森永卓郎さんが最期まで猛批判していた”日本をダメにした”竹中平蔵の「大罪」と「インチキ」
2/17(月) 現代ビジネス
今年1月28日、経済アナリストの森永卓郎氏が死去した。
原発不明がんと闘いながらも、亡くなる直前までメディアに出演し続け、世界経済の行方に多くの警鐘を鳴らしてきた。
「AIバブルは崩壊する…」「日経平均はこれから大暴落する…」
彼がこう語った背景には一体何があるのか。
そして残された私たちは、この先行き不透明な社会をどう乗り越えていくべきなのか。
激動の時代を生き抜くための戦略と覚悟とは。
森永卓郎氏と、息子の康平氏がいまの日本のさまざまな病巣についてガチンコで語り合った『この国でそれでも生きていく人たちへ』より一部抜粋・再編集してお届けする。
『この国でそれでも生きていく人たちへ』連載第8回
『故・森永卓郎さんが「ろくでもないビジネス」と喝破していた「エリート集団」の「職業の名前」…そのヒドすぎる「嘘」と「詐欺」』より続く。
くだらない人々
「ハゲタカ」はとにかく高収入だ。30代で億単位の報酬を得る場合もある。
その億単位の報酬を何に使っているかというと、実のところ大したことに使っていない。
高級レストランで高級ワインを飲むとか、愛人を作る、高級外車に乗る、クルーズ旅行に出かけるとか、そんなところだ。
日本ではあまりないが、海外の投資銀行では、ドラッグに手を出す人間もいると聞く。
要するに、くだらない人間ばかりだということだ。
そういう人間として微塵も尊敬できない、教養のかけらもない人間たちが、高い報酬を得ているのみならず、政府に接近して政策決定に影響を及ぼしているのだ。
ハゲタカと金融庁の出来レース
これがいまの日本の偽らざる姿なのだが、こうした実態はまだまだ知られていない。
秘密保持契約を結んでいるため、見聞きしたことを喋ってくれる人がいないせいだろう。
私は小泉政権下で竹中平蔵氏が断行した不良債権処理の一部始終を知っているが、当時、外資系の投資銀行、いわゆる「ハゲタカ」はインチキばかりやっていた。
金融庁と手を組み、日本の銀行業界を追い詰めるほうに加担していたのだ。
栃木県の足利銀行は2003年に破綻している。私はその時、たまたま所用があって足利銀行を訪ねていたが、行員に聞くと、金融庁がいきなり乗り込んできて、片端から不良債権認定していったそうだ。
融資先のゴルフ場をゴールドマン・サックスに売却する計画も周到に準備されていたという。
金融庁は「ハゲタカ」とグルだった。
金融庁が不良債権だと認定した資産は、二束三文で猛烈なスピードで売却されていった。要するに「出来レース」だったわけだ。
外資系投資銀行が「ハゲタカ」と呼ばれるようになったのは、こうした経緯によるものだ。
竹中平蔵氏が進めた「不良債権処理」とは、マグロの解体ショーのようなものだった。
「不良債権を大量に抱える、倒産寸前の会社を整理した」というよりは、「健全に経営している会社まで潰してハゲタカに売り渡した」と言うほうが正しい。
腐ったマグロを処理したというより、美味しいマグロを切り売りしたので、「ハゲタカ」とそのお友達だけが美味しい思いをしたわけだ。
とくに狙われたのは、資産をたっぷり持っていた建設、流通、不動産業だった。
ハゲタカと政府は癒着している
私が大学を卒業したのは1980年だが、そのころの日本は世界でもっとも外資系企業が少ない国だった。
だが、いまや日本でも外資系企業ばかりになってきている。
都心のビルを見ても入居しているのは外国企業ばかり。
政府も外資を規制するどころか、積極的に誘致している。
最近、政府が「政策保有株はダメだ」と言い出したが、また日本企業を外資に売り渡すのではないかと懸念している。
政策保有株とは、大企業が付き合いで持っている株のこと。
日本には関係の深い会社同士で株を保有しあう慣習があったが、これは投資ではなく、経営の安定が目的だった。
ハゲタカに株を買い占められないように、日本企業同士で株を持ち合っていたのだ。
ただ、いまになって、「不効率な慣習だから政策保有株は売りなさい」と言い始めた。
要するに、ハゲタカが日本企業を買いやすくなるということだ。
結局のところ、日本でハゲタカが跋扈しているのは、政治と癒着しているからだ。
中央官庁の政策を議論している審議会のメンバーを見れば、グローバル企業関係者や、彼らとビジネスでつながっている論者ばかりがズラッと並んでいる。
こうした仕組みを通じて、ハゲタカの意見ばかりが政策に拾われる。
その一方、国民の意見はまったく反映されない。
日本がダメになるのは当然というべきだろう。
『「農家をバカにする」政治家と庶民との隔たり…森永卓郎さんが「日本の馬鹿政治家」に最期の伝えたかったこと』へ続く
「農家をバカにする」政治家と庶民との隔たり…森永卓郎さんが「日本の馬鹿政治家」に最期の伝えたかったこと
森永卓郎氏と、息子の康平氏がいまの日本のさまざまな病巣についてガチンコで語り合った『この国でそれでも生きていく人たちへ』より一部抜粋・再編集してお届けする。
『この国でそれでも生きていく人たちへ』連載第9回
『森永卓郎さんが最期まで猛批判していた“日本をダメにした”竹中平蔵の「大罪」と「インチキ」』より続く。
農家をバカにする政治家
日本の政治家は、急に馬鹿なことを言い出すことがある。
政治家たちの感覚が、一般庶民の問題意識とずれてしまっているのだ。
そのことを象徴するのが、静岡県の川勝平太元知事の暴言事件だった。
2024年4月、川勝元知事が県庁職員に「毎日野菜を売ったり、牛の世話をする仕事とは違い皆さんは知性が高い」などと発言して辞任に追い込まれたが、そうした発言が出てくるのは、富裕層やエリート層とばかり付き合っていて、現場を知らないことが原因だろう。
私は農家の仕事も、県庁職員の仕事も、どちらもやったことがあるが、農家のほうがはるかに知的な作業をしている。
農業が相手にするのは大自然だ。だから、農業ではいつ何が起きるかまったく予想がつかない。
県職員は知らない農業の過酷さ
私の畑はそんなに広くはないが、それでも毎日が「自然との戦い」だ。
風や大雨は日常茶飯事だし、虫や病気も襲ってくる。
カラスやタヌキ、アライグマといった害獣もやってきて、作物を食べていく。
農業とは、ありとあらゆる敵との知恵比べにほかならない。
とくにカラスは頭がいいので、スイカにカラスよけのネットをかけていても、地面に頭を突っ込んでネットを持ち上げ、隙間から侵入して食べていく。
しかも、スイカが一番おいしいときを狙ってやってくるのだ。
日本の法律では、勝手にカラスを殺してはいけないことになっている。
だからカラス対策としては追いかけ回して追い払うしかない。
私の場合、農業1年目にできたスイカは、ほとんどカラスに食われてしまった。
2年目はかなり追い払ったが、3年目はカラスがリベンジする番だった。
どんどん知恵をつけていくので、追い払うだけでもひと苦労なのだ。
対する県庁職員の仕事といえば、先を予想できる単純作業が中心だ。
上司の顔色を窺い、ルーチンワークをこなしているだけの職員も多いだろう。
そんな県庁の人間に、農家を馬鹿にする権利があるとは思えない。
そもそも県庁職員が食べていけるのは、農家が食料を作ってくれるおかげだ。
自分は誰のおかげで食べていけるのか、一度考え直したほうがいいのではないだろうか。