2025年11月27日

和田秀樹「年齢を重ねると感性が衰える」は誤解。評判の新作映画でも心が動かないのは、感動する力がなくなったからではなく…

和田秀樹「年齢を重ねると感性が衰える」は誤解。評判の新作映画でも心が動かないのは、感動する力がなくなったからではなく…
11/26(水) 婦人公論.jp

大切な人やものを失ったとき、人は喪失感を抱くものです。
高齢者専門の精神科医として、多くの患者やその家族と向き合ってきた和田秀樹先生は、「喪失は誰もが避けては通れないものであり、喪失感を抱く状況は、人生が長くなればなるだけ増えるもの」と語ります。
そこで今回は、和田先生の著書『喪失感の壁-きもち次第で何があっても大丈夫』から抜粋し、実際の相談事例とともに、さまざまな喪失感とどう向き合い、どう乗り越えていくかの具体的なヒントをご紹介します。

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◆話題の新作映画の面白さがわからない

もともと映画が好きで、洋画も邦画もジャンルを問わず観てきましたし、昔は映画雑誌を読んだり、友人と語り合ったりもしていました。

定年後は時間もできて、シニア割引もありがたく使わせてもらいながら映画館に通っています。
そして、コロナ禍で外出を控えるようになった頃、孫が「便利だよ」と配信サービスを教えてくれたのをきっかけに、家でも映画やドラマを観るようになりました。
最初は映画館で見逃した話題作や昔の名作を見返すのがとても楽しく、これはこれでいいものだなと思っていたのですが。

最近は、評判の新作を観ても、どうもピンとこないことが増えてきました。
「これが面白いのか?」と首をかしげながら観終わることが増え、時には途中でやめてしまうこともあります。

かつてなら感動して涙が出たような場面も、心が動かなくなっているように感じ、「自分の感性が衰えてしまったのでは」とショックを受けています。

映画サイトなどで感想を読むと「最高!」「泣いた!」という声が並んでいて、世間とのズレを感じることもあります。
これは年齢のせいなのか、それとも感性が衰えて時代の流れについていけなくなっているのか……。

映画を楽しみにする気持ちはいまもあるのですが、「また期待外れだったら」と構えてしまう自分もいて、少し寂しい気持ちです。 (70代前半・男性)

◆感性が衰えたのではなく、目が肥えただけ

年齢を重ねると、「昔のように感動できない」「新しいものが楽しめなくなった」と感じることがあります。
そのため「年齢を重ねると感性が衰える」という俗説がまかりとおっていますが、私は誤解だと思っています。
感性は変わっていない。
ではなぜ楽しめないかというと、知識と経験が増えたために、面白さのハードルが上がっているのです。

お笑いがわかりやすいのですが、初めて見たときは大笑いをしたネタも、2度、3度と回数を重ねるとそこまで笑うことはなくなりますよね。

あるいは、実際に見ている新しいものが、単につまらない可能性もあります。

以前、まだ十代の娘にせがまれてなんばグランド花月に行ったとき、70代、80代のお客さんがゲラゲラ笑っていました。
では子どもにはウケないかと言ったらとんでもない、もっと笑っているわけです。

なんばグランド花月は客の年齢層が高めなので、芸のレベルも高いんですよ。

私は常々、M-1グランプリの審査員を全員80代にしたら、芸人たちのレベルが相当アップすると思っています。
箸が転んでも笑う年齢を基準にして相手にしていたら、芸人の成長もそこで止まってしまいます。

映画に関しても同じです。

若い頃に観た映画が印象に残るのは、「こんな表現があるのか!」と新鮮に感じた要素も大きいはず。
同じ映画でも、何百本も映画を観てきた人にとっては、よくある展開だとか、このパターンは昔の作品の焼き直しだな……と感じてしまうこともあります。

これは感動する力がなくなったわけではなく、自分の目が肥えてきたんですね。

◆映画の作り方が変化している可能性も

また、多くの名作に触れてきた人ほど、最近の作品が薄っぺらに感じる現象もあるようです。

こちらに関しては、映画そのものが変化している可能性もあります。

昔の映画は脚本や演技重視の作品が主流でしたが、現在は映像技術やテンポが優先される傾向があります。
短時間で手軽に楽しめることが求められ、深みのあるストーリーが減っているという指摘もあります。

また、若い世代向けに作られる作品が多いため、人生経験豊かな中高年層から見ると、ズレを感じることもあるでしょう。

そうではない映画ももちろんありますから、嘆くことなく、自分の経験知と感性を信じて、自分のレベルに合った良い作品を追求したほうがいいと思います。

◆新作も旧作もどんどん観ていきましょう

せっかく配信サービスを契約しているのですから、気軽に鑑賞できるメリットを活かして、いままではあまり観なかったジャンルや、自分向きではないと敬遠していた作品も、どんどん観ていくのはいかがでしょうか。

合わないものは、途中で観るのをやめてしまえばいいんです。

映画だけではなく、昔好きだったドラマを観返すのもいいと思います。
私はいつもは、「前頭葉に刺激を与えるためになるべく新しいものに触れましょう」とお伝えしています。
けれど私自身、山田太一さん脚本のドラマなどは、何度も観たけれどいまでも観返しては新たな感動を得ています。

「楽しみにしていたのに、期待外れでがっかりした」と感じるのは、期待値が高すぎるのかもしれません。
「大絶賛されていたから、すごく面白いはず!」と期待値が上がりすぎると、面白い作品でも物足りなく感じるもの。
過去に観た名作と同じ感動を求めてしまうと、さらにギャップがあるかもしれません。
思い出補正で実際以上に美化されている可能性があるのも厄介です。

新しい作品を観るときは、いったん世間話のネタとして割り切って、ハードルを下げてみるのもいいかもしれません。

期待外れでも構わない、という気軽なスタンスに変えると、もっと楽しめるようになるかもしれませんよ。

※本稿は、『喪失感の壁-きもち次第で何があっても大丈夫』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

和田秀樹
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 趣味・好きな事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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