「お金はあくまで手段」と語る僧侶に学ぶ「貯金じまい」「家計簿じまい」で心豊かに暮らす考え方
4/17(木) 介護ポストセブン
『60歳を過ぎたら面倒ごとの9割は手放す』(アスコム)を上梓した、真言宗 密蔵院住職の名取芳彦さんは、家事や片づけをうまく手放すことで、自分の時間が増えていくと話す。
60歳を過ぎたら、家事や片づけなど自分の時間を奪う習慣を減らし、より楽に楽しく生きるコツを教えてもらった。
家事が嫌だと思う理由を考えてみることから
嫌だと思うことをしなければならないのは心が乱されてしまうもの。
家事が面倒で嫌だと感じる人に対して名取さんがすすめているのは、「私はどうして家事が嫌なのだろう」と考えることだ。
自分ばかりやっているのが納得できない、家事のせいで自分の時間が取れないなど、何が嫌なのかに気づくことができれば対策をとることができる。
「自分ばかりやっているのが悔しいのなら、家族会議を開き、家事の分担について意見を出し合ってみるといいかもしれません。
自分の時間が取れないなら、同時に二つのことをやったりして、効率性をアップさせる手もあります」
家事そのものが面倒なら、手を抜くのがおすすめ
そもそも家事が面倒なのであれば、「どこかで手を抜いてしまいましょう」と名取さん。
隅をつつくような完璧さを求めるから面倒になっていくため、自分で「やって気持ちがいい」と思えるもの以外は手を抜いて、心の負担を軽くすることをすすめている。
「どんなことでも、やってみないとわからないことがあります。
家事を手抜きしてみたら、百点を目指さなくても問題ないことがわかるでしょう」
物を減らして片づけ自体も減らす
長期間同じ家で暮らしていると、自然と物が増え、片づけの頻度や探し物の頻度も増えていく。
片づけの時間がもったいない、解放されたいと感じたら、「まず物を減らしましょう」と名取さん。
物が減れば、片づける手間も減っていく。
「物にあふれた暮らしは、探し物は見つからないし、片づけないと部屋は散らかる一方です。
それに費やす時間と体力にうんざりしたら、探し物をなるべくしない生活、片付けを極力しない生活をしましょう。
それによって、自由に使えるあなたの時間があちこちから生まれてきます」
「貯金じまい」で人生を楽しむ
老後のためにもがんばって貯金をしてきた人も多いだろうが、人生を楽しく生きていくためには、貯金をいつ使うのか考えることも大切だ。
お金を使って貯金が減ることに不安を感じる場合は、財布や貯金のお金ばかりに目を向けないようにするのがいいという。
「何かを買うのは、お金と品物を等価交換しているということです。
レストランでは、おいしいお料理に舌鼓を打つ代わりにお金を払います。お金を払ってサービスを受けるのも等価交換で、結果的にどれもプラス・マイナス・ゼロ(不増不減)。“何かの代わりに払うお金”、それが代金の意味です」
お金を使って笑顔の多い日を増やす
お金はあくまで手段であり、目的は、使ったときにはじめて達成される。手段であるお金をいくら貯めても、使わないと意味がないという名取さん。
「延々と先のばしされる“将来”のために貯金するのは、そろそろ終わりにしませんか? 他人からは無駄と思われるものでも、等価交換して、笑顔の多い日を増やしましょう」
家計簿じまいをしてどんぶり勘定でおおらかに
しっかり貯金をしてきた人なら、家計簿をつけている人も多くいるだろうが、名取さんは家計簿じまいをすることもすすめている。
家計簿でお金の流れを可視化し、お金を管理することは大切だが、家計簿を続けてきたおかげで、身の程を知り、身の丈に合わせた暮らしができるようになっているのであれば、家計簿の役割は終わったと言えるからだ。
「昭和の時代の八百屋さんが、店内に籠をぶらさげてお金の受け渡しをしたり、平気でおまけをくれたりしていたように、これからの人生は大雑把などんぶり勘定でおおらかに生きても、お天道様はニッコリ笑って見守ってくれます」