2024年11月19日

アメリカによる日本の支配はなぜ続くのか?…日本が近代国家として「信じられない状況」にある理由

アメリカによる日本の支配はなぜ続くのか?…日本が近代国家として「信じられない状況」にある理由
11/16(土) 現代ビジネス

アメリカによる支配はなぜつづくのか?

第二次大戦のあと、日本と同じくアメリカとの軍事同盟のもとで主権を失っていた国々は、そのくびきから脱し、正常な主権国家への道を歩み始めている。
それにもかかわらず、日本の「戦後」だけがいつまでも続く理由とは?

累計15万部を突破したベストセラー『知ってはいけない』の著者が、「戦後日本の“最後の謎”」に挑む!

※本記事は2018年に刊行された矢部宏治『知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた』から抜粋・編集したものです。

外務省がアメリカとギリギリの交渉をしてくれるはず…

私は1960年(昭和35年)という昭和中期の生まれなのですが、日本が高度経済成長の真っただ中にあった子どものころ、よくこんな言葉を耳にすることがありました。

「政治三流、経済一流、官僚超一流」

つまり、自民党の政治家は汚職ばっかりしてどうしようもないが、とにかく経済はうまく回っている。
その証拠に日本は戦争で負けてから20年ちょっとで、アメリカに次ぐ世界第二位の経済大国になったじゃないか。

もちろんそれは町工場のオヤジから身を起こし、世界的な大企業をつくった松下(幸之助)や本田(宗一郎)といった経営者たちが偉かったからだが、もっと偉いのは官僚たちだ。
霞が関で夜遅くまで煌々と電気をつけ、安い給料で国家のために働く頭のいい彼 らのおかげで、日本はここまでのぼりつめたのだ......。

いまの若い人たちには信じられないかもしれませんが、30年くらい前まで、多くの日本人はそう思っていたのです。

ですから時代が変わり、2009年に自民党政権が崩壊して、その政治的変動のなかで外務省の「密約問題」が大きく浮上したときも、私自身のなかにそうした日本の高級官僚への信頼感というものは、まだ漠然とした形で残っていたような気がします。

なにしろ外務省といえば、財務省(旧大蔵省)と双璧をなす日本最高のエリート官庁だ。
いま大きな疑惑として報じられている日米間の「密約」も、おそらくは存在したのだろう。

けれども外務省の中枢には、そうした複雑な問題を全部わかっている本当のエリートたちがいて、国家の行方にまちがいがないよう、アメリカとそれなりにギリギリの交渉をしてくれているはずだ......。

その後、自分自身が密約問題を調べるようになってからも、まだかなり長いあいだ、
私はそう思っていたのです。

アメリカとの密約をコントロールできていない外務省

けれども残念なことに、現実はまったくそうではなかったのです。

現在、日本の外務官僚たちは、戦後アメリカとのあいだで結んできたさまざまな軍事上の密約を、歴史的に検証し、正しくコントロールすることがまったくできなくなっている。

というのも、過去半世紀以上にわたって外務省は、そうした無数の秘密の取り決めについて、その存在や効力を否定しつづけ、体系的な記録や保管、分析、継承といった作業をほとんどしてこなかったからです。

そのため、とくに2001年以降の外務省は、「日米密約」というこの国家的な大問題について、資料を破棄して隠蔽し、ただアメリカの方針に従うことしかできないという、まさに末期的な状況になっているのです(*1)。

私が「戦後史の謎」を調べるようになってから知ったさまざまな事実のなかでも、この無力化した外務省のエリート官僚たちの姿ほど、驚き、また悲しく感じられたものはありませんでした。

昨年から大きな政治スキャンダルとなっている財務省や防衛省の資料改ざん問題や隠蔽問題も、その源流が過去の外務省の日米密約問題への誤った対応にあったことは、疑いの余地がありません。

永遠にウソをつきつづけてもかまわない

あれほど国民から厚い信頼を得ていたはずの日本の高級官僚たちが、いったいなぜ、そんなことになってしまったのか。

もちろん密約は日本だけでなく、どんな国と国との交渉にも存在します。

ただ日米間の密約が異常なのは、アメリカ側はもちろんその記録をきちんと保管しつづけ、日本側が合意内容に反した場合は、すぐに訂正を求めてくる。
また国全体のシステムとしても、外交文書は作成から30年たったら基本的に機密を解除し、国立公文書館に移して公開することが法律(情報公開法:FOIA)で決まっているため(*2)、国務省(日 本でいう外務省)の官僚たちもみな、明白なウソをつくことは絶対にできない。

ところが日本の場合は、
「アメリカとの軍事上の密約については、永遠にその存在を否定してもよい。いくら国会でウソをついても、まったくかまわない」
という原則が、かなり早い時点(1960年代末)で確立してしまったようなのです。

そのため密約の定義や引き継ぎにも一定のルールがなく、結果として、ある内閣の結んだ密約が、次の内閣にはまったく引き継がれないという、近代国家としてまったく信じられない状況が起こってしまう。


(*1)「核密約文書、外務省幹部が破棄指示 元政府高官ら証言」(「朝日新聞」2009年7月10日
(*2)ただし軍関係およびCIA関係の文書や、その文書の関係国(日本など)が反対した場合は、公開されないケースも数多くあります

矢部 宏治
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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