高校無償化で得するのは誰か? 財源は税金だというのに「私立校が恩恵を受ける」教育政策の歪み
4/13(月) All About
高校無償化が抱える構造的な欠陥を、橋洋一氏が鋭く指摘。
私立高校の優位性が高まる一方で公立校が苦境に立たされる現状や、教育投資としての「教育国債」の重要性について紹介します。
期待された「高校無償化」が、実は私立高校を太らせるだけの結果を招いているとしたら。善意の政策が教育現場に歪みを生んでいる実態とは。
数量政策学者・橋洋一氏は著書『60歳からの知っておくべき政治学』のなかで、大人世代が身に付けておきたい政治知識を解説しています。
本書から一部抜粋し、無償化によって恩恵を受けるのは誰か、また無償化の財源として税金は不適切である理由について紹介します。
◆無償化は私立校を太らせるだけの愚策
教育の機会均等を確保し、家庭の経済的負担を軽減する目的で高校の教育無償化が決まった。
大阪や東京ですでに実施されているが、果たしてメリットがあるのか。
率直に言えば、評判はあまり芳しくない。
なぜなら恩恵が最も大きいのは私立高校だからだ。
私立高校が勝手に授業料を引き上げても、その分が補助で賄われるため、実質的には税金で利益を得ているような状態となる。
実際、私立高校の優位性が高まり、公立高校の志望者が減少する現象が、東京や大阪で見られるようになった。
こうした制度は結果として、外国人が多く在籍する私立高校への補助が拡大することにもつながり、「外国人に税金を投入している」という批判も出てくる。
◆本来であれば学生に渡すべき補助金
全国に制度を広げることに対する批判が生じる中、教育無償化は本当に必要なのかという声もあるが、仮に制度を広げるなら、どんな方法が望ましいのか。
教育への財政支援を行う際には、いくつかの基本原則が存在する。
その1つが「バウチャー制度」だ。
授業料などにのみ使用できる利用券を学生に配布し、それを使って任意の学校に通うという方式である。
日本では、このバウチャー制度がほとんど議論されないまま、学校に直接補助金を配る方式が採用されている。
これが、私学偏重・外国人優遇との批判を招く一因でもある。
大学の私学助成も同様の構造で、本来であれば学生に補助金を渡し、学生がその補助金で授業料を支払うかたちが本筋だ。
ところが、日本では最初から学校側に資金を投入するかたちとなっており、教育政策としての合理性を欠いている。
◆教育無償化の財源が税金では不自然
教育無償化については、筆者は初年度予算が2000億円程度と見込んでいたが、実際には1000億円であった。
通年換算でもおそらく5000億〜6000億円程度にとどまり、金額的には小粒である。
そもそも、教育無償化の費用は税金で賄うべきものではない。
教育とは本来、将来への投資である。もし、その投資によって子どもたちの所得が向上し、将来的に税収増が見込めるのであれば、これは本来「教育国債」で対応すべきだろう。
教育国債であれば、将来の増税懸念を払拭しやすく、制度的にも筋が通る。
卒業生の数に応じて必要額が明確になり、20〜30年で償還することもできる。
支援対象の高校を考える場合、普通科よりも手に職がつくような専門学科、たとえば工業高校や商業高校、農業高校などへ重点的に資金を投じるほうが社会的意義が大きい。
現実には、これらの学校はイメージが悪かったり、人気が低かったりするが、実用的スキルを身につける場としての価値は高い。
そうした分野への支援こそが、本来の教育投資のあり方ではないか。
学生ローンの問題にしても、奨学金をバウチャー的な仕組みに改め、教育国債で財源を調達すれば、奨学金返済に苦しむ若者を減らせる。
現在の教育政策は、金額面でも中身の面でも中途半端で説得力に欠ける。
個人の感情や経験に依拠した施策ではなく、データと論理に基づいた設計が求められる。

