「治療あきらめるのか」と絶望
高額療養費見直し、がん患者の訴え
1/28(火) 朝日新聞デジタル
患者が負担する月ごとの医療費の限度額を定める「高額療養費制度」の上限引き上げを政府が検討していることを受け、患者から不安の声が上がっている。
特に、高額な治療を長期にわたって受けざるをえないがん患者らは、「治療を続けられなくなる」と深刻な懸念を抱いている。
52のがん患者団体で作る、全国がん患者団体連合会(全がん連)が1月17〜19日に緊急に行った「高額療養費制度の負担上限額引き上げ反対に関するアンケート」には、3日間で患者やその家族、医療従事者ら3623人の声が寄せられた。
高額療養費制度は、公的医療保険の「セーフティーネット」として機能している。
高額な治療を受け、窓口での支払いが高くなっても、上限があることで、自己負担を一定額に抑えることができる。
月々の自己負担の上限は、その人の年齢や所得区分によって決まる。
政府は、増え続ける社会保障費の伸びを抑えるため、2025年度当初予算案で、高額療養費制度を見直し、自己負担限度額の計算に使う基礎的な部分の金額の引き上げを盛り込んだ。
政府案では、25年8月に所得区分ごとに2.7〜15%を引き上げ。
さらに、26年8月と27年8月にも区分を細分化して引き上げる。
最終的には、中間的な収入の人で現行から5万8500円増の月13万8600円となる層がある。
患者への影響は大きい。
全がん連が行ったアンケートの中で、
がん患者の30代女性は「突然の病で働くことができなくなり、高額療養費制度に助けられているが、治療費は毎月限度額いっぱいの支払いです」と訴える。
生活費も含めれば夫だけの収入ではままならないため周りからお金を借りていると明かす。
「私の医療費が高くなってしまえば子どもの学費も出してあげられない」とつづる。
全がん連の天野慎介理事長は、「近年、長く高額な薬を飲み続けることを前提とした治療が増えている。
こうした治療は続けなければ長期生存がかなわない。
高額療養費が引き上げられれば、患者への影響は甚大で、生活が成り立たなくなったり、治療をやめたりするケースが出てくるおそれがある」と話す。
全がん連は昨年末、負担上限額引き上げの軽減や影響の緩和策を求める要望書を厚生労働相らに提出。アンケートも今後、厚労相に提出予定だという。
朝日新聞社