毎日新聞 2012年08月21日 東京地方版
オリンピックが終わったらお盆休みで、夜更かしの習慣がなおらない。
そんな人が多いのではないだろうか。
夜更かしをすると、その分、朝の目覚めも遅くなる。
とはいえ、仕事があるとそうはいかないので、睡眠不足の状態で無理やりいつもの時間に起きる。
そうすると日中は頭が働かず、昼休みや会議の時間についウトウト。
退社時間が来る頃にようやく頭がスッキリしてきて、その晩もまた夜更かし……。
日本にいながら、「時差」のある生活を送っているような感じだ。
医学的にはこのパターンが重症になると、「睡眠相遅延症候群」とも言われ、治療の対象となる。
脳の中にあって「眠りと目覚め」のリズムを調整しているとされるいわゆる「体内時計」の機能がおかしくなっているのが原因と考えられ、大量の光線を当てて「体内時計」をリセットしたり、このリズムを調節する鍵を握るとされる脳内の「メラトニン受容体」に働きかける薬を使うこともある。
“特効薬”としては、布団に入る時間を思いきってさらに遅くしていき、1週間くらいかけて「午後10時」など希望の時間までずれたところで固定する方法もある。
睡眠相遅延の状態にある人は、「もっと早く寝なさい」と言われてもできないが、「あと3時間起きていて」と就寝時間を後のほうにずらすことならできるからだ。
しかし、このやり方を実行するには今日は午前5時、明日は午前8時……と、日中にも就寝時間をもうけることが必要なので、学校や仕事があるときはとてもできない。
何かと夜更かしが多い現代の生活では、この「日本にいながら時差ボケに苦しむ」という睡眠相遅延症候群の人はけっこう多い。
中には完全に昼夜逆転リズムという人もいる。
とはいえ、よほど深刻な状態でない限りは、あまりむずかしく考えることはないし、特殊な治療も必要ない。
要は、「忙しくても決まった時間に布団に入る」「睡眠時間もしっかり確保」、これが基本。
「海外とのビジネスが多いので、夜中も2時間ごとに起きてネットをチェックするんですよ」などというのはカッコいいが、人間のからだはこんな生活が送れるようにはできていない。
「ああ、もう夜も更けてきた」と思ったら布団に入り、いったん寝ついたらそれなりの時間はからだを静かに横たえる。
このリズムまで自分でコントロールできると思い込むのは、あまりにごうまんだ。
オリンピックも終わり、穏やかな気候の秋がやって来る。
からだと脳をゆっくり休めてあげてはどうだろう。

