2025年01月19日

分数の割り算はなぜひっくり返して掛けるのか? 子どもに聞かれてわかりやすく説明する方法

分数の割り算はなぜひっくり返して掛けるのか?
 子どもに聞かれてわかりやすく説明する方法
1/18(土) 東洋経済オンライン

分数の割り算は、分母と分子をひっくり返して掛け算にする。
それは知っていてもなぜかと聞かれるとうまく答えられない大人も少なくないのでは? 
 算数のなかでもややこしい「分数の割り算」とそれを学ぶ理由について、東大教授で渋滞学の第一人者である西成活裕先生と文系ライターの郷和貴氏の会話形式で解説します。

※本稿は『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく算数を教えてください!』から一部抜粋・再構成したものです。

■分数の割り算を攻略! 〜分数で割る〜

 西成先生:
分数の割り算は、四則演算の中では別格のラスボスです。
分数の割り算の解き方はわかっていても、その意味をちゃんと理解している人って、大人でもそう多くないと思います。

 郷さん:
仲間がいてよかった(笑)。

 西成先生:
たとえば「6 ÷1/2」を考えていきましょう。ガムをイメージしてください。「ガム6枚の中にガム1/2枚分のカタマリがいくつあるか」。

 郷さん:
ガム1/2枚分のカタマリ……。あ、ガムを半分にちぎるということですか! 

 西成先生:
はい。1枚を友だちと分けるとすぐに味がなくなるし、ちっちゃい風船しかつくれなくてイラっとするやつです(笑)。
ちょっと質問を変えましょうか。

 「ガムが6枚あります。それぞれ半分にすると何枚になりますか?」。

 郷さん:
え……。半分にするから2枚になる。それが6セットあるから、「6×2」で12枚ですか? 

 西成先生:
そうです。質問を変えましたが、実はさっきと同じことを意味しています。
つまり「6÷1/2=6×2=12」というわけです。
このように、1より小さい分数である数を割ると、割られる数よりも増えるんです。まずこのイメージをしっかり持ってほしいと思います。

 郷さん:
なるほど。

 西成先生:
ここで分数の割り算の計算式を紹介しておくと、「÷A/B」とあったら、「×B/A」に変換するだけ。
分数をひっくり返して、割り算を掛け算にするんです。

 郷さん:
そういえばアメリカの学校だと「keep,change,flip(そのまま、変える、ひっくり返す)」というフレーズをひたすら覚えさせられるって聞いたことがあります。

 西成先生:
詰め込み教育ですね(笑)。
たしかにそうですね。割られる数はそのままで、÷を×に変え、分数はひっくり返す。この手続きさえ覚えていれば分数の割り算は計算できます。

 1問、例題を解いてみますね。

■分数の割り算を攻略! 〜整数で割る〜

 郷さん:
分数を整数で割るときは? 

 西成先生:
整数を分数に置き換えて、ひっくり返して掛け算をすればOKです。

 西成先生:
このような解き方もあるし、「2等分されたものをさらに3等分する」という式の意味からちゃんと考えていくと、実は先ほどやった分数と分数の掛け算の話にいきつきます。つまり、2等分したものの1つを、さらに3等分したと。

 郷さん:
あ、そうか。「2×3」だから6等分ですね。

 西成先生:
正解です。

■分数の割り算を攻略!〜計算を真に理解〜

 西成先生:
計算式はいま教えた通りですけど、大事なことは「なぜ?」ですね。
仮に計算式を忘れても、自力で計算式を導きだせるように説明をします。

 まず、割り算は分数に変換できますよね。
割る数が整数だろうと分数だろうとその原則は変わりません。
だったら思い切って分数の形にしてみましょう。

 郷さん:
だいたんな発想! 

 西成先生:
「A÷B=A/B」ですから、「1/2÷2/5」を分数にするとこのような分数になります。

 郷さん:
分数の中に分数はあり? 

 西成先生:
全然ありです。こういう分数を連分数といいます。
真ん中の横線を長めに書くとちょっと数学者っぽくなります。
ちなみにこの状態で答案用紙に答えを書いても数学的には正解ですが、先生によっては怒るかもしれません(笑)。

 分母の2/5をすっきりした形にしたいと思います。
ここで、6年生で習う武器を伝授します。
「逆数」というものです。「A×□=1」の□にあたる数のことを、Aの逆数と呼びます。
Aが整数の場合、Aの逆数は1/Aです。なぜかわかりますか? 

 郷さん:
えっと……□を逆算すると、□=1÷Aだから。

 西成先生:
あるいはもっと単純に「Aに1/Aを掛けたら、約分でAとAが消えて1しか残らないから」と考えてもかまいません。

 そしてAが分数x/yの場合、Aの逆数はy/xです。分数をひっくり返したものですね。こちらも、x/yにy/xを掛けたらxとyが両方とも約分で消えて、1しか残らないからです。

■逆数を掛けると分子だけがすっきり残る

 西成先生:
では、改めて分母の2/5をよく見ます。
この連分数を一番すっきりさせる方法は、分母を1にすること。分母を1にすれば分子しか残りませんからね。では2/5を1にするにはどうすればいいのか。

郷さん:
あ、ここで逆数を掛けるのか! 

 西成先生:
そう。2/5の逆数は5/2です。
しかし、分母だけ掛け算すると意味が変わるので、分子にも同じように5/2を掛け算します。すると分母は1になり、「1/2×5/2」という分子だけが残ります。

 郷さん:
だから逆数を掛けるんですね!  ちょっと感動。

 西成先生:
ほかにもいろんな説明のしかたがありますけど、たぶんこれが一番納得感があると思うんです。

 郷さん:
「分母をすっきりさせるために逆数を掛けた」で説明できますからね。これを娘に説明する日が待ち遠しい(笑)。

 西成先生:
「逆数」とか「分数の性質」とか、教科書では断片的に知識を学んでいくことになるので、「これってなんの役に立つの?」と思う場面が多いと思います。
でも、そういう知識って、ロールプレイングゲームでいうアイテムや武器みたいなもので、分数の割り算のようなラスボスと戦うときに使うことになるんです。

西成 活裕 :東京大学先端科学技術研究センター教授
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 教育・学習 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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