最新のコロナワクチン、本当に効果はある?―2025年の大規模研究から分かること―
忽那賢志 感染症専門医
10/12(日) (提供:イメージマート)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが始まってから数年が経ち、ウイルスの重症度も低下したと感じる中で、「毎年コロナワクチンを接種する必要はあるのだろうか?」と疑問に思う人が増えています。
実際に、2024年度の日本の高齢者の新型コロナワクチン接種率は推定で21.7%でした。
このような状況の中で、最新のコロナワクチンは本当に意味のある予防効果を提供してくれるのでしょうか?
この記事では、2025年に発表された大規模な研究結果をもとに、この疑問に答えていきます。
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1. 科学者たちはどうやってワクチンの効果を調べたのか?
この研究は、専門的な言葉を使わずに説明すると、非常に賢い方法でワクチンの純粋な効果を検証しようとしました。
誰を対象にした研究?
この研究は、米国の退役軍人、合計295,971人を対象に行われました。これは非常に大規模な集団です。
どうやって比べたの?
研究者たちは、対象者を次の2つのグループに分けて比較しました。
2024-2025年版のコロナワクチンとインフルエンザワクチンを同じ日に両方接種したグループ、インフルエンザワクチンのみを接種したグループ
この方法の優れた点は、どちらのグループも「少なくともワクチンを一つは接種しよう」と考える、健康への意識がある程度高い人々で構成されていることです。
これにより、単にワクチンを接種する人としない人を比べるよりも、コロナワクチンがもたらす上乗せの効果をより明確に特定するのに役立ちます。研究チームは、参加者たちを6ヶ月(180日間)追跡し、その後の経過を観察しました。
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2. 研究で分かったこと:ワクチンの具体的な効果
この研究で明らかになったのは、最新のワクチンが特に重症化を防ぐ上で効果を発揮するということでした。
重症化を防ぐ効果 6ヶ月間の追跡調査で、ワクチン接種によるリスクの減少率(ワクチン有効率)は以下の通りでした。
救急外来の受診リスク: 29.3%減少 入院リスク: 39.2%減少死亡リスク: 64.0%減少
「1万人あたり」で考えると、どのくらいの効果? パーセンテージだけでは効果がイメージしにくいかもしれません。
そこで、実際に「何人の重症化を防いだか」という視点で見てみましょう。
インフルエンザワクチンのみを接種した人1万人と比べて、コロナワクチンも接種した人1万人では、防ぐことができた人数は以下の通りです。
救急外来の受診: 1万人あたり約18人の受診を防ぐ入院
: 1万人あたり約7.5人の入院を防ぐ死亡
: 1万人あたり約2.2人の死亡を防ぐ
これらの数字は小さいと感じるかもしれませんが、それは現在のコロナウイルスの感染症自体の重症度が全体的に低下していることを反映しています。
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3. ワクチンはどんな人に効果があったのか?
この研究では、ワクチンの予防効果が特定のグループだけでなく、非常に幅広い人々で見られることが確認されました。
具体的には、以下の様々な条件の人々において、重症化リスクが低くなる関連が見られました。
年齢層 (65歳未満、65〜75歳、75歳以上)
持病の有無 (心血管疾患、脳血管疾患、慢性腎臓病、慢性肺疾患など)
免疫状態が正常な人と免疫機能が低下している人
この結果は、様々な健康状態や年齢の人々に対して、このワクチンが有効であることを支持しています。
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4. この研究結果をどう受け止めれば良いか?
この研究結果を正しく理解するために、いくつかの注意点と、この研究の信頼性を高める強みを知っておくことが重要です。
知っておくべき注意点この研究は、ワクチン接種と重症化リスク低下の間に強い「関連」があることを示しましたが、厳密な意味での因果関係を証明するものではありません。
それは、参加者をランダムに割り振るタイプの研究ではないためです。
研究対象は主に高齢の白人男性である米国の退役軍人でした。
そのため、若年層、女性、アジア系やヒスパニック系など、異なる人口集団における効果は、これと同じであるとは限りません。
コロナワクチンを接種する人は、マスク着用や人混みを避けるなど、もともと感染対策への意識が高い可能性があります。
研究ではこうした行動の違いを完全に調整することはできないため、結果に影響を与えた可能性が残ります。
この研究の強み この研究は、非常に大規模で詳細な医療データを用いており、比較するグループ間の条件をできるだけ公平にするための高度な統計手法が使われています。これにより、結果の信頼性は非常に高いものとなっています。
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結論:最新情報から考える、これからのワクチンとの付き合い方
米国の退役軍人を対象としたこの大規模な研究は、2024-2025年版の新型コロナワクチンが、接種後6ヶ月間にわたって救急外来の受診、入院、そして死亡といった深刻な事態に陥るリスクを減少させることと関連していることを示しました。
防ぐことができた人数の絶対数は小さいものの、この研究結果は、パンデミックが新たな段階に入った現在において、私たち一人ひとりがワクチン接種について情報に基づいた判断を下すための、貴重で新しい科学的根拠を提供してくれます。
参考文献:
Association of 2024–2025 Covid-19 Vaccine with Covid-19 Outcomes in U.S. Veterans. N Engl J Med. 2025;393(15):1–12.
YouTubeチャンネル:くつ王アカデミア「最新の新型コロナワクチンは本当に意味があるの?」
※ 本記事は上記の参考文献を元にNotebookLMが生成した文章を筆者が加筆修正したものです。

