高市首相の身勝手解散が招いた予算危機!選挙勝利は免罪符か/倉山満
3/14(土) 週刊SPA!
―[言論ストロングスタイル]―
高市早苗首相は2026年度予算の年度内成立を目標に掲げるが、1月の解散により審議開始は例年より約1か月遅れた。
野党は暫定予算で“つなぐ”姿勢を示す一方、首相は協力を拒んでいる――。
憲政史研究家の倉山満氏は本稿で、高市首相に「残された二つの選択肢」を示す(以下、倉山満氏による寄稿)。
危ぶまれる予算の年度内成立
予算の年度内成立が危ぶまれている。
予算が年度内成立をしなければ、どうなるか。幸せになれる日本国民は一人もいない。
では誰が悪いのか。これは高市早苗首相、ただ一人の責任に尽きる。
たった一つを除いて、高市首相を免罪する理由は無い。
高市首相は1月に、実に身勝手な解散を断行した。
こんな時期に解散すると予算が年度内に成立しないのは、政治の常識である。
通常国会が開会し、予算が成立するまでの1〜3月は、政局を仕掛けてはならない時期とされる。
実際、国民生活を考え、解散を考えていないと繰り返した。
それにもかかわらず、解散。こんな時期に解散した時点で、高市首相に正当性は無い。
すべての責任は他の誰にもなく首相にある
首相の本音は、支持率が高く勝てる時に解散したかったのだろうが、そんなに勢いのあるときに解散したいのなら、去年の内にやっておけばよかった。
せめて1月3日までに解散しておけとの指摘もある。
これ、もし負けていれば、何を言われても仕方のない解散だった。
幹事長にも相談しない、首相の独走だったと伝わる。
だから、すべての責任は他の誰にもなく首相にある。
敗北したら責任は首相一人に。同時に、勝利したら栄誉は、首相一人に。
結果は、自民党だけで三分の二を超す大勝利となった。
高市首相は選挙後も「国民生活を考え、予算の年度内の成立を」と訴える。
高市首相に残された二つの選択肢
ここで高市首相には二つの選択肢がある。
一つのやり方は開き直る。
財務省には、暫定予算を準備させておく。徹底的に強行採決をする。その代わり、悪名はすべてかぶる。文句があるなら、次の選挙で落としてみろと。どうせ、予算が年度内に成立しなくても、困るのもまた暫定予算を組まされる財務省だけ。
予算は衆議院で決まるので、暫定予算を組む期間は一週間も無い。選挙に勝った総理のやることに文句をつけるのか、と開き直る。
事実、これに近い強引な国会運営を行っている。
首相は自分で衆議院を解散して審議時間を奪っておきながら、「年度内に予算を成立させろ。審議時間を短縮させろ。さもなければ国民が困るのだから。ただし自分は国会答弁をしたくない」と野党に迫る。
これでは首相が予算を人質に取って、国会で日程闘争をしているようなものだ。
たった一つの免罪理由
こんなやり方で、もし予算が年度内成立しなければ、ただ一点を除いて高市首相ただ一人の責任だ。
ではその一点とは?
選挙に勝利したことである。
そもそも、選挙とは内戦の代替品である。
たとえば、関ケ原で負けた石田三成に如何に正義があろうと、何の意味もない。
合戦の勝利が権力の帰趨(きすう)を決めるように、選挙の勝利は勝った者に正当性を与える。
民主政治の決着は選挙による。
高市首相の唯一の正当性は、選挙に勝利したことに尽きるし、この一点で、あらゆる瑕疵(かし)を凌駕する。
勝ったら何をやっても良いのか
ただし、ここでパラドクスがある。勝ったから正しい。では勝ったら何をやっても良いのか。
そもそも議会とは、国民の税金の使い道、予算を話し合う場である。
議会政治とは、最終的には多数決でなければならず、少数派の横暴を許してはならない。
ただし、その多数は永遠であってはならない。
必ず再挑戦の機会、次の選挙までの任期が無ければならない。
その間、少数派にも言論の自由が与えられなければならない。
多数派の政府与党が間違った時、それを指摘する権利が無ければならない。
すなわち、次の選挙に向けて有権者を説得する機会が与えられねばならない。
だからこそ、政府与党も自分たちの政策の正当性を答弁できねばならない。
勝ったから正しいが、何をやっても良い訳ではなく、矩(のり)を踰えれば、いかな多数派でも正しさを失う。
もう一つの手段は「徹底的に頭を下げる」
そこでもう一つの手段である。私なら、徹底的に頭を下げる。
具体的には、質問時間は、全部野党に与える。
実務では、与党の質問時間は「休み時間」と言われている。
そもそも、与党は予算編成に関与している。
予算は国家の意思と言われるが、そこに与党は関与している。
まさか与党が自分たちの政府の予算案を修正するなら、何の為に予算案を提出したのかとなる。
あえて言うなら、連立与党の日本維新の会の質問時間は残して良い。
なぜなら、自民と維新は特殊な連立で、選挙では維新が反対党だから、反対党としての立場を表明できる機会が与えられねばならない。
こうしておけば、どうしても修正せねばならない論点が出てきた時、野党ではなく維新の質問で政府は修正できる。
協力を仰ぎ、悪しき国会の慣例を変える
反対党である野党に質問時間を与えることで、年度内成立への協力を仰ぐ。
その代わり、今までの悪しき国会の慣例を変える。
特に、外務大臣の出席義務をはずす。
今までは、外相が国会出席義務で縛り付けられて外交ができないなどの、本末転倒が罷り通ってきた。
原則として国会答弁は、政務官と副大臣が答える。
本来、副大臣は国会答弁をするのが仕事である。
細かいことは政務官に。大事なことは副大臣に。政務官、副大臣が答えられない質問だけ、大臣が答える。
ここで予算と関係の無い質問をしたら、させてあげればいい。それで、そのような野党の支持率が上がるはずがないし。
「高市の敵は日本の敵」との論調
議会とは、与野党が政策の正しさを競い合う場である。
野党の検証に答えられる政務官が、副大臣〜大臣と出世していく。
逆に野党も、政府に代わる識見を示した政治家が出世し、与党の地位を奪う。
これが健全な政権交代を伴う民主政治である。
むしろ議会政治健全化の好機であると思うが、そのような道に進む気配すらない。
SNSを中心に「高市の敵は日本の敵」との論調がある。
このような傲慢な風潮の放置こそが、高市首相の死角になると心配している。
―[言論ストロングスタイル]―
【倉山 満】

