2026年03月16日

時間は本当に流れているのか? 物理学者と脳科学者が考える「時間の正体」

時間は本当に流れているのか? 物理学者と脳科学者が考える「時間の正体」
3/14(土) AERA DIGITAL

私たちは「時間は過去から未来へ流れるもの」だと当たり前のように考えている。
しかし物理学の世界では、その前提さえ揺らいでいる。

ニュートンの時間、量子力学の時間、そして人間が感じる主観的時間。

物理学者・田口善弘と脳科学者・毛内拡が、SFや脳科学の研究も交えながら、「時間とは何か」という根源的な問いに迫る。

*  *  *
■ニュートンが作った「時間は一直線に流れる」という常

毛内拡(以下、毛内)
 カルロ・ロヴェッリが『時間は存在しない』で書いていたことだけど、ある時ニュートンが時間は過去から未来に向かって線形に発展していくものだっていうのを発明した。
そのおかげで飛躍的に物理学が進んだんですよね。
でもその時間の捉え方も量子力学から見ると揺らぐ。
その意味で「時間は存在しない」って書いていたと思うんですけど。

田口善弘(以下、田口)
 それから、「ラプラスの悪魔」という考え方がありますよね。
もし全知全能の存在がいて、宇宙にあるすべての粒子の位置と運動量を完全に把握できたとしたら、過去も未来もすべて確定的に予測できるはずだ、という発想。
この考え方は、量子力学が登場するまではかなり真剣に議論されていました。
そういう存在の立場から見れば、過去と未来はすでにすべて決まっているわけですから、そもそも「時間」という概念自体があまり意味を持たない、とも言えるわけです。

毛内
 テッド・チャンの『あなたの人生の物語』っていうSF小説があって。映画『メッセージ』の原作なんですけど。
宇宙から突然異星人がやってきてなんか訳のわからない言語を喋ってるから、地球の言語学者を呼んできて解読させるっていう話。
僕らって言語を左から右に書いたり、右から左に書いたりしますよね。
それってニュートンの線形の時間観と重なるんだけど、異星人の言語は円環に閉じているんですよ。
そうすると、彼らのそもそもの時間に対する感覚っていうのもやっぱり閉じていて、未来から過去を見るような時間観を持っている。
もう全ては完了していて未来から過去を眺めてるような話し方をするんだって。

 もちろんこれはフィクションですが、考えてみると、地球の言語が線形に書かれてきた以上、時間もまた「過去から未来へ進むもの」で、原因があって結果が生まれるという因果の捉え方を、僕たちはかなり自然なものとして受け取っています。
ニュートンが数式で定式化する以前から、時間は一方向に流れて戻らないものだ、という感覚は直感的に共有されていたわけです。そこは不思議なところですよね。

■楽しい時間はなぜ早く過ぎるのか――脳の代謝が生む“主観的時間”

毛内
 最近、僕は「物理的な時間」と「主観的な時間」はまったく違うものなんじゃないか、ということをずっと考えています。むしろ、主観的時間とは何なのか、ということですね。
僕は、主観的時間の感覚は脳の代謝活動の状態と結びついているのではないか、という仮説を支持しています。
楽しい時間はあっという間に過ぎるし、退屈な時間は1分が1時間のように感じられる。
時間って、僕たちの感覚の中では伸びたり縮んだりしますよね。

 だから、物理学が定義している時間(t)と、僕たちが主観的に感じている時間は、まったく別のものなんじゃないかと思うんです。

田口
 僕はすぐそういうこと思っちゃうんですけれど、代謝をコントロールすると楽しい時間を長くしてつまらない時間を短くするとかそういうことも可能なんですかね。

毛内
 可能でしょうね。
脳にエネルギーを供給したり脳のメンテナンスしてるもののなかには、「グリア細胞」ってものがあるんだけど、これが面白いことにその代謝活動は秒オーダーなんですよね。
みんなニューロンの活動で時間感覚を説明しようとしてるんだけど、ニューロンってもっと早いから、たぶんグリア細胞の代謝の方が時間スケールとしては合ってるんじゃないかな。

 楽しい時とか新奇体験してる時って、ドーパミンで予測できないからすごいリソースを割くわけですね。
だから代謝活動が高まる。
そういう時は早く感じるし、慣れてきて刺激がなくなってくると代謝が落ちてくるのでゆっくりだと感じる。

 もう一つややこしいのは思い出した時にどう感じるか。
例えば多くの人はあっという間に2月が終わっちゃったと思うんだけど、実際は1日1日長く感じてたりする。
思い出してみるとあっという間だったというのは、今度は記憶の密度で変わってくるんですよね。

 何でもかんでも全部記憶してるわけじゃなくてやっぱり印象が強いものとか新奇体験ほど記憶に残ってるので、思い出した時にあれもあったしこれもあったし……ってなるとすごい長く感じるけど、繰り返しの日常だともうほとんど記憶されないから、密度が低くて、あっという間だったなって感じるわけですね。
だから今この瞬間に感じてる時間と思い出した時に感じる時間とはまた違うし時間の感覚ってかくも不思議ではありますよね。

 でも結局代謝ってことは化学反応ですから、化学反応はやっぱり原因があって結果があって起こるわけだから、そういうのに起因して僕らは時間ってものを過去から未来に向かって不可逆的に起こるものなんだっていう風に理解しちゃってる。
posted by 小だぬき at 00:00 | 神奈川 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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