【墓じまいトラブル】「お気持ちが足りない」高額の離檀料を要求する住職を一変させた、54歳男性の「ひと言」
2/12(木) ダイヤモンド・オンライン
少子高齢化や地方の過疎化を背景に、「墓じまい」は多くの方々にとっても避けて通れない課題となっています。
しかし、墓じまいは円満に進むケースばかりではありません。
時には、長年付き合いのあった寺院の住職と決定的に折り合いが悪くなり、精神的に追い詰められた末に「脱出」を図るケースも少なくないのです。
本記事では都内のある専門学校に教員として勤務する佐藤誠さん(仮名・54歳)が直面した、代々の菩提寺との絶縁から公営墓所への改葬を決意するまでの苦悩について取材しました。(取材・構成/ライター 岩田いく実、監修/長岡行政書士事務所代表 長岡真也)
● 「お気持ちが足りない」 繰り返される住職の説教
事の始まりは、約3年前に中部地方のある県で暮らしてきた佐藤さんの父である豊さん(仮名・80歳)が肝臓がんで亡くなったことでした。
それまで佐藤家の法要などはすべて母の友里子(仮名・78歳)さんが仕切っていましたが、大切な夫を失い憔悴した様子が見られるように。
そこで、都内に暮らす佐藤さんが長男として、四十九日の法要のタイミングから県内にある代々の菩提寺との窓口を担うことになりました。
「最初から違和感はありました」と佐藤さんは振り返ります。
父の四十九日法要の際、疲れが見える母にはあえて相談せずに、お布施として10万円をお渡ししたところ、「供養するお気持ちが足りない」と言われたのです。
佐藤さんは事前にインターネットで相場を調べ、勤務先の同僚にも相談していました。
慌てた佐藤さんは、母にどのぐらいが適切なのかと相談したところ、佐藤さんがいないところでこっそりお布施を渡したようでした。
これまでも母は促されるままに寄付もしていたようです。
法要後、住職は佐藤さんら親族に説教を始め「最近のご家族は先祖への敬意が足りない」「若い世代がもっと頻繁にお参りに来ないといけない」と1時間以上も繰り返したのです。
● 憔悴する母に何度も寄付を要求 拒否すると「それでは納骨は難しい」
四十九日の法要後しばらくして、佐藤さんの携帯電話には住職の妻から頻繁に電話が入るようになりました。
「お母様はお元気ですか。先日は本堂の修繕についてお話ししたのですが、まだお返事がいただけていなくて……」
電話の内容は母を気遣う内容かと思ったものの、本題は「寄付」の催促でした。
この頃から母は寝込むことが多くなり、電話にも出られなくなったのです。
父の納骨も母の体調に合わせるために、親族で話し合った結果一周忌に調整するほどでした。
母に代わり、佐藤さんが対応すると「お父様が亡くなってから、佐藤家の対応には疑問を感じています。本堂の修繕に寄付をすることは、お父様への供養になるのですが」と言うのです。
日々教壇に立ち、多忙な佐藤さんは次第に寺院とのやりとりに大きなストレスを感じるようになりました。
「今の母に寄付金を用意する余裕はありません。
父を失い精神的にも追い詰められています。
少し電話も控えていただけませんか」佐藤さんが勇気を振り絞って寺院を訪ね、住職に伝えると「それではお父様の納骨も難しいですね」と言い放ちました。
● 寺院が見せる強硬姿勢 発行されない「埋葬許可証」
母をこのストレスから解放し、自分たちの代でこの寺との縁を切ると佐藤さんは決意。
親族の同意も取り付けた後、都内の自宅近くにある公営墓地へ遺骨を移す「改葬」の手続きを調べました。
しかし、改葬には現在の菩提寺が発行する「埋葬許可証」が必要だったのです。
意を決して住職に離檀を申し出ると、埋葬許可書をくれるどころか、待っていたのはさらなる強硬姿勢でした。
「勝手にいなくなるのは困る。代々の先祖を供養してきた寺への不義理だ。やめるというなら、これまでの管理料の精算と、墓地の永代使用権の返還費用を払ってもらう」と言うのです。
佐藤さんは、墓じまいに詳しい行政書士や改葬の専門業者、消費生活センターなどに相談。
「さまざまな専門家に相談しています」と伝えたところ、住職はトラブルを避けたくなったのかお気持ちのみでよいと言い、最終的には埋葬証明書も作成され、一般的な「お礼」としての金額を包むことで離檀できました。
● 電話一本で離檀を迫る門徒も… 寺院が「高額な離檀料」を提示する理由
寺院と折り合いがつかない、墓じまいがうまく進まない――こうした悩みをあらかじめ防ぐためには、どのような準備を進めておくとよいでしょうか。
そこで、墓じまいの実務に詳しい長岡行政書士事務所の長岡真也行政書士に聞きました。
◆◆◆
――今回の事例のようなトラブルは多いですか。
非常に増えています。
特に都市部にお住まいの50代・60代の方が、地方の菩提寺に対して改葬を申し出るケースは多いですね。
背景には、まず門徒(檀家)側の事情としては元々地方に住んでいた親族が都心部に出てきて、それで代を重ねるごとに寺院との付き合いが希薄化していき、寺院への信仰心や代々続いていた「しきたり」をおろそかにすることで、寺院との関係が悪くなっていることが挙げられます。
そこで墓じまいを考えるのですが、「お金さえ払えば離檀できて当然だ」と割り切りすぎて、事前に寺院側へ相談することなく、突然、電話一本で離檀を迫るケースもあります。
一方で、寺院側も経済的な危機感があります。
檀家が減ることは、寺にとって継続的な収入源を失うことを意味します。
そのため、高額な離檀料を提示するケースがあります。
「法的な権利」と「宗教的な礼節」のバランスが崩れたときにトラブルが起きやすくなるのです。
● 円満な墓じまいの秘訣 絶対やってはいけないNG行動は?
――実際に墓じまいを検討する場合はいつごろから検討するとよいでしょうか。
墓じまいをする絶対的なタイミングというのはないのですが、私に相談が来るケースとして多いのはやはり「相続」のタイミングですね。
例えば、今まで墓守をしていた父が亡くなった、残された子としてはすでに都心部に出ていることもあり、遠方でとてもじゃないけどこの先々の維持ができないと考えるわけです。
そうしたタイミングに子ども同士で話し合いをすると「じゃあこの際…」という流れで進むケースもあります。
また、墓守をしている親が終活の一環で生前に墓じまいをするケースもあります。
こういったときは、比較的寺院と良好な関係を築かれている場合もあるので、納得のいく墓じまいになることが多いです。
相続や遺言書作成等の終活をしているタイミングだと、墓じまいをするきっかけがあるために検討しやすいですね。
墓じまいの大まかな流れは、以下のとおりです。
(1) 墓地管理者(寺院・霊園など)へ連絡し、改葬許可申請書の「埋葬(埋蔵・収蔵)証明欄」(※)に記名押印(証明印)をもらう
(2) 石材店へ墓石撤去・解体工事などの見積もりを依頼する
(3) 現在のお墓がある市区町村役場へ改葬許可申請書を提出し、改葬許可証を受領する
(4) 現在のお墓から遺骨を取り出す(閉眼供養などを行う場合もあり)
(5) 改葬先(新しい墓地・納骨堂など)へ納骨する
(※)「埋葬」とは死体を土中に葬ること、「埋蔵」とは焼骨を墓地に納めること、「収蔵」とは焼骨を納骨堂に納めることであり、墓地、埋葬等に関する法律第2条に定義されている。
以上の流れが一般的ですが、前段階としてやはり「親族の合意」が必要です。
特に親族間では、長男が勝手に決めたことに分家のご親族が反対するといったトラブルもあるため、この調整だけで数カ月等の相当な期間を要することも珍しくありません。
また、住職への切り出しも「葬儀や法要のタイミング」など、直接対面できる機会を狙うべきです。
電話一本で済ませようとすると、話がこじれやすくなります。まずは寺院への相談という形で対応していくとよいでしょう。
● まず家族みんなの意見を聞いて コンセンサスを得ること
――円満な墓じまいを目指すためには、家族同士ではどのような話し合いをしていくとよいでしょうか。
とにもかくにも、まず家族みんなの意見を聞き、コンセンサスを得ることに尽きますね。
法的には祭祀承継者(墓じまいの決定権を持つ人)が単独で墓じまいができるとしても、お墓に対する思いは家族それぞれです。
一方的に決定をしてしまい、実行すると必ず遺恨が残ります。まずはご自身の置かれている状況を整理し、直面している課題は何か、それを乗り越えていく方法を家族一緒に考えていければ、円満な墓じまいが実現できると考えます。
◆◆◆
全国的に課題となっている墓じまい。寺院とのトラブルを避けるためにも、まずは家族間の丁寧な話し合いが欠かせません。
※プライバシー保護のため、登場人物に関する情報の一部を変更しています。
岩田いく実

