憲法記念日とは?由来や意味、日本国憲法の基礎知識を紹介
2025/04/23 旅の+one
ふと、カレンダーを見ると、5月3日は「憲法記念日」とある。連休に埋もれてしまい、気付かずに過ごしてしまう人が多いかもしれない。
そもそも憲法って?なんとなく理解した気になっているが、きちんと説明するのは案外難しい。
社会人の常識として、ここはしっかり押さえておきたいものだ。
今回は、憲法記念日の由来や今さら聞けない「日本国憲法」の概要をできるだけわかりやすく解説する。ぜひ参考にしてみてほしい。
この記事では
・憲法記念日の由来や歴史
・憲法と法律の違い
・日本国憲法の基礎知識
などを紹介する。
本当は11月3日だった?
実は本来、日本国憲法は、昭和21年(1946)11月3日に公布されたものだ。
その施行をいつからにするか?当時の閣議内で審議が行われ、さまざまに議論された結果、5月3日が施行日とされた。
その後、新憲法に基づく新たな国にふさわしい祝日を定めるために「国民の祝日に関する法律」の審議が行われ、5月3日を憲法記念日とする法案が可決。
この日の祝日の趣旨は「日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期待する」とある。
では、11月3日は?というと、これは「文化の日」となっている。
もともと、この日は昭和初期まで存在した明治節という祝日で、明治天皇の誕生日でもある。
5月3日という方針に決められた理由の一つに、記念日の重複が好ましくないとされたというものがある。
ちなみに文化の日の趣旨は「自由と平和を愛し、文化をすすめる」。
「憲法週間」にはイベントも
毎年5月1〜7日は憲法週間として、全国各地の裁判所ではさまざまな活動やイベントが行われる。
その内容は、憲法の精神や司法の機能を国民に理解してもらうことや国民主権、平和主義、基本的人権の尊重など、日本国憲法の意義を再確認するのが目的だ。
私たちの生活の身近に感じにくい法律関係だが、選ばれた国民が刑事裁判に参加する裁判員制度も始まっている。
いつ何時、その日がやってくる可能性があるかもしれない。
その時になって慌てないように、日頃から法律に親しんでおこう。
なお、裁判所で行われる民事裁判の口頭弁論や判決の手続き、刑事裁判の公判、判決手続きは、憲法週間を問わず、誰でも傍聴することができる。
事前申し込みは必要ないが、傍聴希望者が多いときは抽選が行われる。日程や傍聴手順などは、裁判所のサイトでチェックして。
憲法と法律はどう違う?
社会のルールを制定する「憲法」と「法律」。どちらもニュースなどでよく耳にするワードだが、一体何が違うのだろうか?それぞれの定義を簡単に解説していこう。
憲法とは?
憲法とは、わかりやすく言えば国家の礎となるグランドデザインと言うべき基本的な規範だ。「国家がどうあるべきか」「国民の権利や義務は何か」などを定め、最高法規として法のトップに立つ。
主権者はあくまでも国民。日本国民の基本的人権を保障し、確保するために、国民が「国家を縛る」ことが大きな目的だ。
「縛る」と言うと少々わかりづらいかもしれないが、権力の暴走を国民が防ぐということ。日本国憲法が「憲法」たるゆえんだ。
法律とは?
法律は、社会秩序を守るために、国家が国民を縛る規範のことだ。私たちは憲法で基本的人権が保障されているのだが、だからと言ってルールを守らずに好き勝手生きていいというものではない。
そのことが、他の人の自由や権利を奪うことだってある。そうならないために、強制力をもって止めるのが法律の大きな役割。
法律は「民事法」「刑事法」「行政法」など、各分野で細分化、網羅されている。
国会によって制定するのが決まりで、憲法の内容に反するものは制定できない。
なお、国会の最も重要な仕事の一つが法律を作ること。内閣または議員から法律案が提出され、審議が行われる。重要な案件の場合は、本会議で質疑応答などが行われ、採決される。衆参両議院で可決されると法律として成立し、公布される。よって、時代に即した新たな法律が、毎年生まれたり、更新されたりしている。
今こそ見直したい、日本国憲法
日本国憲法の内容については、社会科の授業で習ったかも?という記憶をぼんやりと持っている人が多いかもしれない。
そこで今一度、日本国憲法について簡単におさらいしてみたい。
日本国憲法は、第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍総司令部)の指導のもとに作成され、制定、公布された。
「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」が、日本国憲法を特徴付ける三原則だ。
11章103条からなり、大きく分けると人権規定、統治規定、憲法保障の三つで構成されている。
国家権力を制限し、人権を尊重することを最も重要な価値観として各章が定められている。
国民主権
日本国憲法は、第一条に国民主権を定めている。字にあるとおり、国民に主権がある、ということだが、一体どういうことなのか?
主権とは、国を統治する権力のことをいう。明治時代に発布された大日本帝国憲法では、議会制こそ定められていたが、統治権を持つ主権は天皇にあることが明記されていた。
それが戦後、日本国憲法の制定、公布によって統治権が国民にあると定められたのだ。
国を統治する権力とは、社会を安定して持続させるための法律作りや、法律を執行する力のこと。本来なら主権者である国民が行うべきだが、それを行うことができないので、私たちの代表として国会議員が行う。
もし、彼らが国民の代表として、適切な権利を行使せず、ふさわしくないとすれば審判を下すことも。それが選挙。だからこそ、私たちは選挙に行き、投票を行う。主権者の役割として、投票はとても重要な行動だということを肝に銘じておこう。
基本的人権の尊重
人は生まれた以上、人間らしい基本的な生活をする権利を持っている。これが「基本的人権」の考え方だ。
日本国憲法では、第3章にある「国民の権利及び義務」の条文の第11条で「誰からの侵害も受けない永久の権利として、すべての国民にこれを保障」している。また、第14条では「すべての国民は、法の下に平等でありいかなる差別も受けない」とも。
基本的人権の権利には次のようなものが含まれる。
・自由権……思想、精神、宗教、学問、表現、職業選択、経済活動の自由など
・参政権……選挙権、被選挙権(政治家として立候補すること)、国民審査権(最高裁判所の裁判官を選ぶ)、国民投票権など
・社会権……生存権(健康で文化的な最低限度の生活)、教育、勤労の権利など
・平等権……差別的な扱いを受けない権利など
・請求権……裁判を受ける権利、国家賠償請求権や刑事補償請求権など
また、時代に即した新しい権利なども制定されている。例えば、私生活上の事柄を公開されないための「プライバシーの権利」、よりよい環境で暮らすための「環境権」、情報公開を求める「知る権利」などがある。
平和主義
現在でも報道などで目にしたり耳にしたりすることも多い第9条は「平和主義」を規定したもので、第二次世界大戦の反省から、二度とこのような惨事を繰り返さないために作られた。
「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とあり、「戦争の放棄」と「戦力の不保持」、「交戦権の否認」を定めている。