情の表れと解釈してしまうことに繋がる。
このサイクルは「スポットライト効果(自分の外見や行動、言動を他人が実際以上に意識していると思い込む認知バイアス)」によって強化され、自分が他人からどれだけ注目され、どう思われているかを過大評価してしまう。
実際には、このような習慣は人間関係に距離を生み、不正確であるか全く根拠のない思い込みを通じて経験を歪めることになる。
ここでは、ブルードット効果が私たちの社会生活に与える影響と、思い込みから離れ、より真実味のある関係を築くための5つの方法を紹介する。
■1. 思い込みを他者に投影しがちになる
ブルードット効果は、実際には存在しないかもしれない他者の評価やサインに過度に敏感になることで、社会的な交流に現れることが多い。
研究によると、私たちはしばしば自分の感情を他人に投影し、相手の思考や意図に関する認識を形成している。
たとえば、2017年にJournal of Social and Personal Relationshipsに掲載された研究では、パートナー以外の人に魅力を感じた人は、実際にはそうでない場合でも、パートナーも同じように誰か他の人に魅力を感じていると信じ込む傾向があることが示された。
この投影は不必要な緊張を生み出し、パートナーに対する怒りや否定的な行動を引き起こすことがある。
友情や職場での関係でも、他者の中立的な行動を個人的な評価として解釈してしまうことがあるが、これは多くの場合、自分自身の不安や感情を反映しているに過ぎない。
もし「彼らは私を迷惑だと思っているのではないか」とか「彼らは私のことが嫌いなのだろう」と思ったときには、一旦立ち止まり、「それを裏付ける具体的な証拠はあるだろうか」と自問してみるとよい。
ほとんどの場合、答は「ない」だろう。
事実と思い込みを区別する練習をし、多くの人が自分自身に集中していて、あなたの一挙一動を分析しているわけではないことを覚えておこう。
早合点に頼り、過度に注目されていると感じる
■2. 探求心よりも早合点に頼る傾向になる
思い込みを投影することが、自分の信念を他人に見出すことに関係しているのに対し、早合点に頼ることは、限られた情報に基づいて他人について迅速に結論を下すことにつながる。
早合点は自分の内面的な感情というよりも、さらなる状況を探求することなく表面的な解釈をしてしまう態度なのだ。
たとえば、友人が静かにしていると、「自分に腹を立てているのではないか」と考えることがある。
しかし、この反応は限られた証拠に基づいており、広い状況を考慮していないことが多い。
こうした素早い結論に頼ることで、相手の真の経験を理解する機会を逃し、より深い全体像を見落としてしまうことがある。
好奇心は思い込みに対する強力な解毒剤である。
2015年にNeuronに掲載された研究によれば、好奇心は報酬認識や意思決定などのより深い精神的プロセスを伴い、より豊かで能動的な知識の追求に繋がる。
好奇心は反射的な対応を超えて、表面的な印象にとどまらず、真の探求を促進する。
次に誰かの行動を自分に関係していると結論づけそうになったときは、一旦立ち止まり、「他にどんな可能性があるだろうか?」と考えてみよう。
彼らは全く別のことに気を取られているのかもしれない。
好奇心を持ち、オープンな質問をしてみよう。
友人がよそよそしく感じられたら、「少し大人しいけど、何かあったの?」と尋ねてみることができる。
判断から好奇心へと視点を変えることで、真のつながりのための空間が生まれ、より深く、真実の理解に至ることができる。
■3. 常に注目されていると感じることが多い
自分が常に見られていると感じるとき、それはスポットライト効果によることが多い。
2000年にJournal of Personality and Social Psychologyに掲載された研究では、スポットライト効果を、他者が自分の行動、外見、言葉にどれだけ注目しているかを過大評価する傾向と説明している。
私たちは、自分の些細なミスや服装の選択が細かく見られていると想像することがあるが、実際には多くの人は自分自身の経験に集中しており、私たちのことを分析していない。
このことを理解することで、安心感を得ることができるかもしれない。
各人は自分自身の「スポットライト」の中で生活し、自分の不安や考えに集中しているのだと想像してみよう。
そして自分が感じているほど頻繁に他者の注目の的にはなっていないことを思い出すとよい。
この認識は、絶え間ない想像上の判断から解放され、より自然体で本当の自分を表現することが可能になる。
自意識的な考えが浮かんだとき(例えば、言い回しを気にしたり、服装を再考したりするとき)には、優しく自分の焦点をシフトしよう。
「本当に注目されているのか、それとも自分の心が過剰に反応しているのか?」と自問してみる。
これを練習することで、些細な心配を手放し、より真実味のあるつながりを育むことができ、他者と真に関わることが可能になる。
自己への思いやりに欠ける、現在に集中していない
■4. 自己への思いやりが欠けている
ブルードット効果は、私たちが自分自身に対して最も厳しい批評家であるときに最も強く作用する。
自分をすぐに批判することで、他人の行動を自分に対する判断や批判として解釈しがちになる。
自己への思いやり、自分自身への真の優しさを育むことは、この効果を和らげるのに役立つ。
自分に優しくなることで、他者の善意を推測しやすくなり、些細な行動を自分の価値に対する評価として解釈する可能性が低くなる。
自己への思いやりを育てるためには、大切な人に話しかけるように自分自身に語りかけてみるとよい。
友人がすぐに返信しなかったからといって、彼らが怒っていると決めつけるのではなく、「人にはそれぞれ事情があり、返信の遅れが個人的なものではないこともある」と自分に言い聞かせてみよう。
この思考法を実践することで、他者の反応に対する不安が和らぎ、よりリラックスしたポジティブな関係を楽しむことができる。
自己への思いやりが難しいと感じるなら、心理学者クリスティーナ・チウィルが提案するシンプルな2ステップのアプローチを試してみよう(2020年にPersonality and Social Psychology Bulletinに掲載された研究より)。
1. まず自身の判断を保留し、自己への思いやりに関する自分の信念を振り返ろう。ただ自分の考えに気づき、それに親しもう
2. 筋肉を鍛えるように、思いやりを日々の習慣にしよう。最初はぎこちないかもしれないが、この変化は内面と外面の両方の経験を変え、人間関係に安らぎをもたらすことができる
■5. 現在に完全に集中していない
思い込みが支配し始めると、私たちは現在(いま・ここ)から引き離され、思考との精神的な綱引きに陥る。
完全に他者と関わる代わりに、自分がどう見られているかや他者の反応を過剰に考えてしまい、それが緊張を生み出し、有意義なつながりを妨げることになる。現在に根付くことで、このパターンを和らげ、より真実味のあるつながりを築くことができる。
マインドフルネスのよく知られている利点(幸福感の向上や心理的ストレスの軽減など)に加え、2013年の研究では、マインドフルネスが感情的な反応性を減少させ、行動をよりよく調整するのに役立つことが示されている。
次の会話では、相手に耳を傾けるよう真剣に努めよう。
相手の言葉に集中し、ボディランゲージに注意し、純粋な好奇心で応答しよう。
過剰に分析することなく、その瞬間を楽しむことを自分に許そう。
これらを実践することで、心の雑音を静め、本物でリラックスした会話を楽しみ、思い込みのプレッシャーなしで他者とのつながりを楽しむことが容易になる。
Mark Travers