【問題】マイナスにマイナスを掛けるとなぜプラス?「抜け毛」問題で考えると即納得だった!
1/8(水) ダイヤモンド・オンライン
洋菓子店を営む30代女性・マリさん。
1年前に独立したものの、数学が苦手だった彼女はいろいろな壁にぶち当たっていた。
そこで大人向けの数学塾を経営する堀口先生に教えを請い、救いの手を求めることに。
今回は「マイナスとマイナスをかけると、なぜプラスになるのか」という数学の疑問をわかりやすく紐解いていく。
※本稿は、堀口智之『1杯目のビールが美味しい理由を数学的に証明してみました。』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。
● マイナス×マイナスはなぜプラス?
誰もが最初につまずく数学の疑問
マリさん
マイナスでつまずいたところを思い出しました!「マイナスとマイナスをかけるとなぜプラスになるのか」という疑問です。
堀口先生
たしかに。これは、誰もがつまずくところですよね。では、学んでいきましょうか。
まず、マイナスをかけ算する前に、かけ算の意味について考えていきましょう。
3×4と4×3はなぜ等しいんだと思いますか?
マリさん
え、かけ算は順番を入れ替えても答えは変わらないんですよね?
堀口先生
はい。それは学校で習いましたよね。でも、その理由は?
マリさん
3個のリンゴが4皿と、4個のリンゴが3皿か〜。うーん等しいのはわかりますが、なぜと言われると混乱します。
堀口先生
その「●●が●●個ある」っていう考え方も、基本としてとても大切です。
しかし、型として覚えているだけなので、理由を聞かれても困るかもしれませんね。
マリさん
はい。困りました。
堀口先生
実は、歴史を振り返ってみると、かけ算は面積を測ることと重要なつながりがあるんです。
それこそ紀元前3000年頃から始まったエジプト文明。
ナイル川の氾濫や洪水が頻繁にあったと言われています。
そんなとき、自分たちの土地が流されて、どこからどこまでが自分の土地と言えるのかわからなくなったことがあったわけです。
だから、土地の面積を測る必要がありました。
かけ算を活用したら面積は測れますよね。つまり、縦×横です。
● かけ算の順番を変えても答えは変わらない でも、−2個ってどういう意味?
堀口先生
例えば、その面積が3m×4mと、4m×3mって面積は違いますか?
マリさん
いえ、同じです。
堀口先生
立つ場所を変えれば、どちらが縦でも横でもよいですね。
面積は簡単に求めることができるわけです。
堀口先生
これが、かけ算の順番を変えても答えが変わらない理由です。
マリさん
なるほど、納得しました!
堀口先生
では、次に、こんな問題を出してみましょう。
先ほど3×4を、3個のリンゴが4皿、と解釈されましたが、同様に考えると、(−2)×3っていくつになると解釈できそうですか?
マリさん
えっと、−2が3個あるから、−6ですか?
堀口先生
はい。その通り!じゃ、3×(−2)は?
マリさん
あれ?3が−2個分って……?よくわからなくなりますね。
堀口先生
ですよね。でも、かけ算って順番が逆になっても答えは一緒ですよね。
ということは、先ほどと同じ問題になります。
3×(−2)=(−2)×3なので、答えが同じ−6にならないとおかしいですね。
3がマイナス2個分と考えると混乱しますが、答えは−6とならざるを得ないわけです。
一度そのような法則やルールを決めたら、そのルールに従うように演算の答えも考えていく必要があるんですね。
マリさん
なるほど。数学が論理って言われている理由が理解できる気がします。
● マイナス●個がわからないなら 数値線上で考えてみよう!
堀口先生
もう少し式を変形してあげると、その式の持つ意味がより深くわかってくることでしょう。
3×(−2)についてもう少し説明しますね。
−2=(−1)×2ですから、つまり−2は、−1が2個分といえます。
よって、3×(−2)=3×(−1)×2=3×2×(−1)と変形できますね。つまり、6×(−1)となるわけです。
ここで−1をかけるということがどういうことにつながるのかを一緒に考えていきましょう。数直線で考えます。
堀口先生
6×(−1)は数値線上で6が−6に移動することになります。
つまり、6が−1個あるとは、原点を中心に180度回転する、もしくは、原点について対称となる位置にその数を移動させることなんです。
つまり、−1個あるとは、回転だったのです!
マリさん
−1個ある、と考えてしまうと混乱しますが、マイナスは数直線上においての回転、と考えるということですね。
つまり、「×(−2)」は、「2×(−1)」と考えてしまえば、2倍したものを回転させる、となるわけですね。
堀口先生
その通りです!つまり、(−1)×(−1)はどのように考えるんでしょうか。
マリさん
−1にある点を原点を中心にして回転させるのであれば、1に戻る……!すごい!!
堀口先生
はい。素晴らしい!(−1)×(−1)=1になる理由がわかりましたね。
● マイナス同士のかけ算は 日常的な話でも説明は可能!
マリさん
マイナス同士をかけ算すると、プラスになることはわかりましたが、でも、日常的な話ではなくて、数学で説明しているだけのようにも聞こえます。
ああ、数学が嫌だった理由を思い出してきました……!
堀口先生
数学は合理的にできているので、先ほどのような説明をしたのですが、たしかに数学的すぎましたね。
でも、現実でもきちんと説明できるんですよ。
先ほどマイナスは、時間軸を想定するからこそ考えられるという話をしました。
では、時間が経つと、減っていくものって何があるでしょう。
マリさん
時間が経つと減る……?お金ですか?
堀口先生
お金も減りますね。あと、最近私、抜け毛がひどいんですよ。悲しいことに。
マリさん
先生もそういったこと気にされるんですね。
堀口先生
いや、人からどう見られるかってやっぱり大事じゃないですか。
もちろん、髪の毛が減っても、自信は減らないのですが(笑)。
視線は多少気になるわけです。
で、この抜け毛ってマイナスのかけ算で計算できるんですよ。
マリさん
えっ!いきなりきましたね。
堀口先生
1日10本ずつ髪の毛が減っていくとしたら、3日後にはどうなりますか?
マリさん
10×3=30本減っているでしょうか。
堀口先生
そうですね。今、減る方向で考えているので、このように式を立てましょうか。
(−10)×3=−30
となるわけですね。
では、3日前ならどうなりますか?
マリさん
3日前ってことは未来ではなく過去だから、−3日とおけばよいってことですかね。
そうすると、
(−10)×(−3)=30
となりましたね。
つまり、過去は30本ほど今より毛量が多かった?
堀口先生
はい、その通りです。マイナスとマイナスのかけ算がこれでできましたね。
● 企業コストで考えれば さらにわかりやすくなる!
マリさん
すごい。現実に応用できましたね。わかりやすかったです!
堀口先生
もっと事例はありますね。
例えば、企業でも様々なコストがありますが、そのコストを減らすと結果的に企業にとってみればプラスに働きます。
わかりやすいように具体的に数字を入れてみましょうか。
売上100万円。コストが90万のとき、利益は10万円ですね。
数式に落とし込めば、
100万−90万=10万となります。
では、コストを5万円下げてみましょう。すると、どうなるでしょう。
100万−(90万−5万)となるわけです。
2種類計算方法があります。
100万−85万=15万
と、もう一つ。分配法則を使えば、
100万−90万−(−5万)
となるわけですね。この3つ目の項が−(−5万)となります。
−(−5万)=(−1)×(−5万)=+5万と解釈できますから、コストを下げると、利益に対してプラス5万円として働くことは理解できるのではないでしょうか。
マリさん
こんな風にマイナスとマイナスのかけ算がプラスになる事例を考えたことはありませんでした。
堀口先生
マイナスをかけるとなったとき、マイナス個ある、という風に解釈されるとよくわからなくなりますが、時間軸で考えてみたり、コストが減る、というシチュエーションを考えてみれば、現実的にも理解できますね。
堀口智之